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男と女のダイアリー 〜熱風〜

 八月二十四日に、つくばエクスプレスという電車の路線が開業した。自分の実家の近くにも駅ができたので、地元はお祭り騒ぎでアニメ化の話まで持ち上がっている。
 知らない人のために説明する。電車というのは線路の上を走る鉄製の乗り物で、通常は客を乗せて駅間を移動する。冷暖房完備の電車が多く、高級な電車になると二階建てだったりトイレまで付いていたりする。つくばエクスプレスは秋葉原駅とつくば駅の間を四十五分間で往復する電車である。
 待望の駅ができたので、これで地元も活性化すると思った。寝て起きたらマンションと駅ビルが建って、また寝て起きたらロボットがそこら中を歩いているに違いないと期待したのだが、どうもそんなことはないらしい。地主の力が予想以上に強大で、余分な土地を全く買収することができなかった。なので駅の周りにはコンビニとドラッグスストア以外はなんにもない。何も回っていないロータリーとか変な植物を植えている畑とか、そういう中にポツンと駅の入り口がある。マンション・駅ビル・ロボットの類は、今のところ着工の目処すら立っていない。
 北千住の駅もファンタジーさでは負けていない。北千住はつくばエクスプレスの開通に備えて、周辺の土地を買収して大々的な区画整理をした。マルイを誘致して駅前広場ができて、見違えるほどにキレイになった。それなのにつくばエクスプレスの改札を抜けて階段を下りると目の前にソープランドがある。出張ヘルスもある。店の女の子がゴミ箱にゲロを吐いている。区画整理し忘れちゃったんだろうな、と思う。

 自分はまだつくばエクスプレスを利用していないので、以上の現場を実際に目撃した訳ではない。早くこの目で確かめて大笑いしたいものだ。
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男と女のダイアリー 〜悲恋〜

 八月十八日にプレイステーション2のゲーム「ドラゴンフォース」が発売された。いつぞやの日記にも書いたのだが、元はセガサターンのゲームだったドラゴンフォースが自分は大好きだった。今回のリメイク版も絶対に買おうと思っていたのだが、やはりやめた。
 ゲームで遊ぶと、遊んだ分だけ時間を費やす。新作ゲームをプレイするのも抵抗があるのに、飽きるまで遊んだゲームで再び時間を浪費するのが非常にもったいないと考えた。だからドラゴンフォースは買わないことに決めた。浮いたお金でマンションを買った方がなんぼか将来性がある。やめたためた。それはそうと、日曜日はドラゴンフォースを買いに池袋まで行ってきた。
 ビックカメラには置いてなかった。さくらやにも置いてなかった。西武にもパルコにもどこにも置いてないないなーい。焦りと苛立ちで顔に屍斑が浮き出たその時、携帯に電話がかかってきた。
「なんじゃい!」
「はい! ご希望の条件にピッタリのマンションが見つかりました!」
「そうか! そのマンションにドラゴンフォースはあるのか!」
「はい! ありません!」
 お話にならない。携帯を地面に叩きつけてあわてて拾って壊れてないのを確認してホッした後、再びドラゴンフォース探しに奔走した。しかし結局買うことはできなかった。
 獣人のゴンゴスでプレイして、レジェンドラ大陸を野生の王国に染め上げる野望はもろくも崩れた。不動産屋によると、秋葉原にはまだ大量のドラゴンフォースが余っているらしい。来週は久々に秋葉原に繰り出そうと思う。電車男やサンボマスターに会えるかな。会えなくても別にいいや。あー、ドラゴンフォースやりてえ。
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男と女のダイアリー 〜流転〜

 八月十二日からコミックマーケット、通称コミケが始まったらしい。世界各国から集まったマンガ好きがマンガのキャラクターの恰好をして同人誌を売ったり買ったりする、マンガ界の一大イベントである。自分はもう何年も行っていない。

 自分が初めてコミケを体験したのは高校時代だったと思う。しばらくは真面目に通って真面目にエロマンガを買っていたが、その内に売り子の手伝いをする方が面白くなった。ちょっと知り合っただけのサークルにズカズカと入り込んで、本の内容とは全然関係のない売り文句を並べ立てる。不思議とその方が本がよく売れるのであまり怒られなかったが、ある超有名なマンガ家のブースで売り子をやった時に釣り銭をちょろまかしたのがバレて袋叩きにあった。それで売り子もやめた。
 今はコミケ自体には参加せず、友人のサークルの打ち上げのみにお邪魔している。昼過ぎまで寝ていた自分が、朝早くからコミケに精を出していた方々に混じってお疲れさーんとビールで乾杯するのは少々しらじらしいのだが、みなさん大人なので何も言わない。

 今回もまたお誘いのメールをいただいた。夏の打ち上げはしばらく無沙汰をしていたので、久しぶりに顔を出せればいいなと思う。都合がつけばコミケの会場にも行って手伝いをして、心からのお疲れ様をみんなと一緒に分かち合いたい。エロマンガもちょっとだけ買ってみたい。
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男と女のダイアリー 〜宿命〜

 日記のタイトルを、内容が分かりやすいように変更した。ついては記念にマンションを買うことにした。

 駅から五分で3LDK、築十年で2,800万円のマンションがオープンルームをやっていたので見に行った。すげー狭い。玄関から息を吹いて、一番奥のロウソクが消えるぐらい狭い。チラシを見たら専有面積が50平方メートル。よくもまあこんな狭い空間に四つも部屋を作ったな、と逆に関心した。
 月々七万円の支払いで35年ローンで買え、と担当さんに脅されたが、齢六十半ばに達するまでこの物件に金を払うのかと思うと目まいがした。目まいのせいで一瞬だけ部屋がとても広く見えたが、自分は決してだまされなかった。五十円玉を床に落として、担当さんが気を取られている隙にマンションを出た。

 近くのマンションでもオープンルームをやっていたので、ついでに覗いてみた。専有面積は80平方メートル。広い。3LDK、駅から五分、築十年で4,200万円。そして何より担当さんのやる気がまったくなかった。すんませーんと言って玄関を開けても返事がない。留守かと思って勝手にあがったら、奥の部屋に担当さんがいてソファにふんぞりかえっていた。立ち上がって部屋を案内してくれる気配もない。だから自分で勝手に見て回った。
 部屋が全体的に薄汚い。リフォームしてくれるのかと担当さんに尋ねたら答えはノー。エアコンが四基あるのにアンペアは40で、これ全部つけたらブレーカー落ちるんでねーの、と聞いたら答えはイエス。アンペア増設はノー。やる気はと聞いたらノー。帰ると言ったら元気よくオーイエス。なにがオーだ。担当さんは結局最後まで立ち上がらなかった。不動の山の如き担当さんだった。

 それでもやっぱりマンションは買う。買うったら買う。やっぱり買わないことになってもここには書かない。買ったフリをして、ヨーロッパのお城と自分の合成画像をアップしてごまかす所存である。
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