2004年13号 第199話

【前回まで】
100年に1度開催される中国最大の武術大会・大擂台賽。復活を遂げたバキは、父・勇次郎の前に姿を現す。挑発し、つめ寄るバキに対して勇次郎は…!?

 烈海王もオリバも郭海皇も、まるで刃牙の相手にはならなかった。範海王に
至っては、あれだけ思わせぶりに謎を引っ張っておきながら実は人数合わせの
アルバイトだったことが判明した。勇次郎は刃牙が怖くて便所にこもったまま
出てこない。100年に一度の大擂台賽は、範馬刃牙の完全優勝で幕を閉じた。
おめでとう、刃牙!


 ということにして、刃牙は日本に帰ってきた。出場選手はどいつもこいつも
ギョウザくさいしマヌケ面ばっかりだし、中国にいてもいい事なんか一つもな
い。そもそも拉致同然に烈に引っ張ってこられたのだから、これ以上付き合っ
てやる義理もない。必死に引き止める梢江をガンジス川に叩き落として(川の
名前なんか知らねー)、日本行きの飛行機に飛び乗った。
 懐かしの我が家で一息つくと、なんだか本当に優勝した気になってきた。す
ぐにでも刃牙様の快挙を皆に知らしめるべきだと、知り合いの家を片っぱしか
ら回ることにした。大擂台賽なんて日本じゃ誰も知らないからウソもばれない
だろうし、ばれたところで失うものは何一つない。


 まずはミスターのホテルに向かった。備え付けの消火器で部屋のドアを何度
もぶっ叩くと、ノブが回ってミスターが顔を覗かせた。
「ヘイミスター! 俺、大擂台賽で優勝したんだぜ!」
「嘘つくなよバカ」
「はい、嘘であります!」
 ミスターは刃牙と一緒に日本に帰ってきたんだった。そりゃバレるわけだ。
ジョークの通じないミスターに爽やかな笑顔をふりまいて、刃牙は次の獲物を
求めて表に出た。


 飛騨山中には安藤と夜叉猿Jr.がいる。日本語の通じないゴリラの安藤はシ
カトして、夜叉猿Jr.の根城へと直行した。
 夜も更けた。山の中腹にぽっかりと開いた洞窟からは、いかなる者をもよせ
つけない魔性の風が吹き付けてくる。だけど刃牙にはそんなの関係ない。無限
の闇の広がる洞窟に向かって、大声でどなりつけた。
「サルー! 俺は大擂台賽で優勝したぞサルー!」
 返事はない。なめてんのかクソザル。刃牙は懐からダイナマイトの束を取り
出すと、火をつけて洞窟の奥に力いっぱい投げ込んだ。
 ケツの穴が閉まる程の炸裂音と共に、洞窟上部の小山が吹き飛んで真っ赤な
火柱があがった。見事に崩落した洞窟のがれきの山がふいに盛り上がり、全裸
の男がよろよろと立ち上がった。愚地独歩だ。あれ、なんで独歩が? まあい
いや。
「独歩さん、俺、大擂台賽で優勝して失禁しちゃったんだよ!」
「道場が! ワシの道場が!」
 独歩はそれどころじゃないらしい。神心会ビルに帰るつもりが、ちょっと道
を間違えて飛騨まで来てしまったという。困っている人を放っておけない心優
しき刃牙は、全裸の独歩にエロ本を与えて東京に連れて帰ってやることにした。


 神心会ビルの館長室で、刃牙は独歩に大擂台賽の一部始終を語って聞かせた。
並みいる海王達との死闘、父親の涙、梢江の死、現場に残された謎の血痕、コ
ンピューターの叛乱、そして優勝。
「そうか、優勝したか!」
「はい、優勝しました!」
「お祝いに、ワシと一緒に中国へ行こう!」
 独歩のおせっかいで中国へとんぼ返りとなった刃牙を待ち受けていたのは、
やっぱり大擂台賽だった。大擂台賽編、再開。


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