2003年30号 第174話
【前回まで】
張の攻撃が当たらない。刃牙の攻撃も当たらない。世紀の大凡戦に業を煮や
したレフェリーが、カンフル剤を投与した。刃牙の口から肛門に巨大な電磁石
を貫き通し、張のグローブに磁石を埋め込んだ。万一のトラブルに備えて、護
身用の金属バットを自分の背中に忍ばせる。さあ、電磁石のスイッチON!
バットもろとも刃牙に貼りついたレフェリー。間髪入れず、張のマグネット
パンチがレフェリーの顔面にめりこんだ。
ここでレフェリーの生い立ちを紹介しよう。終戦間もない東京で産まれたレ
フェリーは、資産家の両親のもとで何一つ不自由なく、ぬくぬくと暮らしてい
た。定職にもつかず遊び呆ける毎日。金塊を溶かして馬糞と混ぜ合わせる『手
作りチョコごっこ』、女の子の家に腕利きのヒットマンを送り込んで無理やり
好きと言わせる『ポツダム純愛宣言』、大量に買い付けたゴッホの絵画を野犬
の群れに放り込んで、ダイレクトでキャッチした犬に金一封を進呈する『トッ
プブリーダー』など、財力に物をいわせた新遊戯を次々と考案した。
一日、暗い足元を札束のたいまつで照らしたという成金の逸話を聞いて俄か
に奮い立つ。向こうが足元ならこっちは日本だ!
火力発電所を建造して日本全土に電気を供給した。火力の源はもちろんお札
である。燃やせ!ありったけの金を燃やして、日本を俺色に照らし出せ!
レフェリー一家は破産した。絶望した父親は逐電し、母親は雷に打たれて死
んだ。残されたレフェリーのハングリー生活が始まった。五歳の冬であった。
数十年後、レフェリーは三流企業の係長となっていた。会社では生ゴミ扱い
だし家に帰ればカカアがうるさい。来る日も来る日も赤ちょうちんで安酒をあ
おって上司の愚痴をぶちまける。
そんなレフェリーの唯一の楽しみは、テレビ局へのクレームである。タモリ
の人間性に疑問だのクレヨンしんちゃんにケツ毛を生やせだの、そのバリエー
ションは多岐に渡る。武闘大会中継を観戦中、いつものようにテレビ局に電話
をかけて当り散らした。
「烈海王とかいう中国人の顔が人形焼に似ているので、もう人形焼が食えない。
何とかしろ」
これが彼の人生を一変させた。怒り狂った烈がレフェリーとの直談判を申し
入れてきたのだ。ところが、いざ話してみるとたちまち意気投合、中国に国賓
として招かれるに至った。これで上司と部下との板ばさみ生活ともおさらばだ!
やったねレフェリー!
のはずだったのだが、中国でも刃牙と張との板ばさみ。バカめ!
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