「ドラえもーん! 花火大会につれてってよー!」
「はい、どこでもドアー!」
夜のJR駅にやってきた。ホームの隅っこにポツリと設置された喫煙コーナー
に大勢の人が群がって、背中を丸めて火のついた煙草をくわえていた。
「どうだいのび太くん、街中でもこんなに素敵な花火が見られるんだよ」
「うん! 何だか惨めったらしくて、もののあわれを感じるよね! でもボク、
もうちょっと派手な花火が見たいなぁ」
「はい、ビッグライトー!」
ドラえもんがライトを当てると、灰皿と利用客が巨大化した。真っ赤な火の
粉が宙を舞い、火の玉のような灰がホームに降り注いだ。非喫煙客が悲鳴をあ
げて逃げまどい、駅構内は大パニックに陥った。
「いいね! これならボクも大満足さ! 次は仕掛け花火が見たいなぁ」
「はい、バイバインー!」
灰皿にバイバインを振り掛けると、元の灰皿の隣に新しい灰皿が生えてきた。
電車から降りてきた乗客が新しい灰皿にとびついてタバコに火をつけ、ドラえ
もんのビッグライトで巨大化する。その隣、そのまた隣と、ものすごい勢いで
灰皿が地中から突き出して、ホームを縦に貫いた灰皿の列に客が次々と群がっ
てタバコに火をつける。
「すごーい! ナイアガラの滝だー!」
「最後はもちろんスターマインだよ。はい、タケコプター!」
すべての灰皿にタケコプターを取り付けて、客と灰皿をロープでつないだ。
タケコプターのスイッチを入れると灰皿は大空に舞い上がり、客も灰皿に引っ
張られて空を飛んだ。それでもタバコを吸い続けるスモーカー目がけて、ドラ
えもんはミサイルランチャーをぶっ放した。
ボガーン!
灰皿と客は木っ端微塵に爆発した。炎とニコチンの芸術が夏の夜空に大きく
花開いた。
「たーまやー!」
のび太とドラえもんは空に向かってかけ声をかけて、タバコに火をつけてう
まそうに煙をくゆらせた。タバコは周りの迷惑にならないように吸いましょう。
【完】