
2003年18号 第163話
【前回まで】
その日、ミスターは一日中ふきげんだった。
断っておくが、誰が何と言おうとコイツの名前はミスターだ。マホメドJr.?
誰それ?
他ではない、父親のことだ。
朝から晩まで酒びたり。体ブルブルよだれダラダラで酒代がないといっては
母親の衣服や指輪を質屋に持っていく。逆らおうものなら、世界を制したパン
チがとんでくる。
「お前はモハメド・アリかっつーの」
深い嘆息を漏らすミスター。アリとアル中を一緒くたにする、スーパー失礼
なミスターである。
たまりかねたミスターが勇次郎に助けを求めたのも無理からぬ話だ。大粒の
涙をこぼし、ミスターの手をしっかと握りしめる勇次郎。オレが親父を更正さ
せてやる!
二人はとある公園にやって来た。ここにうってつけのアル中のサンプルがい
るという。勇次郎のお手並み拝見だ。
傍らに積まれたダンボール箱を、渾身の力で蹴り飛ばす勇次郎。中から顔面
蒼白の本部が這い出してきた。全裸だった。右手に日本刀、左手にでらべっぴ
ん。何をしていたのかは明白だ。
本部の眼に殺気が浮かび上がる。やばい。見られた。こいつを殺さなかった
ら、オレが社会的に死ぬ!
右手のでらべっぴんを放り投げ、左手の日本刀を両手に握りしめ、大上段か
ら勇次郎目がけて振り下ろす!
逆だった。左手に持っていたのはでらべっぴんだった。
パリパリに乾いたでらべっぴんで頭をはたかれた勇次郎、間髪入れずに本部
の脳天にかかとを落とす。本部、絶命。死んだのでアル中も治った。
勇次郎が、とびきりの笑顔でミスターを振り返る。
「な?」
「な? じゃねーよ!」
ミスターの怒りが爆発した!
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