2017年01号 第136話

【前回まで】

「テレビを見てください、武蔵が出ていますよ」
 紅葉は刃牙と本部に言ったが、逆に刃牙が紅葉に聞いた。
「なんで見なくちゃいけないの?」
「だから、武蔵がテレビに出ているんですよ」
「そうじゃなくて、なんでお前ごときが俺たちに命令すんの?」
「ん?」
 紅葉は周りを見回したが、自分の他に医者はいない。お前というのは紅葉の事らしい。
「俺は地下闘技場のチャンピオンで、本部様は武蔵に勝った英雄じゃん。お前みたいな筋
肉バカでヤブ医者でドアノブ回すしか能のない人体実験マニアが気軽に話せる相手だと、
本気で思ってんの? もう世界中のうんこ全部食って死ねよ」
「刃牙くん、これ飲んでみようか」
 紅葉は紫色の液体が入った瓶を刃牙に渡したが、刃牙は液体の正体を瞬時に見抜いた。
「ぜってー毒だろ」
「刃牙くんはバカだなあ。毒は口から飲んだら毒だが、肛門から飲んだら毒が裏返って無
限のパワーが手に入るんだぞ」
「いただきまーす!」
 刃牙は瓶を肛門に刺して一気に吸い込んだ。紅葉は素早く刃牙の肛門から瓶を外して、
代わりにホースを口と肛門に刺した。
「ごっぱあ!」
 刃牙は口から大量の血と糞尿を噴き出したが、ホースを通って肛門から体内に戻って無
限に循環した。刃牙にクリスマスツリーをつなげると、循環で発生した電気でイルミネー
ションが点灯した。
「本部さん、あなたはテレビを見ますよね?」
 紅葉は本部に言った。ここまで沈黙を貫いていた本部だが、重々しく口を開いた。
「私は神だ」
 本部は刃牙の比じゃないぐらい増長していた。紅葉はとりあえず本部の話をすべて聞い
てから処置しようと思った。
「私は最強剣士の宮本武蔵に勝利した。私こそが地上に降臨したまことの剣神である」
「あんた絞め技で武蔵に勝っただろ」
「口答えは許さん。神がテレビの武蔵を見る必要などない。ただし合コンの必要ならある」
 思った通り、大した話は何も出てこなさそうなので、紅葉は小瓶の蓋を開けた。
「神が合コンしたい女子はこのリストにまとめたので、今すぐさらってやれる秘薬を……」
「やかましい」
 紅葉は本部に一生やれなくなる秘薬をかけた。本部の股間は永久凍土に覆われた。
「貴様らに拒否権は一切ない。テレビつけるから見ろ。そして見たら死ね」
 紅葉がテレビをつけると、武蔵が神妙な面持ちで映っていた。そしてテレビの裏側には
武蔵の後頭部が写っていて、テレビの下には武蔵の体が生えていた。
「本部よ、今度は負けんぞ。覚悟せい!」
「お、お前はテレビに映った武蔵ではなく生身の武蔵!」
 武蔵はテレビに化けて本部の病室に忍び込んだのだ。なあんだそっか。


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