2004年46号 第225話

【前回まで】
範 海王VSアライJr.の中国連合軍VS日米連合軍5対5マッチ4戦目はアライJr.の勝利に終わった。そしてついに大将戦、勇次郎と郭 海皇が激突する!!

 訳が分からねえ、とうわ言を残して、範海王は意識を失った。しかしそれ以
上に訳が分からないのは中国軍大将の郭海皇であった。
 日頃からの範の思わせぶりな言動に、郭はさんざん振り回された。毎日のよ
うに郭の道場にやって来てはニコニコ顔で話しかけてくる。
「じいさんじいさん。俺の親父って、誰だと思うよ?」
 郭は毎度毎度の問いかけに飽きもせず、目を細めて範の相手をしてやった。
「おうおう範か。お主の親父様は、はて一体誰なんじゃろうなあ」
「教えてほしい?」
「そりゃモチロンじゃ。さぞかし強い親父様なんじゃろうなあ。で、誰じゃ?」
「どっしよっかなー」
「せめてヒントだけでもくれやせんかのう。どこの国の御仁じゃ? 年齢は?」
「どっしよっかなー」
 大体この辺りでイラついてくる。男にじらされたって嬉しくも何ともない。
「何じゃお前。教える気がないならさっさと帰れ」
「帰っちゃっていーのかなー。親父の名前聞いたらビックリするぞー」
「範馬勇次郎じゃろ。あーすごいすごい。範海王様には脱帽でございますとも
へーへー。ほれ、驚いてやったから答えを言わんか」
「ふふーん」
「死ねー!」
 怒りにまかせて郭がダンベルを投げつける。範はヒョイとかわして、鼻唄ま
じりに道場を後にする。こんなやり取りが二年間続いた。結局、範の口から父
親の名前を聞くことはなかった。
 しかし郭には確信があった。範の父親は範馬勇次郎に決まっている。だから
こそ範を対抗戦の副将に据えてやった。
 その範が負けた。大口を叩いて手も足も出ないという、最もみっともない形
でケツの毛までむしり取られた。郭の推理は間違っていたと言わざるを得ない。
 それでは、範の父親は誰なのか? 郭は範の身辺調査に乗り出した。


「俺さ、マジ訳分んねえんだけど」
 刃牙は勇次郎に詰め寄った。勇次郎は黙っている。
 大擂台賽に出場する勇次郎の真意を計りかねて、刃牙は開催前夜に勇次郎の
部屋を訪れた。そこで衝撃の真実を聞かされた。
「範馬の血を引く男が出場選手の中にいる」
 パンフレットの選手一覧を見て、刃牙にはすぐにピンと来た。範海王だ。地
上最強の遺伝子を受け継いだ兄弟の出現に刃牙の血液は沸き立って、柳龍光の
毒と相まって今にも死にそうな程に興奮した。
 その範が負けた。ボクサー風情のミスターのヘナチョコパンチで小便を漏ら
して大の字になった。こんな弱い奴が範馬一族の筈はないが、他に該当者は見
当たらない。
「範馬の血を引く男ってのは、一体誰のことなんだ?」
 勇次郎は刃牙の問いには答えず、通路の奥に歩いて行った。しばらくして、
顔を包帯で巻いた老人を片手にぶら下げて帰ってきた。劉海王だ。
「コイツが刃牙の弟でしたー!」
「親父より年上じゃねーか」
「養子なんで歳は関係ありませーん!」
「じゃあ範馬の血なんか引いてねーじゃねーか」
 刃牙はすっかりやる気を失って、日本に帰ることにした。闘技場の入り口で
郭と出会って、話を聞くと範の正体を暴くという。面白そうなので郭に付き合
って、二人で範の実家を訪れた。


「入れ」
 ドアをノックすると、聞き覚えのある声が返ってきた。郭と刃牙は顔を見合
わせてドアを開けた。薄暗い部屋に男が背中を向けて胡坐をかいている。その
男が首だけ回してこちらを振り向いた。
「俺が範海王の親父だ」
 先回りをした範馬勇次郎だ。やはり範が範馬の血を引く男であったのだ。郭
と刃牙は同時に口を開いた。
「範馬勇次郎の息子様が、どうしてあんなに弱いのよ?」
「お前達を食べるためだー!」
 勇次郎が襲いかかってきた。訳が分からなかった。


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