
2016年51号 第134話
【前回まで】
武蔵は負けた。本部程度を相手に日本刀を使っておきながら締め落とされて脱糞して、
あげくに練習試合だから気を落とすなと本部に慰められる有様であった。
「何なのお前。ホントに武蔵?」
徳川は武蔵の頭を何度も叩きながら言った。しかし武蔵にも言い分がなくはなかった。
「それは俺も聞きたかった。この体にはずっと違和感があるのだが、本当に俺の体か?」
「どうなのホナー博士?」
徳川はクローンを作ったホナーに聞いたが、ホナーは首をかしげるだけで黙っている。
「そして全身が重くてだるくて関節が痛いが、俺の体は何歳だ?」
「何歳なのホナー博士?」
ホナーは指折り数えたが、よく分からないので笑いながら両手を上げて降参した。
「お前はさよーならー!」
徳川がヒモを引くとホナーは床の穴に落ちて、その穴からベッドがせり上がってきた。
ベッドには2人の男が横たわっている。
「今の体は失敗なので、別の武蔵のクローンを用意したから好きな方に乗り移るがよい」
「武蔵のクローン?」
武蔵は2人の男の顔を見た。武蔵の勘違いでなければ、あいつとあいつの顔に似ていた。
「これ、範馬刃牙と範馬勇次郎だろう?」
「そんな事はないのでお仕置きー!」
徳川は刃牙に似ている方のクローンの股間に巨大な砲丸を落とした。刃牙に似ている方
はぐふっと言って口から血泡を吹いて機能停止した。
「これで範馬勇次郎だけになったな」
「武蔵のクローンだと言っとるだろうが。じゃあいつ乗り移る? 10秒後? 1秒後?」
「ん?」
武蔵はベッドの下に、丸太のような物体が転がっているのに気づいた。よく見るとそれ
は先ほど闘技場にいた男の1人だった。確かジャックと呼ばれていた。
「それは輪をかけて失敗作のクローンだから、切り刻んでご飯に乗せて食べていいよ」
「そうか、範馬勇次郎の息子か」
武蔵はジャックの顔をのぞきこんだ。武蔵と目が合った瞬間、ジャックの脳裏に様々な
屈辱の記憶が蘇り、ジャックの目から涙があふれ出た。
「決めた。俺はこいつに乗り移ってやる」
「マジで? お前もっと弱くなって客席から生卵が飛んでくるよ? いいの?」
「いい。俺はこいつの無念を晴らしてやることに決めた」
「はい武蔵しゅーりょー」
徳川は物語への興味を一切失って家に帰った。代わりに寒子がやってきて、武蔵の口か
ら魂を吸い取って、舌と大量の唾液と一緒にジャックの口に流し込んだ。ジャックの体に
武蔵とジャックの魂が共存したが、ジャックに宿主のプライドなどかけらもなかった。
「武蔵さん、俺の体と未来はぜんぶあんたに託した!」
ジャックの魂が吠えたその時、空になったはずの武蔵の体がゆっくりと起き上がった。
「ふしゅる……」
まさかあいつの魂か! ていうかなぜ入った!
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