2004年15号 第201話

【前回まで】
100年に1度開催される中国最大の武術大会大擂台賽。優勝者には海王の中の海王、「海皇」の名が与えられる。白林寺の名を背負い、烈は孫に勝利を収めた…!!

 試合は終わったが、烈海王は闘技場を立ち去ろうとはしない。無様に這いつ
くばる孫海王の傍らにひざまずき、優しく語りかけた。
「どうだ孫くん。これが真の海王の実力というものだよ」
「ふざけんなバカ! お前なんかよりウチの母ちゃんの方がよっぽど強いわ!
ぶっ殺すぞ!」
 孫は顔を上げて負け惜しみをぬかした。気を失っていたわけではないらしい。
「そこでだ。私がどのような修行をしてこんなに強くなったのか、君に教えて
やろうじゃないか。さあ、私の手を握って目を閉じてごらん」
「うっせーな! 気安く俺に触るんじゃねーよ! 白林寺の肥溜めの臭いがう
つっちまうだろ! 犯すぞ!」
 さんざん悪態をつきながらも、孫は素直に烈の手を握り、言われた通りに目
をつぶった。孫の頭に、セピア色の映像が流れ込んできた。


 劉海王とその弟子が、稽古に汗を流している。多くの門下生がひしめく道場
の片隅で、少年時代の烈が寝そべって鼻くそをほじくっている。稽古の見物に
も飽きたと見えて、やがてくるりと背を向けて寝てしまった。
 場面は替わり、劉と勇次郎が闘っている。どうやら先ほどの試合のようだ。
烈は奥まった通路の壁にもたれかかってグースカ眠っていた。劉が顔の皮を剥
ぎ取られて悲鳴をあげた途端にガバと起き上がって、人体標本のようになった
劉の顔を見て腹を抱えて笑い出した。


 そこで映像は途切れた。烈が両手をパンと叩くと、孫は我に返った。
「どうだい孫くん。これが私の強さの秘密だよ」
「ぜんぜん修行なんかしてねーじゃねーか! なめんなボケ!」
 やれやれという風に、烈は両肩をすくめて苦笑を浮かべた。そこへ郭海皇が
やって来た。
「烈くん、そろそろ次の試合を始めようじゃ……」
「おお、郭老師!」
 烈は素早く郭のバックを取り、組み合わせた両手の人差し指を立てて郭のお
ケツにぶっ刺した。郭の肛門から頭に、古き良き日の烈の思い出が流れ込んで
きた。


 刃牙が梢江とまぐわっている。その横で、烈がつまらなそうに漫画雑誌を読
んでいる。激しく上下する布団のズレを、時々なおしてやったりしている。
 不意に、烈の漫画雑誌に黒い影がさした。何事かと頭を上げると、そこには
郭がのっそりと立っていた。
 あれれ? 何で郭老師が? 不可解ながらも危険を感じて立ち上がった烈の
バックを取り、ケツの穴に太くて長い鉄の棒をズンと打ち込んだ。


「けえー!」
 現実世界の闘技場で、烈は苦痛の叫びをあげた。郭に浣腸を食らわせている
烈であるが、よもや頭の中で郭に逆浣腸を決められているとは観客の誰も気が
つくまい。
「わ、私は負けんぞ! 孫くん、海王の誇りをかけたこの勝負、しっかと瞼に
 焼き付けてくれたまえ!」
「郭老師に何てことすんだテメー! 死ね!」
 両手のふさがった烈の肛門に、孫の鋼のような指がねじ込まれた。孫の指か
ら頭に、現在の烈の心境が流れ込んできた。


『海王のレベルも、落ちたものだ……』


 そうだね。いい年こいた海王様が浣腸はないよね。


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