2003年20号 第165話

【前回まで】

 両手を広げて身構えた勇次郎の背後から、一台の車が猛スピードで突っ込ん
できた。ふり向いた勇次郎の鼻先で急ハンドルを切ると、そのままのスピード
で電柱に激突、ド派手な火柱をあげて爆発した。
 中から這い出してきたのは、若き日の達人。血みどろの上に無免許だ。傷は
痛むが、夢にまで見た勇次郎との対決に満々の闘志をみなぎらせる。
 コイツを倒して、オレは天下を取る。かかってこんかい!
 血液が沸騰する。胸の鼓動は高まるばかり。よって出血も止まらない。早く
病院に行かないと、死ぬ。死にたくない。輸血、輸血、ああ輸血。
 やめときゃよかった。さっさと家帰ってプロ野球でも見てりゃよかったよ。
トホホホホ。
 死の恐怖におののき、失禁寸前の達人。勇次郎がジワリと間合いをつめる。
 スターバックスでコーヒーを飲みながら闘いを見物していたマホメッドの目
が、その時大きく見開かれた。
 あれは……!


 現代の東京。老いた勇次郎の手を引く烈。中毒状態の刃牙を背中に抱えて朱
美の骨をハチマキに挿している。範馬一族の完全介護を目論む烈の最後のター
ゲットは、もちろんジャックである。
 そのジャックの行方が杳として知れない。ミスターの協力を得て世界各地に
網を張るものの、ジャックの顔をよく覚えていないのであまり効果がない。焦
燥する烈をあざ笑うかのように、時は過ぎ行く。
 烈の脳裏に電光が走った。そうだ、ジャックといえば強靭な歯。強靭な歯と
いえばネズミ。ネズミといえば……。


 浦安に到着した烈とミスター。最凶ネズミと雌雄を決するべく、ジャックは
きっとここにやって来る。家族連れでごった返す遊園地で、烈はミスターに爆
弾を手渡した。
「ジャックもろともドカンとやってくれ。頼んだぞ」
「テメーでやれよ、クソ馬鹿!」
 ミスターの怒りが爆発した!
「そんなことしたらパクられちまうだろ、ボケ!」
 烈の怒りも爆発した!


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