2003年33号 第177話
【前回まで】
実力を試されたマホメドJr.だったが、あの因縁の型をあっさり攻略し、決着。その頃、闘いの調整を始めたバキに異変が!!
板垣先生はバカではない。これ以上トーナメントを続けたら読者から総スカ
ンを喰うことぐらい、ちゃーんと分かっている。『次号、決着!』の予告を二
度までも反故にした大擂台賽も、ついに決勝を迎えた。
かたや花山薫、かたやラオウ。
繰り返すが、板垣先生はバカではない。キチンとコアミックスに許可をとり
キチンと原哲夫先生直々にラオウを描いてもらった。もちろん瞳だけは板垣先
生が描き入れた。
さて試合だが、ラオウにしてみれば拳王から海皇への肩書き変更は、明らか
に格下げである。当然やる気なんかこれっぽっちもない。自家製のどぶろくで
グデングデンに酔っ払って、客席でいちゃつくカップルに因縁をつけている。
その隙を花山は見逃さない。もつれるラオウの足に強烈なローを叩き付けた!
ここで原先生と板垣先生の執筆スタイルに触れておこう。
円錐角膜を患う原先生は、細かいペン入れが出来ない。通常使われる原稿用
紙は誌面の若干倍程度の大きさだが、原先生の用紙はドドンと10メートル四方。
正方形の原稿用紙なんて、やっぱりすげえや原先生!
この特大用紙一杯にラオウを描き込み、板垣先生の仕事場に送付した。
対する板垣先生は、体は至って頑健である。通常サイズの原稿用紙にごく普
通に描く。その普通に描いた花山と原先生の10メートルのラオウを、板垣先生
はあまり深く考えずに原寸同士で貼り合わせた。板垣先生ならではの離れ業で
ある。
ということは、つまり……。
超ミニチュアサイズの花山のハイキックが特大ラオウの踵をソフトに撫でた。
ラオウは全然効いていない。小うるさそうに鼻クソをほじって足元に落とすと
丸めた鼻クソが燃える隕石となって、ペチペチうるさい花山を押し潰した。
経絡秘孔とか北斗なんちゃら拳とか、もう何にも関係ない。圧倒的強さで、
ラオウ優勝。
あー、優勝しちゃったよ! 海皇なんてクソ称号いらねーっつの! そこの
カップル、もっと自分を解放して狂おしく貪りあえや!
怒りのラオウが暴れ出した! リングを切り裂き便所の扉をぶち破り、果て
は観衆でごった返すスタンドに突入した。ラオウが一歩踏み出すごとに、数百
人単位の観客が土に還ってゆく。少林寺の伝統もここまでか? ジェット・リ
ーはヅラなのか!?
「そこまでだ、ラオウ!」
場内の人間すべてが、凛と響いたその声の主を目で探した。選手入場ゲート
だ! 劉海王と勇次郎の露払いで現れたのは、現海皇・本部以蔵である!
編集者の機転で、最終ページでようやく縮尺のあったラオウと本部の闘いが、
今始まる。
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