ゲーム開始前にも確認したが、改めて各自の点棒をチェックする。
 まずのび太の持ち点。一万点棒が四本と五千点棒が八本で、合計80,000点。
「こら」
 セワシがのび太の胸ぐらを掴み上げた。セワシの点箱には百点棒が三本と、
チョコポッキーが10本入っていた。
「なんで? なんでそういう事するの? あんまふざけてっとこの場でお前を
殺して俺も自動的に消滅するよ?」
「だって、なんか赤い丸がいっぱい書いてある棒の方がセレブっぽいし、実際
そうなんでしょ? お金って、大切でしょ?」
「ああ大切だ。貴様の命なんかよりも、よっぽど大切だ! アチョー!」
 一撃必殺の大技を繰り出すセワシを後ろから羽交い絞めにして、ドラえもん
が両者をたしなめる。
「まぁまぁセワシくん。アチョーも結構だけど、メンツも足りなくなる上に借
用書が無駄になっちゃうでしょ。のび太くん、点棒ってのは早い者勝ちのサバ
イバルレースで集めるものじゃないんだよ。最初の持ち点は、みんな同じなの。
27,000点だったり25,000点だったり、まあ店や地域によって色々あるけど、今
日は25,000点で始めよう」

  
  
  
  
  







 一万点棒が一本、五千点棒が二本、千点棒が四本、百点棒が10本で合計25,0
00点となる。五百点棒がある場合は、五百点棒が一本に百点棒が五本である。
ドラえもんの説明は続く。
「ウマいことやれば点棒が増えて、マズいことをやらかせば減っていく。最終
的に、一番点数の高い人間がトップ。0点を割ったらトビとか箱割れとかいっ
て、そこでゲーム終了。そのまま続行というルールもあるけど、今回はトビで
終了ね」
 席に戻って、伏せていた手牌を起こす。のび太だけは、全員に見えるように
完全に表に返した。手持ちの牌を把握しやすいように、牌をきれいに並べ替え
る。これを理牌(リーパイ)という。
 のび太の配牌は…。



 配牌としては、可もなく不可もなく、というところか。
「すっげぇ! 脂身がないから手に持ってもベトつかないぞ!」
 豚の角煮を比較対象にして感激するのび太である。山積みのことは忘れてい
るか、のび太の山だけ豚の角煮なのだろう。
 親のセワシの第一打、。親は配牌時に14牌なので、初巡に関してはツモ
る必要はない。
 ドラえもんの第一打、。ドラミの第一打、ツモ切り。ツモってきた牌
をそのまま捨てることをツモ切りという。
 いよいよのび太のツモ番だ。
「なーんも分かんないんだけど、まず何すりゃいいの?」
「のび太くん、今僕たちのやってるのは何だか分かる?」
「所詮はオナニーだろ」
「含蓄深いお言葉をありがとう。まずは、山から牌を一枚持ってくる。これを
自摸(ツモ)という。さ、ツモってくれ」
 言われたままに牌を引く。第一ツモは。ドラミがのび太にやさしく語り
かける。
「自分がいらない牌を一枚捨てて、表のまま自分の目の前に置いておくのよ」
「捨てずにとっておけば何かの役には立つんだろうけど、そういうのはダメな
んだよね。どれがいらないの?」
「そうねぇ。始まったばっかりだし、のび太さんは初心者だし。とりあえずは
から捨てればいいんじゃないかしら」
 のび太は素直に従った。のび太の第一打、
「ロン」
 ドラミのソプラノボイスが響き渡る。無表情で牌をパタパタと倒していく。



 小四喜字一色四暗刻単騎。役の説明をしている場合ではない。
 四倍役満。128,000点。

 のび太、本日一回目のトビ。


続く
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