直線上に配置

栗駒山(1627m)くりこまやま

2006.10.1(日)の記録
 概   要  栗駒山は宮城・秋田・岩手の県境にある。古来より信仰の山として登られ、登山路は(裏掛・東栗駒・中央・表掛・大地森・湯浜・天馬尾根・須川・自然観察路・笊森各コース有り)多い。今回は岩手の須川温泉から栗駒山・天馬尾根コースを登った。
 このコースは@須川温付近は湯煙や溶岩の造形A名残ヶ原では湿原B昭和湖での火山地形C稜線までの錦の紅葉D栗駒山頂からの展望E人出の多さF天馬尾根の下りの爽快さG秣岳付近の草原と紅葉のコントラストG下山後の温泉等、景観に変化があり、いくつもの驚きや楽しみが連なる珠玉のコースと言える。最後の車道歩き45分のみ苦行であるが、軽く帳消しできるお薦めコースです。
 季節が夏であれは、多様な花にも出合えそう。
 場   所
 交   通
一関ICから、国道342号を通って須川温泉へ。須川温泉手前の県境の山道は舗装道だが、道巾の狭いくねくね道の連続。対向車に注意。私は帰りに車酔いしてしまった。
 注   意
 事   項
 登山道はよく整備されており、道標も完備されている。昭和湖までは、遊歩道で、半ば観光地化している。剣岳周辺は硫黄臭がするので、風のない時は、噴煙の近くでは長居しない方賢明。稜線も道はしっかりついており、迷うような場所はないと思う。天狗岩から栗駒山頂までの道脇が、切れ落ちてガレた場所があるので、強風等の際は注意が必要。御駒山から秣岳はゆるやかな下りなので、足に響かない。秣岳までは上り下りが数回あるが急登はない。秣岳からの下山路もジグザグに下り、急な坂はない。露岩が一部あるが、全体によく踏まれている道である。最後の車道歩きが根性を要す。車の往来はさほどでないが、車に注意が必要。トイレは山中にはありません。
 コ ー ス
 タ イ ム
 仙台南IC→(車60分)→一関IC→(車50分)→須川温泉登山口→(歩30分)→自然観察路分岐→(歩25分)→昭和湖→(歩55分)→稜線須川分岐→(歩30分)→栗駒山→(歩15分)→稜線須川分岐→(歩10分)→御駒岳展望岩頭付近→(歩100分)→秣岳→(歩55分)→車道→(歩45分)→須川温泉→(車60分)→一関IC→(車60分)→仙台南IC
 ※所要時間:6時間5分(休憩含まず)写真を撮りながら
 ※男性2名、女性1名
 ガ イ ド
 ブ ッ ク
「岩手県の山」山と渓谷社
地図:昭文社「山と高原地図6/栗駒・早池峰」1/50000図

※カシミール3D使用 ↑東成瀬村商工観光課マップより↑ 
※地図をクリックすると拡大します


栗駒山は残雪期に御沢をつめただけで、秋の栗駒は初めて。紅葉の見ごろは
10月の第一週と聞き、便乗志願。絶好の紅葉狩り日和となり、日頃の行いの
良さが実証されました。(笑)
→須川ビジターセンター
   (トイレもあるそうです)

 仙台南ICから一関まで、93.5kmを高速道。ETC車の通勤割引時間帯利用で料金半額に。予定より早く到着。(運転手さんに感謝)
→須川温泉

 朝7時40分でも、駐車場はかなりの車が。日曜で天気も良いせいか、人々の動きも早い。須川温泉の売店もオープンしており、トイレも拝借する。
 身支度を整え、宿の脇、大日岩の手前を登って行きます。
→須川温泉足湯

 大日岩の根っこに足湯がありました。ここは観光の人も沢山います。溶岩の作った景観を縫うように、観光コースがいくつかありますが、我々は向かって一番左側のコースを登って行きます。
→鳥居もある

 硫黄の臭いもします。登山道は観光用にきちんと階段状になっています。見晴らしのきかない、色付いた潅木帯を登りきると、景色が開けてきます。
 
→ゆげ山と剣岳

 登山口から15分程で、名残ヶ原の展望台に着きます。そこから見た剣岳は右側が少し尖っていますが、その名の由来でしょうか。昭文社の「山と高原地図6」には、ゆげ山の記載がありますが、ほんとうに山肌から白い湯気が沸いていました。
→名残ヶ原

 展望台からの景色に歓声を上げながら、名残ヶ原に降り、木道を歩きます。木道脇にはまだ名残のエゾリンドウ?が咲き目を引きました。これから登る栗駒山が、逆光の中にたおやかな姿を見せています。
→観光コース分岐

 右折するとゆげ山コース、おいらんコース、賽の川原を回るコースなどの観光コースがあります。高山植物の咲く時期には、きっとにぎわうことでしょう。我々は直進します。
→自然観察路分岐

 まっすぐが我々が行く須川コースです。左手は自然観察路で、産沼を経て栗駒山頂に直登するコースです。「産沼経由栗駒山頂3.0km、栗駒山頂2.8km、須川温泉1.0km、苔花台、岩手県」と書いてあります。
→沢を一回渡ります

 湯尻沢の枝沢を渡ります。雨の時は増水するそうです。湯尻沢は磐井川に流れ込み、一関で北上川と合流します。
 沢を渡って尾根を越すように登っていくと、景色が開けてきます。
→なだらかな登り

 遊歩道のように整備された登山道です。
→左手の谷底のガス

 硫黄の臭いがします。ガスの噴気付近には、立ち入り禁止の看板がありました。風向きによっては、早く通り過ぎたいような場所です。しばらく爆発しませんように。
→昭和湖の手前の木道

 谷が終わると、平坦な草原に出ます。白い岩の辺りが昭和湖です。正面に見えるのは、栗駒と峰続きの御駒岳です。
→草紅葉と剣岳付近の岩

 池塘があります。この岩の向こう側に、かの秘境、龍泉ヶ原がありますが、剣岳周辺にも沢山の湿原や沼があるそうです。

→昭和湖に到着(湖水は抹茶ミルクのような色です)
→昭和湖畔で憩う人々

 歩き始めて55分で、昭和湖に到着。
写真を撮りながらゆっくり登ってきまし
た。登山客ざっと30人が休憩していま
した。
 昭和湖は昭和19年の噴火で出来た
そうです。
→色づく木々と登山道

 昭和湖からは、本格的に山道になる。最初は見通しの悪い低木帯を登っていくが、高度を上げるとともに、次第に左右の錦が姿を現す。
→休憩する人々

 すばらしい紅葉に、皆足を止め、歓声を上げている。
→登り左手の紅葉

 栗駒山の北側の斜面。逆光だが素晴らしい。
→山裾の三色

 須川温泉の上部、栗駒の裾野も、このように鮮やかな三色に彩られている。
→稜線が見えてきた

 昭和湖から稜線(須川分岐)までは、紅葉の色づきが最も美しく感じました。午前中は雲も出ませんでしたので、尚更でした。
→稜線まであと少し

 昭和湖から、須川分岐まで55分の道のりは、「いやぁ凄い」「ほらあそこ」「こっちが三色だ」だとか、歓声の上げっぱなし。錦織り成す登山道、行き交う人々も、皆にこにこ顔でした。
→須川分岐到着

 東西南北遮るものはない広場になっている。ここを天狗平と呼ぶのかは不明。どのガイドブックも須川分岐と標示がある。栗駒町の商工観光課のガイド&マップには、天狗平相撲取り場と標示があるが、分岐からわずかに天狗岩方向にずれている。

  
↑須川分岐から御駒岳(お駒ケ岳1573m)方面を見る
→湯浜コースの道標

 栗駒の南面(宮城県側)には湯浜温泉へ下る分岐もあります。湯浜コース7.5kmと書いてあります。また、虚空蔵山を経て、御沢(表)コース、大地森(湯ノ倉)コースもここが分岐となっています。栗駒山頂までは、須川分岐から、0.8kmです。
→栗駒山頂への登り

 3つの岩の突起は、天狗岩です。深野稔生さんの「山遊び山語り(栗駒・船形編)」によると江戸時代の文献には二個石・二ツ石と呼ばれていたそうです。
→天狗岩からの錦の絨毯

 天狗岩から南側の斜面を見たところ。まさに錦のじゅうたんでした。
→燃えるミネカエデ

 画像処理していません。目がチカチカする位真っ赤です。ミネカエデも朱から深紅に変化しています。下には、昭和湖付近が見えます。
→山頂直下の稜線

 少し、右手(南側)がガレで崖になっている部分も有りますが、危ない所には柵があります。山頂の混雑を避けて、景色のいい道脇で休憩する人もいます。
→栗駒山頂の人々

 山頂に到着。山頂は平坦で広く、学校の遠足登山でも充分な位のスペースがあります。それにして凄い人出。ざっと数えて120人位は居たように思います。
→南側から上ってくる人々

 雲が出てきましたが、南面も素晴らしい景色です。
→南(宮城県)側の紅葉

 薄い緑が、チシマザサ。濃い緑はハイマツではないでしょうか。
→お社もあります。

 我々は、風の当たらないチシマザサの陰でゆっくり昼食をとりました。ややガスは出て来ましたが、冷気や風も無く、カップめんを食べたり、お隣さんと紅葉情報を交換したり。気がつくと、頂上で1時間40分も休憩してしまいました。急いで支度をして出発しました。
→栗駒山からの下り

 栗駒山頂から、天狗平までは、登った
道を引き返します。行き交う登山者も多く、
今度は下山なので、登り優先で道を譲り
ながら下ります。
→昭和湖を見る
 天狗平に下る途中で、北側(尾根の右手)には、登ってきた昭和湖が見えます。意外にも昭和湖のすぐ近く一段高い所に、龍線ヶ原が見えました。平成6年から、栗駒山は森林生態系保護地域に指定され、登山道以外の立ち入りが禁止だそうです。もちろん龍泉ヶ原には登山道はありませんので立ち入り禁止です。
 


展望岩頭付近から龍泉ヶ原
→1573mピーク(御駒山)付近

 この辺りが、秋田・岩手・宮城の県境になっています。御駒岳との標示は見落としたのか、記憶にありません。
→サラサドウダン街道

 御駒岳のピークを下り始めると、登山道の左脇に標示がありました。サラサドウダンは6〜7月に咲くそうなので、いつか見てみたいです。その他に判る木としてはシャクナゲ、ハイマツ、ナナカマドなどが見えました。
→しばらく続くなだらかな下り

 サラサドウダンよりは、ミネカエデの赤が多いようです。長い下り(約40分)でしたが、どこもかしこも鮮やかな紅葉で飽きることはありませんでした。
→秣岳への鞍部付近を俯瞰する

 なだらかな下りです。天馬尾根コースと呼ばれる通り、天馬になって空を駆けるような気分を味わえます。
→色鮮やかな木々

 ミネカエデに混ざって、黄葉するのは、ミヤマナラと思われます。ミズナラの高山種でどんぐりをつけていました。
→登りあり

 1573mピークからは、ずっと下りです。下りきると一度最低鞍部を通過しますが、ここからはなだらか登りとなり、一山越えて、地図に示されている栗駒山・秣岳鞍部に下って行く事になります。
→振り返ると

 栗駒山頂から下って、約1時間の付近です。ここからは1573mピークが邪魔して、山頂は見えませんが、紅葉が素晴らしいので、休憩を取りました。
→行く手を眺めると

 ミネカエデの向こうに秣岳が見えます。秣岳までは、ピークが4つ位あり、稜線を右に回りこむように進みます。
→栗駒山・秣岳鞍部付近から
        1573mピークを見る
 (栗駒山は山の向こう側で見えない)

 今までは、栗駒山からほぼ西向きに下ってきましたが、鞍部から北西に進路を変えて、秣岳に向かいます。笹と峰楓の道が、鞍部から景色は一変して草原が現れます。
→鞍部からひと山越えた所
  おそらく眼前が1397mピーク


 あの山(鞍部から2つ目の山)を越えると・・・何だか期待が高まります。
→1397mピークを越えたら
 そこは、平らな草原が広がり、正面にコンパクトな岩山(3つ目の山)が出現。この草原地帯は、山と高原地図では、しろがね草原と記されている。秣湿原とも呼ばれているようだ。ここは、1375mで栗駒山中では最も標高の高い湿原だそうです。
→本日最後のサプライズ!
 なんとも素敵な景色です。白金(しろがね)草原とはよく言ったものです。キンコウカやトウウチソウ、ウメバチソウの咲いた跡がありました。草原保護の為、この木道を作った人は偉い!正面に見える岩山は、秣岳と思わせますが、偽ピークです。
→振り返ると
 第一草原が終わると、笹と楓の登りに
なります。草原を振り返るとこんな感じ。
この先の偽ピークには露岩があり、岩の
隙間には不時のビバークも出来そうな
場所もありました。
→偽ピークを越えると
 秣岳が見えました。鞍部から4つ目が秣岳です。鞍部手前に一つ小山があったので、それも入れると5回昇り降りして、秣に達します。でもそれも急な登りではなく、間に草原があり、紅葉も素晴らしいので、感嘆の声をあげているうちに着いてしまうのです。
→秣岳と手前の第二草原

 何だか名残惜しい景色です。須川から名残ヶ原を登ってきましたが、あれはきっと須川に降りるコースを歩いた、いにしえ人が名残惜しくて付けたのではないでしょうか。本日のマイ名残ヶ原は、しろがね草原でした。
→最後の登り

 秣岳の手前の最後の登りです。斜面
なので、木道が無い為、泥炭地が
むき出しになった所もありました。
※地図を見ていたら、世界谷地の近くにも
 秣森779mを発見。秣=馬草=まぐさ
→秣(まぐさ)岳山頂に到着
 
 後ろは栗駒山から剣岳付近の山波です。その辺りから、ここ秣岳の山稜は、栗駒火山の外輪山だそうです。今回はその外輪山を馬蹄形に歩いてきました。
→最後に歩く車道が見える
 秣岳を下り、須川湖の手前の登山口におりてから、車道を約3km歩いて、須川温泉にゴールします。栗駒から秣岳では、ほとんど人に会わなかったので、この車道歩きが敬遠されての事だと思います。
 秣岳登山口付近の路肩には頂上から見て、4〜5台は車が見えました。先を歩く人が居るのでしょう。
→秣岳から下山路を見る
 分岐から台地状をまっすぐ行くのが、皆瀬村境登山口への道。山腹を巻くように下るのが、一般コースです。
 台地状の奥には、湿原も見えていますが、登山道が湿原を通っていないので、木々に阻まれ眺望はよくないのでは?と感じました。
→分岐の標識

 秣岳まで0.5km、栗駒山まで4.9km、皆瀬村境登山口まで2.2kmと書いてあります。皆瀬村登山口への道は刈り払いされておらず、分岐から藪こぎの様相を呈していました。
→振り返れば秣岳

 3時近いので、もう夕映えの表情です。最後まで楽しませてくれて有難う。こんなに素晴らしい紅葉は二度とお目にかかれないような気がしました。
→少し岩が出ている箇所有り
 分岐からは、山腹をトラバースぎみにゆるやかに下っていきます。見晴らしは良いですが、足元は露岩があり、疲れた足には、少し注意が必要です。この付近には、アザミやリンドウが残っており、紅葉以外の紫や桃色が目に新鮮に写りました。
→須川湖と須川温泉

 須川湖から須川温泉へは、標高で約100m位登っています。最後に登りの車道歩きが待っていますが、それを帳消しにできる位、素晴らしいコースだと思います。
→ブナの間を下る
 山腹のトラバースが終わると、樹林帯に入り、ジグザグに下っていきます。脚に負担のかかる急な下りを覚悟していましたが、さほど急ではなく、歩きやすい道でした。マイナーなコースかと思っていましたが、かなり人に踏まれている登山道だと感じました。
→秣岳登山口

 秣岳から、写真を撮りながら下って55分かかりました。ここからは398号の車道を須川温泉まで歩きます。道標には3.7kmとありますが、やや登りぎみの道で、早足で休憩含まず約40分かかりました。
→須川湖畔のトイレ
 登山口から、徒歩17分で到着。キャンプ場等もある湖畔の駐車場には、トイレがあり、助かりました。(水洗、紙有り、清潔)もう夕暮れでしたが、観光客が湖を見ていました。標高1040m位のこの辺りは、木々の色付きはもう少し後になることでしょう。
→黒い建物・栗駒山荘

 須川温泉の秋田側にあるのが、栗駒山荘。山荘とはいえ立派な建物です。露天風呂もあり、そこからは湿原も見えます。
→やっと到着栗駒山荘

 夕方4時でしたが、駐車場が満杯でした。入浴料600円。綺麗で、シャンプー、シャワー、ドライヤーあり。売店も充実していました。駐車場の出入口の左下に足湯もありました。
→民芸くりこまや
 栗駒山荘の向かい側にあるみやげ物屋だと思います。表には熊の毛皮が置いてありました。くりこまやの後の一段上の広場が、駐車場やキャンプ場になっています。
 天気や紅葉の見ごろにも恵まれ、大満足の一日でした。
         ●登山報告終了●


参考文献:「山遊び山語り/栗駒・船形編」深野稔生著 無明舎出版、
「北とうほく花の湿原」日野東、葛西英明共著 無明舎出版
「登山道で出会える花/北海道東北エリア」日本放送出版協会、
「岩崎元郎の新日本百名山/登山ガイド上」山と渓谷社

※ 記載事項に関して、一切の責任は取りかねますので、ご了承下さい。
また誤りがあれば、どうぞ
MAILにてご指摘お願いします。


                栗駒山に関する補遺


 ●湿原について
 
  「北とうほく花の湿原」日野東、葛西英明共著 無明舎出版より抜粋

「湿原の上はやわらかく、踏み固められると植物が育たなくなり、やがて湿原の下に堆積した泥炭層がむきだしななった裸地状態となる。そして雨のたびに泥炭層が流され、裸地はどんどん拡大してしまう。一度、裸地化するとその修復は容易ではない。・・・・くれぐれも湿原の中に入らないように充分注意して頂きたい。」

※つまり、木道以外の所は立ち入り禁止で、木道のない登山道でも湿原の場合は道の脇を歩いて草を踏まないようにって事ですね。

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