出木杉は謎の書類にのび太の指紋を押した。そして全身写真と血統書を同封
してポストに投函した。5万ドルと引き換えに、のび太は旅立つ。
「旅立つってどこどこ? 何泊何日?」
「あはははは、片道切符に決まってるじゃないか。さあポンの説明いくよ」
モニターに麻雀牌が表示される。のび太の売却で懐の暖まった出木杉が、舌
も滑らかに説明を始めた。
「さっきの手牌を使うよ。を捨てた状態ね。手牌が残っている限り、一局
につき何回でも鳴くことができるのさ」
←チー
「今度は、下家がを捨てたとする。のび太くんの手牌にはが二枚あるか
ら、もう一枚で刻子が完成する。この場合も相手の捨てたを貰うことが出
来るんだ。これがポン。チーと違って、誰が捨てた牌でもポンできるからね」
←チー ←ポン
「チーと同様に、まずはポンと発声する。相手のと自分のを、表に返し
て右隅に移動させる。その後ツモらずに一枚捨てる。捨ててから右隅に移動さ
せる、という順番でも構わないけど、始めの内は移動させてから捨てた方が無
難だよ。ちなみに、ポンした刻子を明刻(ミンコウ)、鳴かずにツモだけで三
枚揃った刻子を暗刻(アンコウ)っていうんだ。言い忘れてたけど、ポンもチ
ーもカンも、右隅に移動する際に誰から鳴いたか分かるように、一枚を横向き
にしておく。上家から鳴いたら一番左の牌、対面だったら真ん中の牌、下家の
場合は一番右の牌を横向きにしておくこと」
上家から 対面から 下家から
「のを上家からチーした場合は、と並べるんだ」
「ポンした場合も、メンゼンではなくなるんだよね?」
「その通り。だから、自分の手牌とよく相談してから鳴くこと。さて、最後に
カンの説明を……」
ズズゥン。
爆発音が鳴り響いた。出木杉の部屋の窓が激しく震えだす。近い。
窓を開けて、のび太が首をめぐらした。高台に建つ出木杉家からは周囲の町
並みが一望の下に見渡せる。
南側の住宅街から煙が上がっている。屋根から突き出した球形のオブジェが
支柱の真ん中からくの字に折れ曲がり、ゆっくりと倒れていった。
キャンピングカプセルだ!
「セワシくん!」
「セワシさん!」
「僕のキャンピングカプセルが!」
出木杉を除いた三人が同時に叫び、部屋から飛び出した。
続く
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