2018年48号 第12話

【前回まで】

 宿禰は263キロのバーベルのおもりを持って軽々と振り回した。これは相撲で言うと首ひねりという技で、人
間にはかけられない技らしい。人間にかけたら死んでしまうからだろう。
「しかし今日は特別に、人間にもかけてあげます」
「加納いけ!」
「はい喜んで!」
 加納は元気よく返事をして、自分の首を宿禰に持たせた。光成の親衛隊には、三成の命令には絶対に逆らえ
ない呪いがかけられていた。
「おっしょい!」
 宿禰が首ひねりをかけると加納の胴体だけが勢いよく回転して、ボキボキボキボキッと骨の砕ける音が天高
く鳴り響いた。加納は死んだ。
「と思うじゃないですか」
 宿禰は片足を高く上げて四股を踏んだ。死んだと思った加納が起き上がった。
「ご老公、これは一体?」
 加納は同じ状況の奴なら誰でも言いそうな事を言って生き返った。光成はふーんと思った。
「ちなみに首ひねりと四股を同時にやったらどうなる?」
「試したことはないので、やってみましょう」
 宿禰は生き返った加納の首を持って片足を高く上げた。
「おっしょい!」
 宿禰は加納を振り回すと同時に四股を踏んだが四股の方が一瞬早く、生きている加納がさらに生き返って、
その後首ひねりで死んだ。
「今度こそおっしょい!」
 宿禰は死んだ加納の首を持って首ひねりと四股をもう一度やった。しかし今度は首ひねりの方が一瞬早く、
死んだ加納がさらに死んでその後四股で生き返ったが、死が1回多かったので差し引きで死んだままだった。
「それっておかしくない?」
「何がですか」
「その理屈だと1回目は生が1回多いから、差し引きで加納は生きてるんじゃないの?加納死んだじゃん」
「そういえば四股で生き返るのは最初だけで、次に死んだら死んだままでした」
「それならワシも納得じゃ!」
 光成が納得したので、加納もあの世で納得した。


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