ジャイアン軍団が復活したすぐ後、ドラえもんたちの蝋も割れた。そして地
べたに這いつくばって店員に土下座をした。
「ボクたち反省しました! もうお通しはカットしません!」
「蝋細工なんて言ってごめんなさーい。ちゃんと食べまーす」
「オレたち本当はお通しを食べにきたんだ。いやあ楽しみだなあお通し!」
 店員はドラえもんたちの謝罪を聞いた後、ジャイアンたちに視線を移した。
「アンタらは?」
「なんだおめー! やんのかてめー! 歌うぞコンニャロー!」
「もうしませんって意味だから誤解すんなよ店員。お通し食ってやるから持っ
てこいよ」
「おいしかったら食べるからね。マズかったら本社に無数のトレーラーが突っ
込むからね」
「分かったっす。そこまで言うなら全員許してやるっす」
「ありがとうございまーす!」
 みんなで店員にお礼を言った。そしてジジイの痰にチンカスが浮いてるみた
いなお通しが運ばれてきた。
「いただきまーす!」
 ドラえもんたちは元気よく叫んで、ポケットからゲジゲジとゴキブリと犬の
クソを出してお通しの上に置いた。
「この店は客にこんなものを出すんですかー!」
 ドラえもんはお通しをテーブルごとぶん投げて、メガホンを持って叫んだ。
「お通しをカットすれば蝋人形、持ってこいと言えば虫とクソ。ボクたち無力
な庶民は、一体なにを信じればいいのでしょーかー!」
 一方ジャイアンたちは素直にお通しを食べて、素直にマズいと文句を言った。
「お通し以外も万遍なくマズいぜー!」
 ジャイアンは床に手りゅう弾をばら撒いて一斉に爆発した。燃えさかる業火
の中で、しずかはドラミと一緒に客席を回っている。
「ドラミの特製おしぼりでーす!」
 ドラミは客の顔面に熱した鉄板を押し付けた。客がのたうち回る間に、しず
かは客の皿に猛毒を仕込んだ。
「生ビールがタケシさんの糖尿の味だから、全員死んだ方がいいと思うのー!」
「業者ー!」
 店員が叫ぶと、入り口のドアから精鋭の業者軍団が闖入してきた。
「アイツらを回収して処分するっす! この場で殺してもかまわんっす!」
「メイルシュトロームパンー!」
 ドラえもんがセワシの口にパンを押し込むとセワシの全身から大水がほとば
しり、津波となって業者部隊を根こそぎ流し去った。後には元通りの店内と客
と麻雀卓だけが残った。
「あ! こんなところに麻雀卓が!」
「おい店員、こうなったら麻雀で勝負をつけようじゃありませんか」
 誠に残念ながら、店員は仕事中であった。
「お前さっきから蝋まいて業者を呼んだだけじゃねーか。麻雀やるよな?」
「やるに決まってるっすよ! 客を飛ばすのも仕事のうちっすよ!」
 お通しカットは正か邪か、居酒屋業界の命運を賭けた変則麻雀マッチの火蓋
が、ここに切って落とされた。ファイト!


続く
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