2003年25号 第169話

【前回まで】

 世界中にばら撒かれた勇次郎の種が、全員死んだ。理由は言えない。
 ジャックも死んだ。梢江も死んだ。梢江は勇次郎の娘だった。一人残された
刃牙は、勇次郎の息子ではなかった。衝撃の真実にショックを受けた刃牙は服
毒自殺を図るが、強靭な肉体が毒をはねのけた。
 刃牙に毒は通用しない。いかなる毒も効き目がない。ないったらない。
 これまでならば「さすがは範馬の血」でなんでも片付いたのだが、刃牙と範
馬は何の関係もない。自分の父親は誰なのか。どうしてこんなに強いのか。
 それらの謎を解明すべく、刃牙は中国へ渡った。まずは本当の父親捜しだ。


 さっそく20人の父親候補が見つかった。顔が似ている者、体格が似ている者。
あきらかに中学生とおぼしきガキも混じっているが、これもよく見るとケツの
割れ方が勇次郎に似ていると言えなくもない。一同を広場に集め、適性試験を
行った。
 第一試験。刃牙の父親たるもの、権力に屈してはいけない。天安門広場に生
ゴミを不法投棄して帰還せよ。
 ここで二名が脱落。中学生は残った。
 第二試験。きっと親父は精力絶倫に違いない。豚小屋に侵入し、メスを孕ま
せよ。
 一挙に10名が脱落した。残るは八名。中学生、まだ残ってるよ!
 第三試験。働くお父さんは美しい。一家の大黒柱となって家計を支えよ。
 ホームレスの三名が脱落。中学生は、父親を早くに亡くして本当に働いてい
るらしい。泣かせる話だ。
 第四試験。ここからが本番。毒への耐性チェック。五年前の鯖寿司を食せ。
 なんと全員通過。中国人恐るべし。成長期の中学生に至ってはおかわりまで
しやがった。
 第五試験。なんといっても刃牙は日本人。日本人である証拠を見せよ。
 戦国ニッポンの代名詞、ハラキリを敢行した三名が脱落。彼らの生死は明ら
かでない。
 中学生は仮性包茎だった。こりゃ日本人だ。合格。
 真の父親候補も、いよいよ二名に絞られた。最終試験。もちろん肉体勝負の
デスマッチだ。
 中学生の鼻息は荒い。あと一息で優勝だ。勝てば母ちゃんや妹に楽をさせて
やれる。絶対勝つ! オレは刃牙の親父だ! 初対面だけど!
 突撃ー!!
 ところでもう一方の挑戦者だが、これが勇次郎の生き写し。オーラも出てる。
背景もゆがんでいる。デコピン一発で中学生を10メートル先までぶっ飛ばした。
優勝、勇次郎のソックリさん。


 刃牙は父親に抱きついた。感激のあまり、再会を喜ぶ言葉が嗚咽にかき消さ
れる。さっそくDNA鑑定を実施した。結果は他人だった。
 俺のオヤジはどこにいる。刃牙を乗せたヘリが中国を飛び立った。
 バイバーイ。


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