攀枝花

 冶金業と、発電業の都市攀枝花、その実態は?

 攀枝花は60年代の三線建設時代に毛沢東の大号令によって建設された、人工的な都市の代表である。当時の社会主義中国の政策には「五小」という産業をフルセットで各地に配置した。(製鉄、炭鉱、発電、機械、化学肥料)そのなかで攀枝花が、新たにフルセット産業を配置する重点地域となった。さらに時代的な背景としては、世界的な軍拡競争真っ只中の60年代、ソ連との援助協定を破棄し、対立状態に陥ってしまい、国際的に孤立した。とりわけ中国沿海部は常に戦争の危険にされされており、軍備拡張を必要とされた。そのなか軍需物資生産のための鉄鋼生産の拠点として攀枝花の開発が始まった。そのため前述のコ陽、綿陽とは違った形での、冶金、発電等の完全な企業城下町であり、総面積に占める市区の割合、都市人口の割合が四川省の中でも(中国全土においても)高く、総生産中の2次産業の割合も圧倒的なものである。<注1>

 攀枝花の中心産業は製鉄、発電、炭鉱等である。これらは国の基幹産業であるため、完全に国のコントロールのもと、庇護のもとにある国有企業と言える。都市人口比が多いことと、国の庇護の下にあることから(貿易等)、現在の人口一人あたりのGDPは、省都成都なみである。以前は成都よりも高かった。しかし、ここ数年は低成長が続いているのが現状である。攀枝花は典型的な国有企業の負の遺産を背負った都市と言える。非効率、生産過剰、レイオフの問題等が目立つ。もともとが製鉄の企業城下町として建設されたため、新たな産業の入り込む隙間が少なく、3次産業の比率も低く、改善が難しい。

 一般論として、攀枝花製鉄所は中国有数の製鉄所であり、西部地区最大の製鉄所でもある。そして、四川省の輸出の多くを支えている。GDPの数値も全国的にまあまあであり、周辺地域には多くの地下資源に恵まれている。しかし、現状としては四川省で、ひいては中国全体で最も改善が困難な地域の一つかもしれない。対外的に、近年アジア諸国を襲った金融危機の影響で鉄鋼の輸出伸び悩み、生産過剰、国のマクロコントロールによる生産調整等の問題がある。中国のWTO加盟に伴う各業界の再編制が多くの企業で進んでいるが、国家管轄の基幹企業ではようやく着手され始めたばかりである。

電力の面ではここ数年全国的に供給過多<注2>ではあるが、これまで電気のなかった西部地区のインフラ強化、および「東電西送」政策の提唱で、天然ガスとともに今後大きな需要が見込まれる。これまでの電力開発は地域内への電力提供だけだったが、今後は地域外、他の省へ電力提供もされることになる。また、農村へ電力を供給し、電力需要の見込める農村へ、生産過剰の家電消費を拡大させる必要もある。意外なことだが、攀枝花は長江流域に位置しているため、発電は水力に頼っているように見えるが、実際大部分は三線建設以来の炭鉱をもとにした火力発電である。今後は水力発電の拡張により、電力供給が増すのは間違いなく、発電の分野で発展を見せ、他の地域との結びつきも増えてくるはずである。そして、国有企業改革のなかでも特に行き詰まっている炭鉱開発も、発電部門の強化によって進展を見せるだろう。

<注1>
《四川統計年鑑》によると攀枝花の産業別構成比は1次約10%、2次約70%、3次約20%である。1次、3次の比率は四川省のなかでも最も小さく、2次産業の比率は最も高い。
<注2>
ここで言う電力の供給過多とは、発電量が大きくても、農村に無電地域が多く、電気の需要が少ないこと。


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