
2004年17号 第202話
【前回まで】
海王の中の海王“海皇”の名を断じて中国の外へ出してはならぬ。郭海皇はその為に自分の子、春成とその友人の龍を招聘し、中国連合軍を結成した…!!
景気付けに負けた海王共をぶっ殺してくると言って、龍くんは控え室を出て
行った。残った四人が龍くんの帰りを待ちつつ仕出し弁当を投げ合って遊んで
いると、床にのびていた毛海王がむくりと起き上がった。控え室の隅で立ちん
ぼになって、仲間に入れてもらいたそうに四人をじーっと見つめている。
「もう五人揃っちゃったから。手遅れだから。留守番がイヤなら家に帰るしか
ねっから」
説得を試みる郭海皇に対して、毛はすこぶる不満顔だ。そこへ龍くんが帰っ
てきた。海王とおぼしきムサイ男の生首を五つぶら下げている。待たせてゴメ
ンと頭を下げて、四人に一つずつ生首を配っていった。
範海王が李海王の生首を受け取りそこねて床に落とした。生首は毛の足元ま
で転がっていった。投げてよこせと範が催促すると、毛は口を真一文字に結ん
でイヤイヤと首をふった。
「イヤイヤじゃねっから。それ俺の弟の首だから。断じてお前なんかにはくれ
てやんねっから」
範がどんなにお願いしても、毛は言う事を聞かない。生首をしっかりと胸に
抱いて、床にうずくまって徹底抗戦の意を示した。
「そんなことしたって絶対仲間には入れねっから。お前あんまり強くねっから」
烈の容赦ない一言で、毛はやっと諦めた。細っこい目が怒りでますます細く
なって、李の生首を放り出し、五人の顔も見ずに控え室を飛び出した。
負けた海王で生き残っているのは、劉海王とサムワン海王、それにドリアン
海王だ。この三人プラス自分、適当にあと一人を加えて毛連合軍を結成して、
日米軍と中国連合軍の二大勢力に殴り込みをかけてやる!
毛はまず劉の控え室を訪れた。毛の突然の来訪を受けて、劉は顔の皮がめく
れる程ビックリした。日課の昼寝の真っ最中だったからだ。
「お前なんか呼んでねっから。もうしばらくお昼寝すっから。いっぱい寝ない
と長生きできねっから」
猛烈な勢いで毛にお帰り願うが、毛はちっとも出て行かない。仲間になって
もらいたそうに、劉をじーっと見つめている。毛の熱意に劉は負けた。毛と運
命を共にすべく、控え室を旅立った。
サムワンの控え室にはサムワンと、サムワンの師匠の蘇柳勝がいた。何をす
るでもなく戸口に突っ立っている毛と劉を見てサムワンが、
「お前ら二人はブサイクだから。俺は女にもてっから」
と、ケンカの強さとは無関係な悪口を言った。だが毛と劉はくじけない。無言
のプレッシャーをサムワンに与え続け、さすがのサムワンもとうとう屈した。
三人目の仲間が加わった。
「俺、サムワンの師匠だから。俺も行くから。ムエタイだけじゃ虫ケラにも勝
てねっから」
そうのたまって、蘇柳勝もついてきた。これで四人。後はドリアンを口説き
落とすのみだ。
ドリアンは裏庭の丘にしゃがんでラッキョウの皮を剥いていた。四人の視線
にも気づかぬ風で、一心不乱にラッキョウの皮を剥きまくっている。皮がなく
なっても実を剥き続けて、とうとうラッキョウは芯だけになった。食べるとこ
ろのなくなったラッキョウを哀しげに見つめて、ここで初めて背後の四人を振
り返った。目に涙をいっぱいたたえて、たどたどしい口調で、言った。
「俺……バカじゃ……ねっから」
四人の胸に感動の嵐が吹き荒れた。そうだ! 俺たちは決してバカじゃない!
チンカスみたいな俺たちだけど、みんな頑張って生きているんだ!
バカじゃねっから!
弱くねっから!
毛連合軍、ここに完成! どうせ速攻で負けっから!
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