「うわーい! レジーのアフロだおヒゲだ陰嚢だー!」
のび太はレジー・スミスの一人に抱きついて、スミスの体をまさぐっている。
スミスは何も言わなかったが、代わりにKが注意した。
「のび太くん、あんまりスミスをいじくるなよ。爆発しちゃうから」
「あははは、人間が爆発する訳ないだろ。Kくんはギャグの天才だなあ」
Kの忠告には全く取り合わず、のび太はスミスを愛撫し続けた。真っ赤な舌
を股間に這わせて、ヘソから乳首へと舐めあげていった。蝶ネクタイを噛んで
つまんで離した時、スミスの喉の奥でカチっという音が鳴った。
「ん?」
スミスの様子がおかしい。はりついたような笑顔はそのままだが、両目が交
互に点滅して口から白い煙を吐いている。
「ん?」
他のスミスも同様に、両目を光らせて口から煙を吐いている。四十九人のス
ミスはのび太をぐるりと取り囲んで、その輪を序々にせばめていった。
「Kくーん。なにこれー」
Kは窓の外にいた。モーフィアスとトリニティと三人で、上から垂れた縄ば
しごにつかまっている。
「だから爆発するって言っただろ。オレ達はアメリカに帰るから、あとは勝手
にやってくれ」
「バイバイねー」
「アカギ、手紙書いてねー。読まずに破り捨てるねー」
縄ばしごはゆっくりと上昇して、ヘリコプターの爆音が遠くなった。三人の
退場を皮切りに、他のメンバーもそそくさと帰り支度を始めた。
「あたし帰る。スネ夫さんも剛さんもボサっとしてんじゃないわよ」
「パパ、先に帰って子作りしてるからな。弟作って待ってるからな」
「ッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「烈くーん! ボクも連れてってー!」
のび太は烈に助けを求めた。烈はうるんだ瞳でのび太を見て、三つ編みにし
た後ろ髪を切ってのび太にあげた。それはかけがえのない友に贈る、烈の感謝
の証だった。烈は帰った。
「こんなもんいらねーから助けろー! おーい!」
必死にもがくのび太だが、スミスのアフロでがんじがらめになって動けない。
一人、二人と雀荘を去って、とうとうのび太とスミスの五十人ぼっちになった。
いや、まだ一人残っている。
「江田島さーん! ヘルプミー!」
薄暗い部屋の隅っこに、廃人と化した江田島店長がひざを抱えて座っていた。
のび太の泣き顔を感情のない目で見て、うわ言のようにつぶやいた。
「ワシの、ワシのノースウエストが、あと三秒で海の藻屑に……」
三、二、一。
ゼロ。
栄華を誇った雀荘ノースウエストは消えた。さらば江田島、さらばのび太。
二人の愛よ、永遠なれ!