2003年49号 第189話

【前回まで】
100年に1度開催される中国最大の武術大会・大擂台賽。毒に侵された身のバキは李の毒手の猛攻にダウンする。しかし、梢江の涙が引き金となりバキの毒は裏返る!! 完全復活したバキの一撃が李を倒すッ!!

 刃牙のヘナチョコアッパーなんかで海王が死ぬはずはない。全然効いてない
ぞ、という風に両手をあげてヒラヒラさせながら李海王はボケーと突っ立って
いる。一方の刃牙も、今のは全然本気のパンチじゃないんだぞ、という風に両
手をあげてヒラヒラさせながらボケーと突っ立っている。
 二人とも両手をあげてヒラヒラさせながらボケーと突っ立っているだけなの
で、ちっとも勝負がつかない。勝負がつかないから試合も終わらない。この一
回戦第三試合を皮切りに、大擂台賽は果て無き泥沼の無間地獄に突入した。


 無間地獄。
 浜崎あゆみの同名の曲にもあるように、無間地獄においては通常世界での戦
闘力など全く当てにはならない。優勝候補の筆頭と目されていた範馬勇次郎が、
まず脱落した。退屈のあまりヘリに乗って日本に帰ってしまったのだ。勇次郎
から話を聞いた日本の愚地独歩もふて寝をこいて脱落した。妻の夏恵はすでに
物語から脱落しているので、これで夫婦揃ってのリタイヤとなった。
 選手入場口で戦況を見つめていたドリアンが、突然手を叩き始めた。ブラボ
ーだのナイスファイトだの叫びながら、刃牙と李に対してスタンディングオベ
ーションを送っている。
 アホのドリアンはともかく、アホではないオリバにとっては全然ナイスファ
イトじゃない。刃牙と李に中指を立てて唾を吐くと、ドリアンの首根っこを掴
んで引きずって会場を出て行った。客席でポップコーンを頬張っていたスペッ
ク、シコルスキー、ドイル、柳もオリバ達に続いて会場を出た。
 最凶死刑囚、脱落。そして最凶死刑囚編、完結。
 郭海皇も帰った。範海王も帰った。サムワン海王は胴を真っ二つに斬られて
息絶えた。強豪が次々と姿を消していく中、ついに烈海王が席を立った。
 あの烈までが! 会場中の客が一斉にざわめいたが、烈は棒状の荷物を抱え
て戻ってきた。中国連合軍のベンチではなく、試合場中央の刃牙と李に向かっ
て歩いていく。
 二人の目の前までやって来て、荷物の包みを解いた。荷物は白いビーチパラ
ソルだった。激しいボケーを繰り広げている二人の間にパラソルを立てると、
ようやく安心したような表情を見せてベンチに戻った。
 ビーチパラソルと闘技場の屋根。二重の盾によって紫外線から守られた刃牙
と李の肌は雪のように白く、そして瑞々しい。無間地獄に二人の天使が舞い降
りた。
 この瞬間が永遠に続けばいい。烈の双眸から涙が溢れ出た。
 闘いはまだ始まったばかりだ。


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