2003年43号 第185話
【前回まで】
100年に1度開催される中国最大の武術大会・大擂台賽。バキの対戦相手は、中国において最高の毒手の使い手・李 海王!! 毒に侵された身で、バキは………!?
範馬の血が悪いほうに目覚めた。膨れ上がった足の甲を食い入るように見つ
め、刃牙はくるりと踵を返した。こんな反則チャンコロと試合なんかできるか、
と吐き捨てると、闘技場から引き上げて控え室に閉じこもってしまった。オヤ
ジ譲りの面倒くさがりが、こんなところで覚醒した。
残された選手達はたまったものではない。百年に一度の大擂台賽で試合放棄
などという客をナメた裁定を下す訳には断じていかない。すぐさま刃牙をつれ
戻そうと審判団が控え室に飛んでいったが、ドアには鍵がかかっていた。仕方
がないので、とりあえずおだてて刃牙のご機嫌をとってみた。
「いよっ憎いね、この毒のデパート!」
とか、
「中国の女は、みんな刃牙さんのブロマイドでオナニーしてるんですよ。俺も
一発抜きたいなぁ!」
とか口々にはやしたてると、ドアがゆっくりと開いて刃牙が顔を覗かせた。間
髪いれずに捕獲網を振り下ろすが、惜しくもかわされた。乱暴にドアが閉めら
れて、部屋の中からガラスの割れる音が響いた。花瓶か何かを投げつけたのだ
ろう。
ホウ酸団子も毒入りジャガイモも、刃牙を釣り出すには至らなかった。万策
尽き果て途方にくれる審判団の前に、オリバと勇次郎がやって来た。俺達に任
せろと言って、おもむろにドアをノックした。
スコープの前で肩を組んで白い歯を見せると、ほどなくしてノブが回った。
わずかに開いたドアの隙間につま先をねじ込み、ペンチでチェーンを切断して、
滑り込むように中に押し入った。
耳をつんざく絶叫があがって、そして静寂が辺りを包んだ。10分後、刃牙が
姿を現した。顔が完全に背中を向いている以外は元気そのもの、といった様子
だ。オリバと勇次郎に両肩を委ねて引きずられるように闘技場へと向かった。
試合再開。李海王の軽いジャブが刃牙の顔面にヒットしたと同時に、勇次郎
は手の中のボタンを押した。
ボン。爆音と共に刃牙の体から白煙が上がり、素っ首が落ちて地に転がった。
毒手拳、恐るべし。勝者、李海王!
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