
2004年19号 第204話
【前回まで】
「海皇」の名を中国から外へ出してはならぬ。中国勢はなりふりかまわず、日米勝ち残り組に対抗戦を申し込んだ。日米側はそれを受け、勇次郎を中心に団結した!!
連合軍対決第一回戦。オリバと龍くんが、超満員の観客の前に姿を現した。
闘技場の中央にはテーブルがしつらえてある。向かい合った二つの椅子にそれ
ぞれ腰を下ろした。先制の口火を切ったのはオリバだった。
「龍さんは、どうして海王ではないんですか」
オリバの問いに、龍くんは表情を崩さず答えた。
「まあ、色々と忙しくて」
淡々としているが、どことなく歯切れが悪い。オリバは一気に畳み掛けた。
「忙しいから海王にならないってことはないでしょう。龍さん、格闘技でメシ
を食ってるんでしょう? 海王の肩書きがあった方が何かと便利なんじゃない
んですか?」
「そりゃそうなんだけど、あの、申請の日に限って息子が熱を出したり、地方
の巡業と重なったり……」
「郵送でも深夜窓口でも、他にもいくらだってやりようはあるでしょう! 龍
さんアンタ、ホントは弱いから海王になれないんだろ!」
「うらー!」
龍くんが怒った! テーブルをひっくり返してオリバに掴みかかろうとする
ところを、レフェリーが後ろから羽交い締めにして食い止めた。肩で息をする
龍くんに厳重注意を与えて、胸のワッペンを一枚はがした。龍くんのワッペン
は残り二枚になった。
テーブルを起こして、レフェリーが試合を再開する。龍くんは五枚のカード
をオリバの目の前で扇形に広げた。
「オリバさん、一枚選んで下さい」
オリバは鋭い眼光で龍くんを睨み付けながら、真ん中のカードを引き抜いた。
「そのカードを観客に見せて下さい」
オリバはカードを表に返した。『シコルスキー』と書いてあった。龍くんは
床に置いてあったビデオデッキとテレビをテーブルに載せて、再生ボタンを押
した。見覚えのある顔がテレビに映った。
「どもー! シコルスキーでーす! 元気?」
シコルスキーだ。どこかの店の中らしい。ボックスシートに複数の女性を侍
らせて、大層ご満悦の様子である。薄暗い店内には煙草の煙が充満し、ノイズ
まがいのBGMと人々の喧騒がごった煮になってスピーカーから流れてくる。
女性の一人がシコルスキーに話しかけた。
「シコルさん、何してんのー?」
「ああ、ビデオレターだよ。相手はオリバ。さっき話しただろ」
「オリバって、死刑囚を一人も捕まえられなかったっていう無能のオッサン?
だっさー!」
「はははは、ダサいだろ? これがオリバの写真ね」
「何これ!? マジでこんなに筋肉ついてんの!? 気持ちわるーい!」
「筋肉っていうか、ただのデブじゃんコイツ! なんか写真見てるだけで汗く
さーい!」
「だってさ。はははは。オリバのデブー! 無能ー! ほんじゃーねー」
シコルスキーの挨拶でビデオは終わった。
「てめー!」
今度はオリバがキレた! ビデオデッキを叩き壊して、テーブルを踊り越え
て龍くんに襲いかかろうとしたところを、レフェリーが鎖分銅でぐるぐる巻き
にして取り押さえた。デッキ破壊のペナルティーと合わせて、もがくオリバの
胸からワッペンを二枚むしり取った。
オリバのワッペンは残り一枚。オリバ、絶体絶命!
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