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男と女のダイアリー 〜番外〜

 ずいぶん長いこと営業の仕事をやっている。出先の店員さんともすっかり顔なじみになり、家族同然のお付き合いをさせてもらっている。今日も店につくなり、カバンをおろしてパジャマに着替えておやつも食べずに爆睡した。

 眼が覚めたらおやつがあった。私はカバンの上に転がっていた一粒のハイチュウを手に取って、店長を手招きして呼んだ。
「ご用でございますかお嬢様ー!」
「チェストー!」
 大あわてで飛んできた店長の眉間に、思いっきりハイチュウを投げつけた。店長は上体を後ろにぐらつかせながらも、必死で踏ん張ってもちこたえた。ハイチュウは店長の眉間のシワにすっぽりと収まっていた。
「捨ててこーい!」
「ひゃ、ひゃい!」
 店長は死にかけのアシカみたいな声で返事をして走っていった。誰が落としたか分からない野良ハイチュウなんぞ、怖くて食えたものではない。ゴミを処分してもう一眠りしようとした時、携帯電話にメールが届いた。モロに私好みの男の店員さんからだった。
「姫蔵さん、いつもお仕事お疲れ様です。姫蔵さんが好きだと言っていた
ハイチュウ、カバンの上に置いておきました。よければ食べて下さいね」
「捨ててきましたお嬢様ー!」
 店長が戻ってきた。大仕事をやり遂げた充実感で、はちきれんばかりの笑顔だった。
「拾ってこーい!」
 笑顔目がけてヒールの踵をぶちこんだ。店長の笑顔は星くずとなり、赤い血の彗星が店内いっぱいに尾を引いた。
「ひゃ、ひゃーい!」
 店長は捨てたハイチュウを奪還すべく旅立った。本当に忙しそうな店長さんだ。少しは休めばいいのに。

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 結局こっちのブログに書くことになった。バカ。アホ。酒やめろ。
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男と女のダイアリー 〜恋花〜

 自分のカノジョがおかしな事を言い出した。家に帰ると両手をばたつかせて飛んできて、
「きょう仕事で面白いことがあったのなのー! アタシの代わりにブログを書いてほしいのなのー!」
 だと。なんで他人様の日記を俺がゴーストせにゃならんのだ。ご褒美に一発やらせろ。と思ったが別にご褒美じゃなくてもやることはやってるし、物を書くのもとんとご無沙汰だったので、適当に話を聞き流して適当にウソを散りばめて書いてやった。けっこう面白がってくれたのは嬉しかったが、それをカノジョ名義で投稿するのかと思えばそうじゃなかった。
「アタシのブログが汚れるからイヤなのー! アンタのブログに投稿してほしいのなのー!」
 あまりに予想外の汚物扱いだった。怒りで頭髪が抜けるのをかろうじてこらえて、カノジョに事情を問い糾した。だいたい次のような話だった。
「アンタがブログを書かなくなったのは、日常生活が退屈で何の生き甲斐もないからなのー! アタシがネタを分けてあげるから、それでブログを書いてネット社会に完全復帰してほしいのなのー!」
 ものすっげえ余計なお世話だ。それに語尾がうっとおしい。ナノだかチンポコだか知らんが、ネタを恵んでもらってまでブログなんぞ書きたくない。

 でも書いてしまった。この日記は自前のネタだから自分のブログに投稿するが、もう一本の日記についてはやはり被験者本人の日記として扱うべきであろう。
 すなわち、
「テメエのブログに投稿しろー!」
「アンタのゴミブログに投稿しろなのー! ワインも焼酎も全部空っぽになったのなのー!」
「酔っ払ってんのかテメー!」
 毎夜恒例の大ゲンカになった。少なくともケンカのネタには全然困ってないんですよ、マジで。
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