2003年34号 第178話

【前回まで】
"死"をも顧みず、刃牙は大擂台賽で闘うことを決意した。そして、当日……!?

 大擂台賽なんてやってなかった。少林寺の門を叩いた海王達を出迎えたのは
クモの巣だらけの闘技場と、溜まりに溜まったゴミ袋の山だった。大会委員長
であるはずの劉海王も「まぁええやん」という感じで鼻クソをほじるばかりで
ある。
 うさんくさい男だとは思っていた。「少林寺は俺の庭だから」と豪語した割
には道に迷って右往左往したり、ないないと騒いでいたオリバの財布が劉海王
のカバンの中から出てきたり。挙句の果ては、この体たらくだ。こんなロンパ
リの死にぞこないに運営なんか任せるんじゃなかった、と後悔するがもう遅い。
海王が勢ぞろいしたのも何かの縁だし、別の方法で最強を決めようじゃないか、
ということになった。招待選手の刃牙達も義理で付き合ってやった。


 第一種目、マラソン。スタートの合図と同時にサムワン海王と除海王が猛烈
なダッシュで飛び出したが、あとの人間は走ろうともしない。そりゃそうだ、
無駄に走ったって疲れるだけだもん。気づかず走り続ける二名の姿が、やがて
地平線の彼方に消えていった。脱落。
 第二種目、腕相撲。オリバの独壇場かと思われたが、郭海皇が意外な力を見
せる。次第に押されるオリバに焦りの色が浮かぶ。番狂わせか!? というと
ころでちと力が入りすぎた。この日に限ってオムツを忘れた郭海皇の汚染物質
が傍らに立っていた寂海王と陳海王を直撃した! 薬手を気味悪がって相手に
されなかった李海王と合わせて、三名脱落。
 第三種目、算数。ドリアンの解答を丸写しした楊、孫、毛が全問不正解で失
格。ドリアン本人は、まぁこんな状態だからというのでOKとなった。
 勇次郎が後ろを振り返った。範海王だ。じーっと勇次郎を見つめている。勇
次郎と目が合うと、おもむろに上着を脱ぎ捨てて背中を向けた。
 背中に浮かんだ筋肉の隆起は、まさしく鬼の顔だった。まさかこいつは!?
 範を鼻で笑い飛ばした勇次郎が、同じく上着を脱いで背中を向けた。勇次郎
の背中には、鬼の顔が30面ほど刻まれていた。更なるパワーアップを果たした
勇次郎に恐れをなして、範海王、逃亡。同時に、ドリアンが頬張っているのが
キャンディではなく郭海皇だということが判明した。二名脱落。


 ミスターが携帯電話を取り出した。少林寺からの連絡で、用があるから雁首
並べてすぐに来いという。
 勝ち残った七名が少林寺に戻ると辺りは真っ暗。銅鑼の音が響き渡ると同時
に灯りがついた。
 超満員の闘技場に『大擂台賽』の垂れ幕。なんだ、結局大擂台賽やるんじゃ
ん! お誕生日パーティーのような粋な演出に、七名の感動はいかばかりか。
邪魔なザコ海王も首尾よく始末し、新たにいつものメンバー&死刑囚を加えて、
大擂台賽、開幕!


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