シャーロックホームズと本格的に向かい合う少し前、当時、高校一年生。
私は英語の勉強にとても励んでいた。
高校受験の英語で物足りなくなっていて、
テキサスのJannyという子と文通をしながら、英語の本を読むことを始めていた。
そんな時に、ふと、手に取ったのが Never Ending Story.
とても読みやすい英語で出来ていて、私は初めての翻訳というものに
自然と取り組むことになっていた。そして現代国語の要素の必要さに打ちひしがれてもいたけれど。
とにかく、そんなこんなで、日本語の本も英語の本も楽しくて楽しくて仕方なかった。
だが、その楽しさと、学校での成績は比例どころか反比例だった。
テスト範囲なぞ気にせず、教科書暗記など相手にしていなかったのだから当然か。
その上に、数学の先生とは職員室で大ゲンカ、英語の授業は参加せず、
私はそのまま成績低空飛行のへそまがり劣等生でいつのまにか有名人だった。
高校三年の最後の校内実力テストの日、その時の英語の問題は、今までと
全く違う形式で出された。問題はまるまるプリント3枚にわたる長文。
答えは記述式で「下線1を日本語にせよ」「下線3を要約せよ」とか、そんな感じ。
テストの開始の瞬間、怒号とか非業の叫びとかそんなのが教室に響く中、
私だけが「にやにやと笑っていた」らしい。
なぜなら、その長文、それはまるまる Never Ending Story だったのだ。
私は久しぶりの友人にあえた悦びでにやにやしていたのだろう。
フッフールに再度、こんな形で出会えるなんて思わなかったのだから。
最後の校内実力テストは学年順位が記録され、卒業時に冊子として渡されるのが通例。
いつもテストで下から数えてン番目の人間が、学年トップ10%内に入ってるとか
誰もが目を疑っていたけれど、それは真実。
学年平均70点台/200の英語で満点とはいかなくとも180点台をたたき出した時点で
英語だけで絞れば国公立現役組より上だったのだから。
私が今も、外国語を楽しめるのは、きっと、こんな経験をしていたりするからもしれない。
フッフールは時々、面白い悪戯をやらかして、私が積み上げてきたものが無駄ではないよ、と微笑んでくれるのだ。