2003年29号 第173話
【前回まで】
鉄製のドアを吹き飛ばし、ボーイを切り刻んでミンチにする。暴虐の限りを
尽くして全国のホテル業者を恐怖のどん底に叩き落した範馬勇次郎。その豪傑
伝説がゲームとなって蘇った! しかもR指定のエロゲーである。
神心会の館長室で、克巳とミスターがPCのモニターを食い入るように見つめ
ている。購入したゲームを早速インストールして、オープニングの真っ最中で
ある。
『勇次郎が来る! 〜貴様らに見せるエロはねぇ〜』
とてもエロゲーとは思えぬタイトルのバックには、髑髏の杯で酒を呑む勇次
郎のあられもない姿。
ゲームのルールはいたって簡単。主人公の勇次郎を操作してドアを投げつけ、
画面の上から襲ってくるホテルのボーイの編隊を倒していく。それだけ。ボー
イを全滅させれば一面クリア。そしていよいよお待ちかねの!
二面に突入。クリアすると三面、以下延々と続く。エロCGとか一切なし。勇
次郎はもちろん無敵なので、敵の弾に当たってもビクともしない。放っておい
ても勝手にゲームをクリアしてくれるオート機能までついて、ゲームというよ
殆ど環境ソフトである。
宇宙の神秘を感じさせるウンコな出来ばえのエロゲーだが、それ以前に全然
エロゲーじゃねーじゃん、これ。ブチギレ寸前の震える手で、克巳は『BOSS』
ボタンをクリックした。
どこかで見たような女の開脚画像が画面一杯に映し出された。梢江だ。同時
に背後の窓ガラスが砕け散り、全裸の梢江が館長室に転がり込んできた。CGと
同じポーズをとって、ミスターと克巳をしきりに挑発する。
「ヘイボーイ! ファックミー! オー!」
ミスターは梢江の顔面に右ストレートを叩き込んだ。白目を向いて気絶した
梢江をラップでぐるぐる巻きにして台所の冷凍庫に放り込むと、何事もなかっ
たかのように今度は『BOSS2』ボタンをクリックした。
スクリーンセーバーが起動した。真っ黒な画面の右から左に竹竿が掛け渡さ
れている。
画面の奥から梢江がやって来た。両手に持ったたいまつをぶんぶん振り回し
て、大きく体をのけぞらせて竹竿の下を潜った。リンボーダンスである。同時
に館長室のドアが開き、両手にたいまつを持った梢江が大きく体をのけぞらせ
てにじり寄ってきた。ミスターも克巳も知らん顔をしている。
画面の梢江が衣服を剥ぎ取って全裸になった。現実の梢江も全裸になった。
興奮の極みに達して、現実の梢江が奇声をあげた。
「キスマイアス! キスマイアース!」
梢江の首がドサリと床に落ちた。克巳はピアノ線にこびりついた梢江の血を
ふき取って、死体に火をつけて窓からエイヤっと投げ捨てた。
一つわかった事がある。こんなクソゲーでも買うバカがいる。濡れ手に粟の
おいしいビジネスになる。俺たちもエロゲー作ってひと山当てたる!
こうして、神心会エロゲープロジェクトが発足した。
現実はそんなに甘くはなかった。一年後、既存のエロゲーをパクりにパクっ
た克巳とミスターは完膚なきまでに業界から干された。
ショックと心労でクスリに手を出し、二人の体はボロボロだ。放心状態で街
をさまよい歩いていると、通りを曲がったところで何かと激しく衝突した。
魚の骨をくわえた本部が大の字に伸びている。幻覚症状を呈したミスターに
は、この本部が絶世の美少女に見えた。
ミスターの下半身が爆発した!
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