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男と女のダイアリー 〜燦燦〜

 9月17日と18日は全国的にお祭りの日だった。自分も生まれて初めてお神輿を担いで、数日たった今でも肩が痛い。
 二ヶ月ほど前、馴染みの呑み屋に行ったらふんどし姿のオッサンが暴れていた。変質者ですか、と聞いたら違う、と言った。だが変質者に決まっている。自分は変質者が好きなのであっという間に意気投合して、キミも9月17日と18日にお神輿を担ぎたまえと誘われた。どうもお祭り帰りの変質者らしい。
 はっきりいって担ぎたくない。重いし臭いし面倒だし、お神輿に爆弾が仕掛けられていたら無事ではすまない。やんわりと断ったがオッサンも諦めず、17日だけちょっと担いでやめればいいじゃん、Tシャツとジーンズで担いでもいいから参加するじゃん、と食い下がってきた。そんならというので了解した。
 次に会ったらデカい紙袋を渡された。中身は半纏と帯と足袋とふんどしのフルセットで、これを着なかったら殺すとオッサンは言った。17日は予行演習の軽いお神輿で、本番の18日は他町会の担ぎ屋も来るから負けんじゃねーぞ、とも言った。あれれれれ。なんだか全然話が違うぞ。17日も途中で抜けていいようなことを言っていたが、そのことを確認する勇気はすでになかった。絶望と怒りで身をもみねじっている内に17日になった。

 集合場所の神酒所からお神輿を担いで、町内を練り歩いて神酒所に帰ってくる。自分はお神輿の端っこに手だけ添えて、途中で隙をみて逃走するつもりでいた。しかしふんどしの群れにモミクチャにされて、気がついたら内側の棒のど真ん中にいた。前後左右にふんどしの壁がそびえ立って、完全に退路を塞がれた。落胆と焦燥で体をクネクネさせている内にお祭りが始まった。
 二十分ほど担いで休憩時間になった。お神輿を台に下ろして、有志の用意してくれたお酒やおつまみをご馳走になった。ビールの冷たさが乾いた喉にしみわたって、これで自分の中のスイッチが切り替わった。逃走用のマキビシも捨てた。
 結局最後までお神輿を担いで、18日も体力の限界まで頑張った。男も女も休憩のたびにビールを呑んで、ビールはお祭りの心地よい汗となって晴れた秋空に一滴残らず発散した。こんなにウマいビールが呑めるなら、お神輿を担ぐのも悪くはない。来年もこいよ、と打ち上げの席でみんなに言われて、自分は笑って冷えたビールを呑み干した。
 来年は絶対に行きません。疲れるっつの。
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