ドラミが説明を始めた。真面目な口調ではあるが、目は完全にのび太を嘲り
笑っている。
「刻子っていうのは、同じ牌が三枚一組になった面子のこと。こんな感じね」
「刻子には字牌も使えるからね。刻子にならないパターンは」
「まあ、この辺は順子と同じよね。萬子なら萬子だけ、筒子なら筒子だけ、索
子なら索子だけ。のび太さん、学校のバラの花壇にマンドラゴラを植えて大騒
ぎになったじゃない。麻雀だって同じ。順子も刻子も、混ぜ物はノンノンよ」
「なんでそんなこと知ってんだよ。あれが僕の仕業だってことは誰も……」
「最後に槓子だけど、これはちょっと特殊なの。よく聞いてね」
「ドラミちゃんこそ人の質問に答え……」
「槓子は、同じ牌が四枚一組なの。刻子に一枚プラスした形ってこと。最初に
説明したように、麻雀牌は一種類につき四枚だから作るのがとっても難しいの」
「上の例をよく見て。槓子が三つで、合わせて12牌。これに雀頭を加えると14
牌になるから、槓子の場合は一度に三つしか作れない、と考えがちよね。のび
太さんもそう思うでしょ?」
「全然まったく思わない」
「でしょ、そう思うでしょ。とっころが違うんだな。槓子を作る為には、宣言
をしないといけないの。カンと発声して該当する牌を倒して、初めて槓子とし
て成立する。その時、王牌(ワンパイ)から新たに一枚ツモってくるの。具体
的にはこんな感じ」
←ツモ
←カン
←王牌ツモ ←カン
「本当はもう少し複雑なんだけど、カンについてはまた後で説明するわね。ツ
モったをそのまま捨てるとすると、残りの手牌は10枚。この王牌ツモがあ
るから、槓子があっても面子は四つになるってわけ。うまく出来てるわよねー。
あ、王牌ってのは……」
「ドラ表示牌を含めた最後の14牌のことだろ」
「違う違う。麻雀ってのは、一局ごとのツモの枚数が決まってるの。これを最
後までツモっても誰もあがれなかった状態を流局(リュウキョク)と言うんだ
けど、積んだ山を全部ツモっちゃダメなのよ。必ず、最後に14牌を残しておか
なきゃならない。局の始めに振ったサイコロの目が8だとすると、誰もあがら
ないまま牌をツモっていって最後に残るのは、この山」
「赤い牌はドラ表示牌ね。で、ツモっていいのは」
「右端のニ牌まで。残りの14牌には手をつけずに、流局ということになる。こ
のドラ表示牌を含めた最後の14牌のことを、王牌って言うの」
「さっきの俺の答えで大正解じゃねーか、メスブタ! ダラダラ説明してっか
ら、ドラえもんまでどっか行っちまったじゃねーか!」
気がつくとドラえもんの姿が見えない。部屋の中は、のび太とドラミの二人
きりとなった。胸が高鳴る。吐息が熱を帯びる。
しばしの沈黙の後、二つの影が揺らめき、そして重なった。
続く
戻る
TOPへ