ドラミは風呂に入って、ばっちいのび太菌を洗い流して身を清めた。ドラえ
もんも空気バズーカでのび太の尻を撃ったので、のび太菌の撥ね返りが砲身に
びっしりついているに違いない。
「あー汚い汚い。のび太くん、なめてキレイにしてくれよ」
「なめたらのび太菌とやらが爆増するんじゃねーのか」
「そういやそうだね。のび太くんって頭いーねー。それじゃ行こうか」
「行こうって、どこへ?」
「新しい麻雀の先生のところに決まってんだろ。今までの動画もぜんぶ共有し
てるから引き継ぎもバッチリさ。すごいでしょ」
ドラえもんは五体ほどではない不満足ハンドで天井をさした。電灯の傘の陰
に隠しカメラが仕掛けてあった。
「えーとねドラえもん。一応聞くけど、今までの動画っていつからの動画?」
「ボクがのび太くんの部屋に初めて来た時からだねえ」
「超ロング盗撮じゃねーか! お前は俺のプライベートを丸裸にするために未
来から来たのか!?」
「のび太さん、人聞きの悪いこと言わないでちょうだい。のび太さんに悪意を
抱いている人間は、私とお兄ちゃん以外にも星の数ほどいるんだから」
「うっさいボケ! 誰に覗き見されてたかは知らんが、こうなったら貴様を突
いて犯して薬漬けにして、停滞するAVシーンに一石を投じてやる!」
のび太は右手にバナナ、左手にパンシロンを握りしめた。現在ののび太のレ
ベルでは最強装備である。
「ドラミちゃーん! お覚悟ー!」
のび太は全身から不快度マックスののび太菌を放出してドラミに突進した。
「着いたよ、のび太くん」
一軒の民家の前で、ドラえもんはのび太に言った。のび太は全身包帯に松葉
杖の痛々しい姿で民家を見た。
「ふぁふぇ、ふぉふぉっふぇひょっひょふぃふぇ」
「のび太さん、何言ってんだか分かんないわよ。はい、アーンして」
ドラミがのび太の口をこじ開け、総入れ歯を押し込んだ。
「あれ、ここってひょっとして……」
「連絡はしてあるから、勝手に入っても大丈夫。付いてきな」
玄関のドアを開け、ドラえもんが民家に上がりこんだ。ドラミとのび太もそ
れに続いた。そして静まり返った階段を上り、突き当りのドアを開けた。カー
テンを閉め切っているのか、部屋の中は真っ暗だ。
「ようこそのび太くん!」
誰かの声と同時に、正面の壁が光を放った。壁いっぱいに据え付けられた無
数のモニターが、先ほどののび太とドラミの房事をあらゆる角度から映し出し
た。どうやら隠しカメラは一台ではなかったらしい。
「あはははは、ビックリした? ここ数年ののび太くんの恥ずかしい動画はす
べて保存してあるから、見たい動画は何でも言ってくれたまえ!」
モニターの光に照らされて、男の影が浮かび上がった。男は椅子から立ち上
がり、手を叩きながらのび太に歩み寄ってきた。
出木杉英才である。
続く
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