2018年45号 第1話

【前回まで】

 昔、野見宿禰というめちゃくちゃ強い力士がいた。そして彼の子孫が今生きていて、石炭を握ってダイヤにす
るほど強いので、二代目宿禰を名乗っていると、光成は刃牙に話した。
「わかったよジッちゃん、次はその二代目宿禰と戦えばいいんだな」
「なんで?」
「え?」
 刃牙は死にかけのハゲジジイを見るような目で光成を見た。光成は刃牙を見返して言った。
「ワシはただ、そういう奴がいるらしいって話をしただけだし。戦うかどうかはお前が勝手に決めればいいし」
「え、マジで?」
「嘘ですって言ったらどうすんのお前。ていうかワシが戦えって言ったら相手が誰でも戦うの? ワシの言う事
ならなんでも聞くの? 乳首くれって言ったらくれんの?」
「もういい。とりあえず二代目宿禰に会ってから戦うかどうか決めるから、居場所教えろ」
 光成の言う事がもっともすぎて、刃牙は何も言い返せなかった。
「知らん」
「知らん訳ねーだろ殺すぞ」
「さっきも言ったけど、ワシはそういう奴がいるらしいって話をしただけで、居場所なんぞ知らんし、そもそも
二代目宿禰が実在するかどうかも知らん」
「じゃあさっきの石炭ダイヤはなんなんだよ」
「そうだったらいいなというワシの夢が偶然にも都会の片隅で具現化していたのじゃ」
「要はその辺に落ちてたゴミを拾ってきたんだな」
「俺の息子がタコじじいにいじめられていると聞いた」
 勇次郎がきた。枯れ木のような老人が後ろにいた。
「光成よ、きさま刃牙をいじめているのか」
「けっちょんけちょんにいじめとるぞ」
「そうかでかした。そんな事より、二代目宿禰を連れてきたぞ」
 刃牙と光成は残像が出るほど高速で辺りを見回したが、該当者は枯れ木の老人しかいなかった。
「いやいやいやいや、あんたに石炭ダイヤとか無理でしょ」
 老人は持参した石炭を手に乗せて、もう片方の手を石炭にかざして目を閉じた。すると石炭が光って、やがて
全部ダイヤになった。
「わたし、石炭をダイヤに変える能力があるんです。身体能力はその辺のジジイ並かそれ以下です」
「能力はすごいけど、それで二代目宿禰を名乗るってどうなん?」
「名乗るというか、わたし本当に二代目宿禰なんです。いま二千歳なんです」
「へー」
 刃牙と勇次郎と光成は、いろいろ驚いた。


次号
前号

TOPへ