2003年27号 第171話
【前回まで】
勇次郎の回し蹴りが一閃! 隅に寄せてあったテーブルの角に足の甲をした
たか打ちつけ思わずうずくまる。スウェーバックでかわしたミスターの背後は
ドア。ノブが根元まで肛門に食い込んでたまらず悶絶する。部屋が狭すぎてロ
クに体を動かせない。場所を変えることにした。
さてどこで闘おうか。体育館? どこも予約でいっぱいだ。河原? 外は雨
だろ。電話ボックス? ふざけんなバカ。
結局ミスターの実家なら広さも充分だろうということで、二人仲良く飛行機
に乗り込んだ。
快適な空の旅を楽しむ機内の空気を、コクピットからの悲鳴が突き破った。
ハイジャックだ! 銃を構えた覆面二人組が乗客を制圧する中、ニヤリと笑っ
て立ち上がった勇次郎が不敵に間合いを詰めて、かかと落としを食らわした!
天井につま先をしたたか打ちつけて思わずうずくまる。
別の覆面が銃の台尻でミスターに殴りかかる。スウェーバックで楽々とかわ
したミスターの背後は窓ガラス。勢い余って真っ逆さまに落ちていった。
気圧差による暴風で、機内は大パニックに陥った。いかん、このままでは墜
落する! 操縦桿をいっぱいに引いた機長のヒジが背後の壁のボタンを押した。
『自爆スイッチ』
轟音と共に真っ二つに折れた機体が、炎と煙の尾を引いて墜落した。
中国、白林寺。門下生の衆人環視の中、刃牙が薬膳料理を口に運ぶ。梢江と
烈が固唾をのんで見守っている。
そこへミスターが降ってきた! 直撃を喰らって瀕死の刃牙の前にミスター
が立ちはだかる。お前が勇次郎の息子か! これぞ天の配剤、死ね! 必殺、
右ストレート!
そこへ巨大な火の玉が降ってきた! ミスターは火の玉の下敷きになった。
火の玉の正体は飛行機の残骸だった。白林寺は瞬く間に火の海に包まれた。
残骸から勇次郎が這い出してきて、煤だらけの体を振るって歓喜の雄叫びを
あげた。ここなら思う存分に闘える!
今までの鬱憤を晴らすように、瀕死のミスター目がけて一撃必殺のパンチを
繰り出した!
振りかぶった拳は、後ろに突っ立っていた門下生の頭に当たった。そのハゲ
頭はダイヤより固い。勇次郎は思わずうずくまる。
勇次郎とミスターは、いつの間にかハゲ軍団に取り囲まれた。ハゲの環が徐
々に小さくなっていく。必死の抵抗を試みるが、キックの先にハゲ、スウェー
バックの背後にハゲ。完璧に動きを封じられ、そのままどこかへ運び去られた。
刃牙のその後は誰も知らない。
気がつくとそこは飛騨山中。跳ね起きた二人の頭と、二人を心配そうに覗き
込む安藤の頭が激しくぶつかった。
うずくまる勇次郎。うずくまるミスター。うずくまる安藤。
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