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男と女のダイアリー 〜肉食〜

 自分の会社は毎月10日が給料日なので、月末になると資本力がやや弱まってくる。しかも今月はあまり考えなしに金を使ってきたので、銀行の残高を見るのが怖い。怖いが見た。預金残高が22万円ほど減っていた。
 22万円が高いか安いかは人によるだろう。自分にとっては高い。次の給料日までのあと2週間をどう過ごすか、考えただけで餓死しそうになる。一体何に金をつぎこんだのか、朦朧とした意識で勘定してみた。
 まず家賃で12万円払った。諸事情により2DKのマンションに一人暮らしをしているので、毎月ここで無駄金を払っている。引っ越すか二人暮らしをすればいいが、前者は面倒なのでやらない。後者は諸事情によりコメントのしようもない。
 次に、渋谷で焼肉を食って18,000円払った。駒込で居酒屋に入って12,000円払った。大学時代の同級生とバーで暴れて30,000円払った。ここまで風俗系の出費が一切ないのは評価できるが、自分の所得を省みない行為だとは思う。
 他にタバコ代などが1万円くらいで、残りの3万円が怒りの出費だった。11/16に社内旅行があって、宴会のゲーム用の景品をなぜか自分が買いに行った。営業マンに社内用の買い物を任せるというのも相当にメッセージ性があるが、それより自腹というのが納得がいかない。もちろん事後申請で精算できると言われたのだが、その申請メールが3回ほど突っぱねられてしまった。1回目は自分が費目を間違えて非承認を食らって、2回目は申請のフォーマットが急に変更になったので再申請しろと言われた。3回目は上司が間違えてスパムメールと一緒に捨ててしまった。いま4回目の申請を出しているが、どんな理由で却下されるのか楽しみになってきた。
 家賃が12万円で呑み代が6万円、タバコ代が1万円で、もらえるか不明の立替金が3万円。最後の3万円が戻ってくるかどうかで、今後の生活が大きく変わってくる。頼みますよホント。戻ってきたら3万円分呑みにいっちゃうんだけどもさ。
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男と女のダイアリー 〜血脈〜

 11月18日は簿記3級の試験日だった。開始時刻は午前9時で、自分が起きたのは午前9時だった。試験会場までは約1時間なので、普通に考えれば受験は絶望的である。だが会場に行きさえすれば、開始時間が遅れている可能性も万に一つくらいはある。素敵なハプニングを期待して、身支度もそこそこにダッシュで家を飛び出した。
 メシ食ってコンビニで立ち読みをしたので、会場到着は11時30分だった。試験は完璧に終わっていた。あきらめて帰ろうかとも思ったが、それでは無駄足になってしまう。掃除のオッサンが会場の後片付けをしていたので、今から試験を受けられますか、と一応聞いてみた。相手にされなかった。通りすがりの受験生たちにも聞いてみたが、ざんねん次回にチャレンジだ! みたいな顔で笑われてしまった。お前ら全員落ちてしまえ。
 しばらく色々と聞いて回った結果、試験本部というものがあるらしい。そこへ行けば問題用紙だけはもらえるようだが、ついでに受験もさせて欲しい。試験の偉い人が勢揃いしている場所なので、最後の望みを託して本部に駆け込んだ。笑顔で出迎えた受付のお姉さんに、心の底からお願いした。
「お姉さん、ボクに試験を受けさせて下さい!」
「もう試験は終わったのでダメでーす」
 そんな事は分かっている。ダメなものをダメじゃなくすためにお願いしとるんじゃボケ、という切ない気持ちを押し隠して、土下座また土下座で懇願を続けた。すでに受験を終えた人から問題を教えてもらっていたらアナタ余裕で満点とれるでしょそれはフェアじゃないでしょ、のようなことをお姉さんから言われたので、そんなことはないですボクは問題が分かっていても0点を叩き出すくらいのぶっ飛びバカなんですだから大丈夫です、と反論した。そしたら
「そんだけバカなら試験を受けてもムダですよね」
 実に適切な指摘だった。怒りと焦りで曇っていた自分の眼前が、ふいに澄み渡っていくのが分かった。自分は冬の青空を吹き抜ける風のように、足取りも軽く家路についた。もちろん問題用紙はもらい忘れた。
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