
2004年47号 第226話
【前回まで】
郭 海皇こそ中国拳法そのものであり、ここで自分が敗れたなら先の3勝など無意味と言い放つ勇次郎。ついに「海皇」と「地上最強の生物」が激突!!
試合開始と同時に、勇次郎目がけて車椅子が飛んできた。郭海皇が投げたの
ではない。郭はちゃんと車椅子に座っている。
車椅子を投げたのは刃牙だった。郭を乗せたままの車椅子は勇次郎の頭上を
かすめて、二階の窓ガラスを破って外に飛んでいってしまった。刃牙は嬉しそ
うに飛び跳ねながら勇次郎に言った。
「オヤジ! 悪い郭海皇をやっつけたよオヤジ!」
「郭と闘うのは俺なの。お前が手を出したら反則なの。アホか」
「オヤジ! オレ全然アホじゃないよオヤジ! オレ刃牙だよ!」
「あーそうかい。何でもいいからすぐに拾ってこい」
「分かったよオヤジ! 郭を拾ってきて俺も海王にしてもらうよオヤジ!」
足取りも軽やかに、刃牙は闘技場を飛び出した。闘技場の裏手には大きな道
路が通っていて、郭と車椅子は中央分離帯の茂みの中に落っこちていた。さっ
さと回収して郭にとどめを刺してやりたい刃牙であったが、交通量の多い道路
でなかなか向こうに渡れない。なんとなくキョロキョロしているとタクシーが
走ってきたので、刃牙は反射的に手をあげた。
「どちらまで?」
「郭海皇の所に行っておくれよ!」
郭の自宅に到着した。呼び鈴を押してもノックをしても返事はない。どうや
ら留守のようである。刃牙は闘技場に引き返した。
「オヤジ! 今戻ったよオヤジ!」
「郭は」
「留守だったよオヤジ!」
勇次郎にぶん投げられた。二階の窓から外に落ちて、頭を打ったショックで
郭の行方を思い出した。刃牙は元気に先ほどの道路へ向かった。今度は烈海王
が一緒についてきた。
「老師ー! ご無事ですかー!」
烈が呼びかけても返事はない。烈はすぐ近くの横断歩道から中央分離帯に移
って郭を保護した。刃牙は歩道にしゃがんで石ころをかじって遊んでいる。
「刃牙くん」
烈が戻ってきた。なぜかものすごく怒っている。偉大な郭海皇の車椅子を、
郭ごと逆さにして引きずっている。
「郭老師をどこへやった」
「知らないよ!」
刃牙は口の中をジャリジャリいわせながら答えた。烈は郭を車椅子からひっ
ぺがして近くのゴミ箱に叩き込んだ。
「この老師は人形じゃないか! 最後に老師と会ったのはキミなんだから、キ
ミが老師をどこかへ隠したに違いない!」
試合の直前に、刃牙は郭の控え室を訪れた。尊敬する郭を試合場まで案内し
てやりたいと言う。郭は快く了解した。同室の烈が見送って、刃牙は車椅子を
押して控え室を出て行った。それが、烈が郭を見た最後だった。
「隠してなんかないよ! オレ何もかも忘れちゃったよオヤジ!」
「私はキミのオヤジではない! 何としても思い出せ!」
「分かったよオヤジ!」
刃牙は一所懸命に考えた。そしてようやく全てを思い出した。
刃牙は控え室を出て、郭の車椅子を押して全速力で走っている。試合場への
入り口を通り過ぎて外に出て、タクシーを拾って郭の自宅へ向かった。
「どうしてワシの家に来る必要があるんじゃ」
不機嫌そうな郭に、刃牙は真顔で答えた。
「何言ってんだよオヤジ! 我が家が一番落ち着くんだぜオヤジ!」
「オヤジオヤジうるさい。ワシゃキミのオヤジと闘わなくちゃいかんのだ」
郭の言葉で、刃牙は郭が敵であったことを思い出した。
「お前は悪い郭海皇だな! よくもオレを騙したなオヤジ!」
刃牙は正義の刃牙チョップで郭を眠らせて、火をつけたダイナマイトと一緒
に家の中に放り込んだ。大きな爆発音がして家の後ろ半分が吹き飛んだのを見
届けて、意気揚々と闘技場に戻ってきた。
「という訳だよオヤジ!」
「ノー!」
烈、大ショック!
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