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配牌ダイアリー

 ババアの告別式が終わって、ようやく少し落ち着いた。
 前々回の日記でババアの粘りすぎに苦言を呈したが、今度こそ本当に力尽きた。数日前にまた実家から電話があって、ババアが危篤なのですぐに来いという。どうせ復活するんだろとタカをくくっていたら五分後に死んだ。大慌てで実家に戻ると、ババアの遺体はドライアイスと線香の煙で丹念にスモークされていた。
 葬儀社の人間が居間にいて、葬式の日取りや予算の打ち合わせ中であった。自分も席について、打ち合わせがてらに色々な話を聞かせてもらった。京都の葬式では霊柩車の通る道に小銭をばらまく風習があって、あとでホームレスが拾いにくるので大変なこと。北海道の人間は香典に領収書を要求してくるので他地域の喪主とのトラブルが絶えないこと。そしてババアの葬式の直後、同じ会場でヤクザさんが葬式をあげること。特に三番目の話には一同戦慄が走ったが、鉢合わせすることはないというのでその日に決めた。
 しかしヤクザさんの生態にはいまだに未解明の部分が多くある。ものすごく早く到着したヤクザさんが一人いて、見事に待ちぼうけを食わせてしまった。すわ全面抗争に突入かと思いきや、自分たちの帰り際にヤクザさんは深々と礼をしてくれたのであった。お返しに香典の一つでも、と思ったが、ヤクザさんの香典の相場は二十万円だというのでやめた。マジごめんなさい。ご冥福をお祈り申し上げます。
 葬式の費用はえらいことかかった。葬儀社のお偉いさんは自分の小学生時代の同級生でとてもいい男なのだが、お代はビタ一文まけてくれなかった。集まった香典は半額をお礼として還元せねばならず、そこへもってきて菩提寺にも謝礼を納めねばならない。
 住職につけてもらったババアの戒名は「明訓高校大甲子園」。ちょっと違ったかもしれないが、まあそれっぽい漢字をPCに登録してエンターキーをポンで自動作成したみたいな、とてもありがたい名前だった。戒名代が二十万円で、それとは別にお布施が三十万円。あわせて五十万円。非常に罰当たりな物言いになるが、ぼりすぎだクソ坊主、と思う。ざけんなハゲ、と思う。このたびは誠にありがとうございました。

「お金がないと寂しいねえ」が、ババアの生前の口癖だった。お棺に餞別の小銭をたくさん入れてあげたので、あの世でお金に困ることはあまりないと思う。それとも最近は、三途の川の渡し守もぼったくったりするのだろうか。それだけが心配だ。
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