
2005年41号 第266話
【前回まで】
刃牙との対戦はベストコンディションが条件であると伝え聞いたアライJr.。彼の体は驚異的な回復を見せ、試合に臨む!!
アライによると、負傷した部分に負担を与えると逆にケガが治ってしまうら
しい。ミスターはもう何時間もサンドバックを叩き続けているので、そろそろ
ケガが治って完全復活するという。
「マジっすか、チャンプ」
格闘家のデイブがうさんくさそうに言った。
「マジだぞデイブくん。人体ってスゴいんだぞ」
アライが鼻の穴をふくらませて答えた。
「ごっぱあ!」
ミスターが体中の毛穴から血を噴き出した。無理がたたってケガが悪化して、
すぐさま病院に担ぎ込まれた。
「チャンプ」
デイブはベッドで寝ているミスターを見たままアライを呼んだ。枕元のモニ
ターには心電図の緑色の線が弱々しく波打っている。
「人体、全然すごくないじゃないっすか」
アライはデイブの隣に立って、仏頂面でやはりミスターを見ていた。デイブ
に突っ込まれても返事をせず、忌々しげにミスターのベッドを蹴った。
ミスターの体がビクンと震えて、心電図の波形が一瞬だけ跳ね上がった。ア
ライは次にミスターの心臓にかかとを落とした。
「ぶはー!」
心電図のモニターが爆発した。ミスターは呼吸器のマスクを真っ赤に染めて
苦しそうに喘いでいる。デイブはモニターの破片を拾い上げてまじまじと見た。
「お、人体ちょっとスゴいかも」
「そうだろう」
アライは少し笑顔になって、ナースコールのボタンを押した。
「はーいー」
ナースが尿瓶を持ってやってきた。アライはナースをパンチで気絶させて、
尿瓶をアライのベッドに突っ込んだ。ジョベジョベと風流な音がして、尿瓶は
黄色の液体でいっぱいになった。その液体を点滴の袋に流し込んだ。
「うがー!」
ミスターは胸をかきむしって暴れだした。点滴袋が空になった頃には、ミス
ターの黒い肌はすっかり黄色くなっていた。デイブは目を輝かせて言った。
「チャンプ! 人体かなりスゴいんじゃないっすか!」
「そうだろうそうだろう」
「ミスターくーん!」
病室のドアをぶち破って刃牙が入ってきた。見舞いの品は持っていない。
「今日はオレと試合すんだろー! 迎えにきたぞー!」
刃牙はミスターに馬乗りになって、往復ビンタで頬をひっぱたいた。
「起きろー! 試合やるって言ったのはおまえだろー!」
「そういう時はなバキくん」
アライは一本の電線を刃牙に渡した。先端から青白い火花を散らしている。
「それをミスターの尻の穴にブスッとやってしまいなさい」
「ブスッとかー!」
刃牙は言われた通りに、電線をミスターの尻の穴にブスッと挿した。
「ギャオー!」
ミスターは体中から放電して天井まで飛び上がった。狂ったように病室内を
走り回るミスターを見て、デイブは感動の涙を流して絶叫した。
「チャンプ! 人体マジでスゴいっすよ!」
「そうだろうデイブくん! 生命の神秘だろう!」
「試合やんないのかー! さてはおまえ早漏かー!」
「てめえらー!」
ミスターは怒りで本当に復活した。まずはデイブを炎のパンチで血祭りにあ
げた。デイブは絶対王者から陥落して、ついでに病室の窓からも陥落した。
「てめえらもだー!」
刃牙とアライもぶん殴った。刃牙は早漏のミスターに敗れ去り、アライは穏
やかな笑みを満面にたたえて死んだ。
そして最後に、気を失っていたナースを抱き上げてベッドに押し倒した。
「てめえはこうだー!」
一年後、ミスターとナースの間にかわいい男の子が産まれた。まさに生命の
神秘であった。
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