
2004年07号 第195話
【前回まで】
100年に1度開催される中国最大の武術大会大擂台賽。敗北を知ったが為に自我崩壊したドリアンは、あまりにもあっけなく楊 海王に敗れてしまう……!!
ドリアンの怒りは爆発しなかった。ドリアンは負けた。
物陰からこっそり観戦していたオリバが申し訳なさそうに闘技場に入ってき
て、無様に倒れたドリアンの髪の毛を力任せに引っ張って耳元に口を寄せて小
声で囁いた。
「ハゲてめー、負けてんじゃねーよ!」
廃人同様のドリアンだが、口答えをするぐらいの知性は残っている。オリバ
の首に腕を回して逆にこちらに引き寄せ、猛然と反論を開始した。
「うっさいボケ! あれっぽっちのキャンディで本気出して闘えるわきゃねー
だろ! あんまり海王なめてっと殺すぞ!」
「デコピンだけで優勝するとか中国人は死刑囚と相性が悪いとか、お前日本で
散々でかい口たたいてたよな? だっせぇ! ドリアンだっせぇ!」
「2004年から死刑囚に不利なルールになったんだよ! ださいとか言うな!」
「俺、ドリアンが優勝しなかったら筋トレやめてもいいって、署内中の人間に
言って回っちゃったよ! どーすんだよオイ!」
「知らねーよバカ! 筋トレやめるついでに、全身に片栗粉まぶして黒人もや
めちまえ!」
「あ、差別発言! もう許さんぞ! キャンディ返せ!」
「その辺に吐き出したから、勝手に持ってけ! 息が臭いんじゃ!」
「ハゲのよだれまみれのキャンディなんかいらないんじゃ! 未開封のキャン
ディか、キャンディ代返せ! 今すぐ返せ!」
「たかがキャンディ一個でブーブーぬかすな! 黒デブ!」
「うがー!」
「きえー!」
ここでオリバは審判にタイムを要求した。試合は終わっているのでタイムも
くそもないのだが、オリバの形相に気圧されて審判も思わず首を縦に振った。
キャンディはたまたま居合わせた烈海王が食べちゃった。
休憩時間は五分間。表の空気を吸って頭を冷やすつもりのオリバだったが、
一般入場ゲートの前で刃牙とすれ違った。刃牙は病院からの帰りだと言う。
猛毒を受けても死なない、砂糖水を飲んだだけで体重激増など、自分の体は
明らかに普通じゃない。きっと悪い病気に違いないと思って、病院で検査を受
けて一週間分の薬をもらってきた、という刃牙の説明を聞くや否や、オリバは
その薬袋を出し抜けにひったくった。
「よこせ、バカ」
よこせと言われて、はいそうですかと素直にあげる訳がない。刃牙はオリバ
の手から薬を奪い返して、猛然と反撃を開始した。
「何すんだテメー! これはな、筋肉をつける薬とはち・が・う・の! 見れ
ば見るほど不自然な筋肉つけやがって、キモいんだよハゲ!」
「ハゲはドリアンだけで充分なんじゃクソガキ! それじゃ一体なんの薬なん
だよ! あ!?」
「知らねーよそんなもん! 医者がこれ飲めって言ったから飲むんじゃ!」
「お前は医者がゴリラの血尿飲めって言ったら飲むのか!? 俺が毒味してや
るからよこせ、このー」
「絶対イヤじゃ!」
「いぎー!」
「あばー!」
二人に引っ張られた袋が破れて、中身の錠剤が宙に飛び散った。たまたま通
りかかった烈が全部食べちゃった。
キャンディも食った。錠剤も食った。おいしいところは全部烈がいただいた。
烈、してやったり!
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