2005年02+03号
第232話

【前回まで】
己の体重をも消し去ってしまう程の脱力を生む消力。防戦一方の郭が消力を使い、ついに反撃に出たッッ!!

「ふぉふぉふぉふぉふぉ」
 老獪に笑う郭海皇の切り札は、消力を攻撃に転化した攻めの消力だった。勇
次郎、為す術なしか!


 刃牙と烈海王は一緒に試合を観戦している。二人ともコタツに潜り込んでい
るのに、なぜかブルブル震えている。
「寒いねえ、烈さん」
「そんなことはない! これはコタツだ!」
 烈はコタツのコンセントを刃牙に突きつけた。コタツには電源が入っていな
かった。しかし、それだけではこの寒さの説明はつかない。刃牙は布団をめく
り上げて中を見た。あっと叫んで、大きな塊を取り出してコタツの上に置いた。
「なんだこりゃ?」
 それは氷の塊だった。よく見ると、氷の中に何か黒いものが埋まっている。
なんとかして取り出したい。
「破ー!」
 烈は氷に手刀を振り下ろした。氷は割れずに下のコタツが粉々になった。
「あーあ。せっかくのコタツが」
「コタツなんぞはどうでもいい! 刃牙くん、力を合わせて氷を溶かすぞ!」
「どうやって?」
「なめる!」
 烈と刃牙は氷にむしゃぶりついた。
「ふぉふぉふぉふぉふぉ」
 老獪に笑う郭海皇の切り札は、消力を攻撃に転化した攻めの消力だった。勇
次郎、動かず!


「エロエロエロー!」
 刃牙は氷をなめ回している。半分ほど氷が溶けたところで、大変なことに気
がついた。このまま氷が小さくなっていくと、烈と自分の舌が濃密に絡み合う
ことになるかもしれない。刃牙は顔を上げて烈に言った。
「烈さん、ディープキスの味ってさあ」
 烈は氷から遠く離れたところで牛丼をかっ食らっていた。
「うおい!」
 刃牙は氷で烈の後頭部をぶん殴った。烈は牛丼を吹き出したが、氷にはヒビ
一つ入らない。
「なにをするんだ! せっかくの牛丼をぶちまけてしまったではないか!」
「牛丼じゃなくてよ、氷をなめろよ。お前が言い出しっぺじゃねーか」
 烈は黙って刃牙の青ざめた顔を見た。鼻の下のホクロがイボ痔みたいだな、
と思った。
「それは違うぞ刃牙くん。私は別に牛丼が食べたかった訳ではない」
 と言いつつ烈は牛丼をきれいに平らげて、湯呑み茶碗にお茶を注いだ。
「私が欲しかったのは、このお茶だ!」
 熱いお茶を口いっぱいに含んで氷に吹き付けた。白い蒸気をあげてみるみる
溶けていく氷を、刃牙と烈は一緒に見守った。
「ふぉふぉふぉふぉふぉ」
 老獪に笑う郭海皇の切り札は、消力を攻撃に転化した攻めの消力だった。勇
次郎、タイムして便所へ!


 氷がすっかり溶けた後には、黒い箱が残った。箱の蓋が開いて、中から小さ
な妖精が飛び出した。
「助けてくれてありがとう。お礼に一つだけ願いをかなえてあげましょう」
 刃牙と烈は水浸しになったコタツの残骸を見た。そして同時に言った。
「こいつを元に戻してくれ!」
 水は氷の塊に戻って、妖精は消えた。二人は呆然と氷を見下ろして、仕方が
ないので氷に布団をかぶせて肩まで潜り込んだ。
「寒いねえ、烈さん」
「そんなことはない! そんなことはないぞ!」
 布団の中で、刃牙と烈の足が触れあった。そこだけちょっと暖かかった。
「ふぉふぉふぉふぉふぉ」
 老獪に笑う郭海皇の切り札は、消力を攻撃に転化した攻めの消力だった。勇
次郎、どっさり出た!


次号
前号

TOPへ