
2004年18号 第203話
【前回まで】
「海皇」の名を海外に出してはならぬ!! 郭海皇の号令のもと、郭海皇、烈海王、範海王の他に、郭の息子・春成、その友・龍書文を加えた中国連合軍と、日米勝ち残り5名との団体戦が行われることとなった!!
生涯初のチームプレイに、範馬勇次郎の闘魂は炎と燃えた! 龍くんと勇次
郎の最強コンビが、大擂台賽を汚す日米軍に牙をむく!
「いーやいやいやいやいや」
刃牙はポーズを決める龍くんを突き飛ばして、勇次郎に耳打ちした。
「なんで龍くんとタッグを組むんだよ。親父は日米軍の大将なの。そこんとこ
分かってる?」
「ん!」
「分かってるんなら、こっちに戻ってこようね。みんな待ってるから」
日米軍サイドに向かって歩き出した二人だが、勇次郎の足取りがどうもおか
しい。片足を引きずるようにして、右へ行ったり左へ行ったり、果ては反転し
て逆方向に大きく弧を描いたりと、ちっとも仲間の所まで帰れない。
しばらくして、やっと真っ直ぐ歩いてくれるようになったと思ったら、辿り
着いた先は二階スタンドの客席だった。闘技場をしきりに指さすので、刃牙は
素直に眼下の闘技場を見た。闘技場の床には、大きな大きな龍くんのご尊顔が
描かれていた。刃牙は穴の開くほど勇次郎を見つめて、言った。
「親父、ひょっとして龍くんのことが気に入ったの?」
「ん!」
「なんで? 顔からして、もんのすごい悪いヤツっぽいから?」
「ん!」
「悪党が大好きだもんなあ、親父。分かった! ちょっとここで待っててくれ」
刃牙は一人で階段を下りていった。すぐに戻ってきて、勇次郎の手を引いて
今度こそ日米軍の陣地に連れて行った。陣地の床には、あったかそうな布団が
敷いてあった。
「親父は当然大将だから、出番は当分先になる。だから、ゆっくり休んで体力
を温存しておいてくれ」
「ん!」
刃牙の言葉に甘えて、勇次郎は布団に潜り込んだ。潜り込んだと同時に大き
ないびきをかき始めた。
龍くんは老婆の手を引いて横断歩道を渡った。何度も頭を下げる老婆に爽や
かに笑いかけて、龍くんは飄然と去っていった。
龍くんは囚われの姫を救い出した。我が国の王子になってくれという王様の
お願いを丁重に辞退して、白馬に乗ってあてのない旅に出た。
龍くんはオリバを突き飛ばした。龍くんの頭上目がけて隕石が落ちてきた。
隕石の下敷きになった龍くんの手をとって、オリバは泣いた。龍くんは、お前
が助かってよかったと言って笑った。龍くんは死んだ。
勇次郎は目覚めた。先程までとは打って変わって、不機嫌極まりない顔をし
ている。いつの間にかかぶっていた金属のヘルメットを脱ぎ捨てて、鬼の形相
で中国側の龍くんを睨みつけた。ヘルメットから伸びたケーブルは、何やら変
てこな機械につながっていた。機械の撤収をオリバにお願いして、刃牙は勇次
郎に尋ねた。
「親父、眠っている間、夢を見なかったかい?」
「ん!」
「見たよな。それで、今でも龍くんは悪党だと思うかい?」
「んーん!」
「思わないんだ。ほんじゃあ、龍くんのことが大嫌いになった?」
「ん!」
「よし! 向こうの先鋒は龍くんだ! 布陣を変更しよう! 龍くんの相手は
親父に任せた!」
「ん! ん! ん!」
タッグマッチ第一試合、龍くん対範馬勇次郎、開始!
次号
前号
TOPへ