
2017年02号 第137話
【前回まで】
武蔵は宮根もどきをエア刀で斬ったが、本当はこんなインチキ刀ではなくて金重で真っ
二つにしてやりたかった。それをしなかったのは、何者かに金重を盗まれたからだ。
「武蔵さん、金重を盗んだ犯人が分かったよ!」
刃牙がアホ面さげて言ってきた時点で、武蔵には犯人の正体が大体わかった。
「一応聞くが、犯人は誰だ?」
「俺でございます!」
刃牙は自分の首根っこを自分でつかんで武蔵に放り投げた。武蔵は飛んできた刃牙を床
に叩き落した。
「なぜ盗んだ?」
「こいつが盗めって言ったからだよ!」
刃牙は徳川を武蔵に放り投げた。武蔵は飛んできた徳川を水平に弾き返した。
「本部ごときに負けるような奴に、金重はやれんのう!」
徳川はポールをつかんで反転して武蔵の前に戻ってきた。武蔵を見る目が心底冷たい。
「徳川よ、もう一度だけチャンスをもらえないか」
「やれんわボケ。江戸時代の奴がチャンスとか言うなカス」
「確かに本部には負けたが、言い訳ではなく殺す気になればいつでも殺せた。これからは
一瞬でも目が合った奴は誰彼かまわず躊躇なく斬り捨てるから、金重を返してくれ」
「余計返さんわ」
「ちょっと待て」
金重はもともと武蔵のものなので、他人にどうこう言われる筋合いはない。百歩譲って
徳川家に命令されればしぶしぶ従うが、このハゲが徳川の末裔という証拠は何もなかった。
「貴様、本当に徳川か?」
「あーん?」
徳川は舌が絡み合うぐらいの距離で武蔵を睨みつけた。クローン風情に徳川を証明する
必要などどこにもないが、今日は機嫌がいいので特別に家系図を見せてやった。
「この徳川光成というのがワシじゃ」
「うむ」
「そしてこれがワシの祖先じゃ」
家系図を遡ると、徳川家康と書いてあった。そして豊臣秀吉と織田信長と書いてあった。
「この中のどれかの子孫だったらいいなあ、という妄想を家系図にしてみた」
「ニセモノめー!」
武蔵は徳川をエア刀で斬ったが、エアなので痛くもかゆくもない。
「エア麻酔銃!」
徳川は空の麻酔銃を武蔵に打ち込んで大量のエアを注入した。武蔵は倒れた。
「刃牙よ、ワシ直々に武蔵を斬るから金重をよこせ!」
「はい、金重を溶かして鉄の玉に固め直した奴!」
徳川は刃牙から金重のなれの果ての鉄球を受け取って、刃牙の眉間に投げ返した。
「ワシの金重を返せー!」
「それは私から説明しよう」
声の主は、武蔵にエア刀で斬られた宮根もどきだった。なんだお前。
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