2014年29号 第18話

【前回まで】

 武蔵は全裸で研究者たちの前に立った。すると研究者の一人が武蔵に近づいてきた。
「誰だか知らんが、研究所に全裸で入ってくるとはいい度胸だな。さあ、すぐに服を着て
ここから出ていきたまえ」
 そう言って武蔵の肩に手を置いたが、武蔵はその手をつかんで研究者をぶん投げた。研
究者は一直線に空間を飛んで、向こうの壁に首までめり込んだ。
「ぶはー!」
 研究者は壁から首を抜いて、恐ろしそうに武蔵を見た。口にはネズミが詰まっている。
「ふぇ……」
 研究者は口の中のネズミに気づいて床に吐き捨てた。そして改めて叫んだ。
「警察を呼べー!」
 しばらくして、近所の交番の警察官がやってきた。警察官は警棒で自分の肩を叩いて、
あくびをしながら武蔵を見た。
「全裸で研究所に侵入した変態というのはキミかね」
 武蔵は何も答えない。警察官は武蔵のチンコと警棒の長さを比べた。同じ長さだった。
「いやーデカイねー! そのデカさに免じて逮捕はしないでやるから、おとなしく……」
 武蔵はそう言いかけた警察官の両目に指を突き立てた。ズンという音がした。
「ぎゃおー!」
 警察官は床をしばらくのたうち回って、やがて充血した目で武蔵をにらんだ。
「何をする貴様! 本官にたて突くとこうだぞ!」
 警察官は威嚇のつもりで拳銃を天井に向かって撃った。すると様子をうかがっていた忍
者が天井から落ちてきた。眉間から噴水みたいに血が出ている。
「何をするでござるか! 危なく死ぬところだったでござるよ!」
「貴様こそ研究所の天井裏で何をしている! 不法侵入で逮捕するぞ!」
「いやいや誤解でござる。武蔵を暗殺するために隙をうかがっていたでござる」
「なに武蔵?」
 警察官は壁に貼られた指名手配のポスターと目の前の武蔵を見比べた。同じ顔だった。
「武蔵だー!」
 警察官はようやく事態に気づいて、腰を抜かして忍者の後ろに隠れた。
「本官は急用を思い出した、貴様が行け! 武蔵を暗殺するんだろう!」
「隠れていないと暗殺できないでござる! 本官殿こそ街の平和を守ってくだされ!」
「わかった、助太刀を呼ぼう!」
 警察官は床に向けて拳銃を撃った。すると通りすがりの地底人が飛び出してきた。眉間
からレーザーみたいに血が噴き出ている。
「危ないじゃないですか! 地底人にも人権はあるんですから発砲するなら天井に……」
「天井に撃ったら忍者が落ちてきたんじゃい。いいから貴様、武蔵を捕まえろ」
「武蔵!? 地底人は日照不足で筋力がないから忍者さんどーぞ!」
「拙者も隠密暮らしでコミュ力がないから本官殿どーぞどーぞ!」
 警察官と忍者と地底人は醜くもみ合っていたが、別の助っ人を呼ぶ事で意見が一致した。
「刃牙さーん! 助けてー!」
 三人の声は刃牙に届くのか。刃牙よこい、そして武蔵を瞬殺するのだ!


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