
2004年04+05号
第194話
【前回まで】
100年に1度開催される中国最大の武術大会・大擂台賽。毒を克服し、15キロにも達する砂糖水を飲み干したバキは、完全復活する。一方、試合場に姿を現したドリアンは…!?
試合開始と同時に楊海王の放ったキックを腹に受けたドリアンは、たまらず
口からキャンディを吐き出した。
ドリアン-キャンディ
床に転がったキャンディに、どこからか差し込んだ太陽の光が反射して、二
階席を警備中の坊主の目に飛び込んだ。キャッと言って坊主が顔をそむけた拍
子に、持っていた青龍刀を思わず取り落とした。
青龍刀の柄には紐がくくりつけられていた。もう一端は天井に結ばれている。
青龍刀が振り子の軌跡を描いて闘技場を横断し、反対側の客席でビールを買お
うとしていた国家主席の財布を切り裂いた。財布からこぼれた一元紙幣が風に
吹かれて、階下のドリアンのアゴに貼りついた。
(ドリアン-キャンディ)+金
軌道の変わった青龍刀が大きく揺れ戻って、棒立ちのままのドリアンの眉間
に深々と突き刺さった。ドリアンはバカなので、脳をやられても別にどうとい
うことはなかった。
(ドリアン-キャンディ)+金+近代兵器
国家主席が下に降りてきた。大事な大事な一元紙幣を取り返そうとドリアン
のアゴに手を伸ばしたが、はずみで袖口のボタンがドリアンのアゴヒゲにから
みついて外れなくなった。どんなにもがいてもボタンは外れない。国家主席は
離脱をあきらめ、ドリアンと共に余生を送る決心をした。
(ドリアン-キャンディ)+金+近代兵器+権力
すべての力を手に入れたドリアンに、もはや闘う理由はない。一等地に広大
な屋敷を構えて悠々自適の生活を送っていたドリアンの下に、ある日一通の封
書が届いた。プールサイドで日光浴を楽しんでいたドリアンはメイドを呼びつ
けた。
「おーい、封書を開けるモン、持ってきてくれ」
「かしこまりました、ご主人様。キャンディでもよろしいでしょうか?」
「ああ、それでいいよ」
ドリアン+キャンディ
キャンディを二つに割って、鋭利な断面で封筒を切った。死刑囚時代の友人
からの、同窓会の招待状だった。過去を捨てたドリアンは、しかしフンと鼻で
笑っただけで手紙をゴミ箱に放り込んだ。ただし、同封されていたキャンディ
だけはしっかりと取っておいた。
ドリアン+キャンディ+キャンディ
そこへ執事が血相変えて飛び込んできた。息を切らしながらドリアンにバッ
ドニュースを報告する。
「ご主人様! キャンディ相場が暴落しました!」
「ナニそれ!」
「私がこっそり買いました。ご主人様、破産です! ゴメンチャイ!」
翌日、500億個のキャンディの現物がドリアン宅に積み上げられた。
ドリアン+キャンディ+キャンディ+(キャンディ*500億)
家も土地も財産もすべて没収された。ドリアンの心は再び壊れた。
しかし、キャンディの山に埋もれたドリアンの顔には、この世の誰よりも幸
せそうな極上の微笑みが刻まれていた。
そうそう。ドリアンのアゴヒゲにからみついてる国家主席、こいつ選挙で負
けてやがんの。
ドリアン+キャンディ+キャンディ+(キャンディ*500億)+ただのオッサン
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