Chaucer, Troilus and Criseyde の語彙について

 

(The Vocabulary of Chaucer’s Troilus and Criseyde)

 

 

 

野呂俊文

(Toshifumi Noro)

 

 

 

 

 

(この語彙集の利用法)

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目次

 

I.  副詞

II. 接続詞

III. 前置詞

IV. 代名詞

V.  形容詞

VI. 名詞

VII. 動詞

主要参考文献

 

 

 

 

ジェフリー・チョーサー (Geoffrey Chaucer) (1343?-1400) の長編物語詩Troilus and Criseyde 『トロイラスとクリセイデ』(1382-85) で使用されている主要な語彙について見ていきたい。チョーサーの作品は中英語 (Middle English, ME) で書かれており、今日の英語である近代英語 (Modern English, Mod E) とは異なるが、現代の我々がチョーサーを読むときそれほど違和感を感じない。それはチョーサーが用いたのが当時のロンドン英語であり、首都であったロンドンの英語はその後標準語へと発達していったからである。とは言っても、チョーサーの英語は今の英語と文法も若干異なる場合もあり、用いられている語彙の中には今日では古語となっていたり、また廃語となって全く使用されなくなっているものもある。以下では、そのような古語や今は使用されなくなっている語彙を取り上げて概観したい。

 Troilus and Criseyde という作品が詩であるということもあって、五巻から成り、全部で8239行というこの長い物語詩の語彙は比較的均質であると考えられる。読者は読んでいくうちに、同じ語彙が何度も繰り返されて使用されていることに気付く。そのような反復して使用される、いわばこの作品を読む際の重要語彙というべきものの中には古語や廃語となっているものが多くある。それらの語彙の多くは同時に他の中英語の作品を読む際にも役立つ重要語彙であろう。以下では、チョーサーの友人であったジョン・ガワー (John Gower) (1330?-1408) の長編詩 Confessio Amantis『恋する男の告解』(c1393) を適宜引き合いに出して、使用語彙の頻度などについての比較も行ってみたい。ガワーは、用いた英語に関してチョーサーよりも保守的であると言われているが、ガワーの英語もチョーサーのと同じくロンドン英語であり、両者を比較することによって Troilus and Criseyde という作品の語彙の特徴が明らかになると考えたからである。

 作業手順として、Troilus 全五巻のうち第二巻をサンプルとして取り上げ、第二巻全体に見られる語彙を中心に見ていきたい。作品が長編であるということもあり、またすでに述べたように語彙が均質であることもあって、重要な語彙はたいていどの巻においても使用されているので、一つの巻の語彙を取り上げただけでも、作品全体で使用されている重要語彙が拾えると考えたからである。したがって、以下で取り上げる語彙にはTroilus に見られるおもな重要語彙はほぼ含まれていると考えられる。なお、VI. 名詞とVII. 動詞に関しては、これらの品詞の性格上、特に重要と思われる語に限定して取り上げた。

 テキストとしては次のものを使用した。

 

Walter W. Skeat, The Complete Works of Geoffrey Chaucer in 6 vols. (Oxford U. P., 1894, 1972)

G. C. Macaulay, The English Works of John Gower in 2 vols. (Oxford U. P., 1901, 1979)

 

 語彙の使用頻度を調べる際には上記のテキストの電子版を使用した。これらの電子テキストは上記のテキストに忠実なものであり、上記のテキストと同じものと判断できる。

 

The Project Gutenberg Etext of Chaucer's Troilus and Criseyde (edited, proofed, and prepared by Douglas B. Killings, 1995)

The Project Gutenberg Etext of John Gower's Confessio Amantis (edited and proofed by Douglas B. Killings, 1994)

 

 The Canterbury Tales を若干引き合いに出した場合があるが、そのときは次のテキストを使用した。

 

F. N. Robinson ed., The Works of Geoffrey Chaucer Second Edition (Oxford U. P., 1957)

 

 この電子版テキストとしては

 

The Canterbury Tales (Electronic Text Center, University of Virginia Library)

 

を使用した。この電子版テキストは固有名詞の大文字がすべて小文字に変っている点を除けば、Robinson 版のテキストに忠実であると判断できるものである。

テキストからの引用文に邦訳を付けるにあたっては、宮田武志訳『トゥローイラスとクリセイデ』(ごびあん書房、昭和62年)を適宜参照させていただいた。それぞれの語についての記述は主に The Oxford English Dictionary Second Edition on CD-ROM (Oxford U. P., 1993) によった。

語の作品内での使用回数を示すようにしたが、この数は厳密なものと言うより、およその目安を知るための概数とお考え頂きたい。特に、同じ語が複数の異なる綴りで表記されている場合は見落としが絶対にないとは言い切れず、また同綴り異義語が存在する場合や同じ語に異なる品詞の用法がある場合などは、一つ一つ読んで判断したが、それでも読み違いの可能性を排除できず、また用法が微妙で判断に迷うような場合もあるからである。

なお、作品の年代の前に付けた a c はそれぞれ a=ante (〜年より若干前)c=circa (〜年頃) の意味である (a1400=before 1400;  c1400=about 1400 など)

 


 

I. 副詞

 

目次

 

接頭辞 a-

a-bed (=in bed) / a-doun (=down) / a-morwe (=in the morning) / a-drad (=afraid) / a-noon (=immediately) / a-wepe (=into weeping) / a-yein (=back; again; against)

 

時を表す副詞

alday (=always) / algate(s) (=at any rate)/ alwey (=always) / ay (=always) / blyve (=quickly) / eft (=again) / erst (=before) / oft(e) (=often) / rathe (=quickly, early), deliverliche (quickly) / selde (=seldom) / som-tyme (sometimes) / tho (=then)

 

程度などを表す副詞

certes (=certaily) / dredelees, out of drede (=wihout doubt) / eek (=also) / ferforth (=far) / forsothe (=indeed) / ful (=very, completely) / hardely, hardily (=certainly) / lyte (=little) / muchel (=much) / mo (=more in number), never-mo (=never again) / nede (=necessarily) / nedes (=necessarily) / no-thing (=not at all), nought (=not, not at all), nat (=not) / ought, aught (=at all) / outrely (=utterly) / paraunter (=perhaps) / pardee, depardieux (=by God) / plat (=flatly) / sikerly (=certainly) / somdel (=somewhat) / soore, sore (=exceedingly,) / thrye (=thrice) / unethes, unnethe (=with difficulty, scarcely) / wonder (=very) / y-wis, wis, wisly (=certainly) / ye (=yea, yes) / nay (=no)

 

 

接頭辞 a-

 Troilus のテキストでは接頭辞 a- で始まる語がいくつか見られる。その中で今日では古語となっているか、全く使われなくなっている語は次の表1の通りである。Confessio Amantis に同じ語が見られる場合はその使用回数も示す。

 

1 接頭辞a-で始まる古語

Troilus

使用回数

意味

Confessio

使用回数

a-bedde

7

in bed, to bed

abedde

29

a-cursed

2

cursed

 

0

a-day

1

by day, in the daytime

adaies, adai

7

a-doun,

adoun

13

down, downwards

adoun

1

a-drad

1

afraid

adrad

13

a-fered

1

afraid

afered

4

a-game

2

in jest, in play

 

0

a-gilt

2

aguilt=be guilty (towards)

agulte

1

a-gon

1

gone

agon

7

a-greef

3

in grief,  take (it) agrief=take (it) hard

 

0

a-morwe

6

in the morning

amorwe

5

a-noon,

anoon, anon

83

at once, immediately

anon

266

a-twinne

2

apart

atwinne

3

a-twixe

1

between

 

0

a-twixen

1

between

 

0

a-two

3

in two

atwo

1

a-wepe

1

burst a-weep=burst out weeping

 

0

ayein

55

against, back, again

ayein

316

ayeins

11

against

ayeins

2

 

 接頭辞 -a の歴史について簡単に見てみたい。OE の前置詞 an, on が弱まってすでに OE の時代に a となっていた。an は円唇化されて on となり、前置詞 in の意味を吸収して ‘on, in’ ‘unto, into, to’ の意味を持つようになった。11世紀に on は子音の前で o へと縮められ、さらには曖昧母音の a へと弱まった。強調形の on が存続している場合には、母音の前では an が使用されることもあった。独立語としての a が今日使用されることはまれであるが、go a begging や、冠詞の a と混同されて、twice a day, once a year などの句に残っている。‘We will go a-hunting.’ のような語法は18世紀に廃れた。

 この前置詞 a は今日では、複合語としての副詞の接頭辞として一語として綴られるようになっている。しかし、Skeat 版のTroilus では a-bed のように大部分はハイフンを伴って綴られている。一方、ガワーの Confessio Amantis ではハイフンなしに綴られている。

 

a-bed (=in bed)

a-bed ‘in bed’ の意味で、今日では古語になっている。

 

and ever lay

Pandare a-bedde, half in a slomeringe,  (67)

パンダラスはうつらうつらしてずっとベッドに伏していた。

 

Troilus での使用回数は7回で、Skeat 版ではすべて a-bedde という綴りになっている。

 

a-doun (=down)

Til at the laste he seyde he wolde slepe,

And on the gres a-doun he leyde him tho;  (515)

結局、昼寝がしたいと言って、それから草の上に横になった。

 

adown (=down) OE ‘of dune’ に由来し、「丘から下って」がその原義である。早くも12世紀にはその短縮形 a-dūn の語頭母音が消失して dūn, doun という形が生じ、これが散文においてはふつうの形となった。しかしadown も廃語とはならず、今日まで詩語として存続している。

Troilus での a-doun の使用回数は13回で、a-doun 形が7回、ハイフンの無い adoun 形が6回である。Confessio Amantis では adoun 1回、a doun 2回使用されている。

 

a-morwe (=in the morning)

Sey that thy fever is wont thee for to take 

The same tyme, and lasten til a-morwe; (1521)

よく今頃の時間熱がでて翌朝まで続くのだと、おっしゃりなさい。

 

And sende yow thanne a mirour in to prye

In whiche that ye may see your face a-morwe!  (405)

そのときご自分の顔を朝見ることのできる鏡を取り寄せるのです。

 

a-morrow a-morwe 形は13世紀から15世紀に使用された綴りで、「朝に」(in the morning) という意味の場合と、「翌朝」(next morning) という意味の場合とがある。Troilus での使用回数は6回である。Confessio Amantis では amorwe 5回、a morwe 3回使用されている。

 

a-drad (=afraid, frightened)

By god, ye maken me right sore a-drad,  (115)

Ye ben so wilde, it semeth as ye rave!

あきれた、本当に怖くなるわ、乱暴なことをおっしゃって、気違沙汰だわ。

 

 a-drad (=frightened) of-dred (脅えさせる) の過去分詞 of-drad が弱まった形である。of-drad a-drad 1200年から1300年にかけては同義語として使用され、1300年頃 of-drad の方は消滅した。Troilus での a-drad の使用回数はこの1回だけである。Confessio Amantis では adrad 13回使用されている。

 

a-noon (=immediately)

Whanne this was doon, this Pandare up a-noon, (1492)

To telle in short, and forth gan for to wende

To Troilus...

簡単に言えば、これがすむとパンダラスはすぐ立ち上がってトロイラスのところに行った。

 

 a-noon anon 14世紀〜15世紀に用いられた綴り。OE on ān (=into one), on āne (=in one) が一語に合体した形で「一体となって」(in one body) がその原義である。チョーサーで用いられているのは、「ただちに」(at once, immediately) の意味で、この意味は今日では廃義であるが、かなり後の時代まで使用され、OED  の最後の用例は1862年のものである。anon 16世紀に「まもなく」(soon) の意味に誤用されるようになり、この意味では今日でも古語・詩語として使用されることがある。

 Troilus 中での使用回数は a-noon 5回、ハイフンのない anoon 形が73回、anon形が5回で、強意形の anon-right 3回である。Confessio Amantis では anon 266回使用されている。 

 

a-wepe (=into weeping)

And she bigan to breste a-wepe anoon, (408)

彼女はたちまちわっと泣き崩れた。

 

 wepe weep (泣くこと=weeping)の意味の名詞で、OED  には13世紀から16世紀までの用例が挙がっている。 ‘burst a-weep’ ‘burst out weeping’ の意味。Troilus での a-wepe の使用回数は1回。Confessio Amantis では使用されていない。

 

a-yein (=back; again; against)

Ber it a-yein, for him that ye on leve!  (1141)

それ(手紙)をお持ち帰りください、後生ですから。

 

But right as floures, thorugh the colde of night

Y-closed, stoupen on hir stalke lowe,

Redressen hem a-yein the sonne bright,   (971)

And spreden on hir kinde cours by rowe,...

ちょうど夜の寒さで閉じて、茎の上で低くうなだれていた花々が、輝く太陽を背にして立ち直り、その本性にしたがって相並んで花を開くように

 

 a-yein again 14世紀に用いられた綴りで、上記の最初の引用文では ‘back’ の意味の副詞であり、次の引用文では ‘against’ の意味の前置詞である。

 again OE ongean に由来するが、この語は on gegn (=direct, straight) の合成語で ‘opposite’ を意味した。「再び」(again) を意味する OE の語は ‘eft’ であったが、この ‘eft’ はしばしば ongean によって補強され、13世紀までには ongean が「再び」を意味する主要な語となった。

ongean はイングランド南部では ayen, ayein となり、北部では a-gain となった。後の agen 形は ayen again の混成形であり、当時の共通文学語の発音を示しており、19世紀まで詩人たちによって使用されたが、今日では廃語となっている。

 1130年頃には adverbial genitive(副詞的属格)の -s が付いたaȝenes, againes が生じた。これらが1400年以前に前置詞形では余剰音のtが付いて aȝenest, against となった。

 16世紀初期には again がもっぱら副詞として、against が前置詞として使用されるようになった。against 形が採用されなかったスコットランドやイングランド北部では、again が副詞と前置詞の両方の用法を受け継いでいる。

 チョーサーでは、again を副詞としては ‘back’, ‘again’ の意味で、前置詞としては ‘againt’, ‘towards, facing’ ‘towards’ [時間的に] 〜近くに)の意味で用いられている。

Skeat Troilus での使用回数は、a-yein5回、ayein 43回、ayeyn 7回、a-yeins 1回、ayeins 10回、ayeinward (=backward, back again) 2回であり、一方、g を用いた綴りの方は、again 4回、agains 1回である。Confessio Amantis では ayein 315 回、ayeyn 1回、ayeins 2回、ayeinward 16回使用されており、g を用いた綴りは使用されていない。また、チョーサーの時代には南部ではすでに aȝenest という語尾に余剰音の -t を持つ形が見られたが、チョーサー、ガワーともに against という語尾に -t を持つ形を使用していない。

 

 

時を表す副詞

alday (=always, every day)

I knowe also, and alday here and see,  (733)

Men loven wommen al this toun aboute;

この町のいたる所で男の人が女性に恋をしていることは、私も知っているし、いつも見聞きしているわ。

 

 alday all day からなる複合語で、「毎日」(every day) あるいは「いつも」(always) の意味。

 Troilus での使用回数は、alday 9回、al-day 2回である。Confessio Amantis では alday 14 回、aldai 6 回使用されている。

 

algate(s) (=at any rate; always, in every case; nevertheless)

Algate a foot is hameled of thy sorwe.  (964)

とにかく、あなたの悲しみの片足は断ち切られています。

 

Algates, hem that ye wol sette a-fyre,  (Troilus III. 24)

They dreden shame, and vices they resigne; 

とにかく、君が心を燃やそうと思うほどの人は、恥を恐れ、悪徳をやめるのである。

 

引用文での algate(s) の意味は「とにかく」(at any rate) で、この語はチョーサーではこれ以外に ‘nevertheless’, ‘always, in every case’ などの意味でも使用されている。algate all と「道」(way) を意味する gate との複合語で、1300年頃に adverbial genitive(副詞的属格)の -s がついた algates 形がイングランド北東部で使われ始めた。この語は 17 世紀初頭まで使用され、OED  による最後の用例は1614年のものである。

Troilus での使用回数は、algate 2回、algates 1回である。Confessio Amantis では algate 34 回、algates 8 回使用されている。

 

alwey (=always)

And seyde, he wolde in trouthe alwey him holde;  (1084)

常に誠実な気持ちを持つ続けるつもりだと言った。

 

 alway は元来 all way 2語であったもので、空間の広がりを表す adverbial accusative(副詞的対格)として距離的に ‘all the way’ (ずっと)を意味した。しかし、すでに OE の時代に時間的広がりの ‘all the time’ の意味に転用されるようになった。のちに、1230 年頃に現れた属格形の always と混同されるに至り、散文では always alway に取って代わるようになり、alway は詩の中や 古語 (archaism) としてのみ存続した。

 Skeat 版では常に alwey(s) と綴られていて、 その使用回数は、 alwey 53 回、alweys 2回である。 Confessio Amantis では alway 4 回、alwey 4 回、alwei 2 回使用されており、副詞的属格の -s の付いた always 等の形は使用されていない。

 

ay (=always)

and to Deiphebus wente he tho

Which hadde his lord and grete freend ben ay;  (1403)

それから彼はデーイフォバスの所へ行った。デーイフォバスは常に彼の主君であり、親友であった。

 

ay は「常に」(ever, always) の意味で、今日では古語・詩語となっている。ay には aye という綴りもあるが、Skeat 版では ‘always’ の意味の副詞は常に ay と綴られている。また、‘alas’(ああ)などを表す間投詞の場合は常に ey (5 ) と綴られている。

Troilus での ay の使用回数は 99 回である。Confessio Amantis では ay 20 回使用されている。

 

2 「常に」を表す副詞の使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

alwey(s)

55

alway, etc.

10

ay

99

ay

20

ever

108

evere

417

 

 

blyve (=quickly)

And Troilus to paleys wente blyve.  (1537)

トロイラスは急いで王邸に行った。

 

‘By god,’ quod he, ‘that wole I telle as blyve;  (137)

彼は言った、誓って、ぼくもただちに話したいんだよ、

 

 blyve belive 14世紀から17世紀にかけて用いられた綴り。belive は元来は2語の bi (=by) +life であったもので、‘with life’, ‘with liveliness’ (生き生きとして)の意味であった。「生きた」の意味から「急いで」の意味を生じた quick と同様な経緯で、blyve ‘quickly’ (急いで)‘at once’(ただちに)の意味になった。‘as blyve’ ‘as quickly as possible, immediately’ の意味で用いられる。

 Troilus での blyve の使用回数は14回である。Confessio Amantis では blyve 8 回、blive 1 回使用されている。

 

eft (=again; afterwards)

Ne shal I never seen yow eft with ye.  (301)

お前とは再び顔を合わせないことにするよ。

 

Be ye nought war how that fals Poliphete

Is now aboute eft-sones for to plete,   (1468)

And bringe on yow advocacyes newe?

悪党のポリフィーティーズが今また訴訟を起こし、あらためてお前を訴えようとしているのに気付いていないのかい。

 

 eft ‘again’ (再び)を意味する副詞で、 17世紀まで使用された。 eft soon(s) との複合語 eft-soon(s) の形で用いられることもあり、これは ‘again’, ‘immediately’, ‘back, in return’ などの意味で用いられた。

 Troilus での使用回数は、eft 14回、eft-sone 1回、eft-sones 2回である。Confessio Amantis では eft 17 回、efte 4 回、eftsone 4 回、eftsones 1 回使用されている。

 eft again とは意味が必ずしも同じではないが、 参考のために両方の使用回数を表で示す。 again は副詞、前置詞の両方を含むが、ayeins のように語尾に s の付いた形は除く。

 

3 eftagainの使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

eft

77

eft(e)

136

a(-)yein, agayn

52

ayein

315

 

 

erst (=before, earlier; first)

And ay gan love hir lasse for to agaste

Than it dide erst, and sinken in hir herte,  (902)

恋は次第に最初ほど彼女を怖がらせなくなり、彼女の心の中に忍び込んでいった。

 

 erst ere (=early; before) の最上級であり、‘at first’ あるいは意味的には比較級の ‘earlier, before’ の意味を持ち、形容詞としては ‘first’ の意味を持つ。

 erst Troilus での使用回数は14回である。Confessio Amantis では erst 12 回使用されている。

 

oft(e) (=often)

Ful sharp biginning breketh ofte at ende.  (791)

激しい始まりはしばしば最後にはだめになってしまう。

 

But right as whan the sonne shyneth brighte,

In March, that chaungeth ofte tyme his face,   (765)

ちょうどその表情をしばしば変える三月に太陽が明るく輝くように。

 

 今日でも古語・詩語としてお目にかかる oft (しばしば) は、チョーサーでは often よりも頻繁に使用されている。

ME 初期に oft は副詞語尾の -e によって ofte へと拡張された。1200 年頃から 1500 年頃にかけてはイングランド南部および中部では ofte が唯一の形態となり、oft は北部方言に限られることとなった。 ofte 16 世紀に語尾の e が脱落して、徐々に oft によって取って代わられるようになった。

 今日一般的となっている often は、oft あるいは ofte の拡張形である。チョーサーでは ofte が子音の前で使用され、often が母音または h の前で使用されている、と OED  は述べている。しかし、Troilus のテキストを見る限りでは必ずしもそう言うことはできないように思われる。後に続くコンマや改行を一応無視して数えれば、ofte の使用回数 74 回のうち、母音または h が続くものが 36 回あり、often の使用回数 12 回のうち次に h 以外の子音が続くものが7回あって、OED  の記述とは矛盾しているからである。

 Skeat Troilus での使用回数は、ofte 74 回、often 12 回、oft 3回、比較級の ofter 1回である。ofte 74 回のうち 9 回は ofte tyme というフレーズで使用されている。

Confessio Amantis では ofte 136 回、often 8 回使用されている。ofte 136 回のうち 17 回は ofte time で、3 回は ofte times で、5 回は ofte sithe で、1 回は ofte sithes で使用されている。

 

4 oft(e) often の使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

ofte, oft

77

ofte

136

often

12

often

8

 

 

rathe (=quickly; early); deliverliche (=quickly, nimbly)

And with his salte teres gan he bathe

The ruby in his signet, and it sette

Upon the wex deliverliche and rathe; (1088)

塩辛い涙で指輪のルビーを濡らし、すばやく印を封蝋に押した。

 

 deliverliche rathe もともに「素早く」(quickly) の意味。rathe は元来、比較級 rather の原級であり、‘quickly, at once’ あるいは ‘early’ を意味した。rathe ‘quickly’ の意味の用法は 16 世紀までは広く一般に使用されたが、今では廃義となっている。しかし、rathe の「(朝)早くに」の意味の用法は詩語あるいは方言として今日まで続いている。

 Troilus での使用回数は deliverliche 1 回、rathe 3回である。Confessio Amantis では deliverliche も、原級の rathe も使用されていない。

 

5 anon, soon, ratheの使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

a(-)noon, anon

83

anon

266

sone (=soon)

80

sone (=soon)

54

rathe

3

rathe

0

 

 

selde (=seldom)

And eek ther-to, he shal come here so selde,  (377)

それにまた、彼がここに来られることはあまりない。

 

 seld seldom と同義で、OE seldan (=seldom) の比較級 seldor や最上級 seldost の原級として形成された語。-e の付いた selde 13 世紀から 17 世紀にかけて用いられた形である。seldom と同義の rarely 16 世紀に登場した語であり、seldom の意味での rarely OED  での初出は 1552 年であって、チョーサーの時代にはまだ存在していなかった。

 Troilus での selde の使用回数は3回であり、seldom は使用されていない。Confessio Amantis では seldom 13 世紀から 16 世紀にかけての形である selden も見られ、selden 8 回、selde 4 回使用されている。

 

som-tyme (=sometimes; at one time or another)

Som-tyme a man mot telle his owene peyne; (1501)

男は時には悩みを打ち明けなければいけない。

 

For to every wight som goodly aventure

Som tyme is shape, if he it can receyven;  (282)

というのは、それを受け入れる準備さえできていれば、誰にでも何らかの幸運がもたらされるものだから。

 

 sometimes の意味の sometime は今日では古語となっている。16 世紀までは1語として書く書き方と、2語として書く書き方の両方が用いられた。チョーサーでも両方が見られる。複数の s をつけた sometimes はチョーサーの時代にはまだ存在せず、OED  sometimes の初出は 1526 年である。

 Troilus での使用回数は som-tyme 7回、som tyme 3回である。Confessio Amantis では som time 13 回使用されている。

 

tho (=then)

Tho gan she wondren more than biforn  (141)

A thousand fold, and doun hir eyen caste;

そのとき彼女は以前にもまして幾層倍もいぶかしく思い、目を伏せた。

 

tho (=then) that の意味の OE の指示代名詞の対格形 þā (=that time) に由来する。ME において þā はイングランド北部では残ったが、中部や南部では規則的に þō, thō へと変化した。

 Troilus では tho という語は those の意味の指示代名詞・形容詞の場合と、 then の意味の副詞の場合があるが、使用回数 103 回のうち指示代名詞・形容詞の場合が 22 回、副詞の場合が 81 回であると思われ、then の意味の副詞の方が頻度的には多い。同義語である thanne (=then) 27 回、thenne 4 回使用されている。Confessio Amantis では副詞の tho 415 回使用されていると思われ、thanne 474 回、thenne 4 回使用されている。

 

6 thothenの使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

tho

81

tho

415

thanne, thenne

31

thanne, thenne

478

 

 

程度を表す副詞

certes (=certaily)

For certes, lord, so soore hath she me wounded, (533)

That stod in blak, with loking of hir yen,

That to myn hertes botme it is y-sounded, 

Thorugh which I woot that I mot nedes dyen;

というのは、神様、黒い衣装を着た彼女がその眼差しで私を傷つけ、それは私の心の底に達し、そのため私は必ずや死ななければならないことが分かっているからです。

 

 certes は古フランス語から入って来た語で、certainly と同義である。チョーサーは副詞として certainly, certain, certes を使用している。

 Troilus での使用回数は certes 14 回で certainly 16 回である。certainly に関して Skeat 版では4種類の綴りが見られる(certaynly 6回、certeynly 4回、certainly 3回、certeinly 3回)。Confessio Amantis では certes 33 回、certeinly 5回、certeinliche 1 回使用されている。

 表7は「確かに」を意味する語句の使用回数を示したものである。Troilus では y-wisstrewelypardee が多く、Confessio Amantis では certes が多いことが分かる。

 

7 「確かに」を意味する語句の使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

certes

14

certes

33

certainly

16

certeinly, certeinliche

6

in certayn

4

in certain [certein]

7

y-wis

77

ywiss, iwiss

9

wis

7

wiss

2

wisly

12

 

0

doutele(e)s

11

 

0

out of doute

6

out of doute

1

with-outen doute

2

withoute doute

2

out of doutance

2

 

0

dredele(e)s

11

 

0

out of drede

11

 

0

with-outen (any) drede

4

withoute drede

5

hardely, hardily

10

 

0

parde(e), pardieux, depardieux

26

 

0

sikerly

3

sikerly, sikerliche, sekerliche

6

forsothe, for sothe, for sooth

4

 

0

in sooth

2

in soth

5

sothly

1

sothly, sothliche

3

trewely, trewelich(e)

38

trewly, trewli, trewliche

14

verraylich(e)

2

verrailiche, verraily

4

 

 

dredelees, out of drede (=wihout doubt, assuredly)

For, dredelees, men tellen that he dooth  (185)

In armes day by day so worthily,...

疑いもなく、噂では、彼は毎日武勲をおたてになるそうだし。

 

For every thing, a ginning hath it nede

Er al be wrought, with-outen any drede. (672)

あらゆるものにはそれが成るに先立って、どうしても始まりがなければならないことは、疑う余地のないことですから。

 

I am oon the fayreste, out of drede,  (746)

疑いもなく私ほど美しい女性はいない。

 

 「恐れ」を表す dread が、14世紀から16世紀にかけては「疑い」(doubt) の意味で使用されることがあった。通常 out of dread, without dread, no dread などの句で使用され、「疑いもなく」(without doubt, doubtless) を意味した。なお、dreadless (=doubtless) OED  での初出はチョーサーのものである。

 Troilus での使用回数は out of drede 11回、dredelees 9回、dredeles 2回、with-outen drede 2回、with-outen any drede 2回である。 Confessio Amantis では withoute drede 5 回使用されているが、それ以外の dredelees 等は使用されていない。

 

eek (=also, moreover)

That Pandarus, for al his wyse speche,

Felt eek his part of loves shottes kene, (58)

利口な口をきいたものの、そのパンダラスもまた恋の神の鋭い矢に射られた心地がした。

 

 eke は「〜もまた」(=also) を意味し、ドイツ語の auch と同語源の語である。14-16 世紀には eek という綴りも用いられ、Troilus ではこの eek 形が最も多く 194 回使用されていて、eke 形が6回である。also に関しては、一応意味を度外視すれば、also 36 回、als 1回使用されている。Confessio Amantis では ek 284 回、eke 54 回、一方、 also 273 回、als 90 回使用されている。

 

表8 ekealsoの使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

eek, eke

200

ek, eke

338

also

36

also

273

 

 

ferforth (=far)

For thus ferforth I have thy work bigonne,  (960)

Fro day to day,...

これまでずっと毎日ぼくは君のために骨を折ってきたからだ。

 

 fer (=far) 12世紀から16世紀にかけて見られる形で、Troilus ではこの fer 形が一貫して使用されている。また ferforth far と同義である。thus ferforth は一種の熟語で「これまで(ここまで)ずっと」の意味。

 ferforoth Troilus での使用回数は7回である。Confessio Amantis では ferforth 30 回、ferforthli 2 回使用されている。

 

forsothe (=indeed)

Forsothe, so it semeth by hir song, (883)

きっとそうでしょうね、彼女の歌から判断すれば。

 

 forsothe (=forsooth) for sooth (=truth) とからなる複合語で、「確かに」の意味の副詞。2 語に書かれることもある。Troilus での使用回数は forsothe 2回、 for sothe 1 回、 for sooth 1 回、また同義の in sooth 2 回、 sothly 1 回である。Confessio Amantis では forsothe の使用は見られず、 in soth 5 回、sothly 2 回、sothliche 1 回使用されている。

 

ful (=very, completely)

With that she gan ful sorwfully to syke; (428)

そう言って彼女はいかにも悲しそうにため息をついた。

 

God woot, that he it grauntede anon-right,

To been hir fulle freend with al his might. (1552)

トロイラスが、全力を挙げてクリセイデの完全な友になることに同意したことは確かです。

 

 今日の英語で他の副詞や形容詞を強調する副詞としては very が一般的であるが、very ‘to a great extent’ の意味で用いられるようになったのはチョーサーの時代よりも後で、OED  では初出が c1470 年となっている。チョーサーでは verray (=very) は主に true の意味の形容詞として使用されている。Troilus で現代の very に相当する語として使用されているのが副詞としての full である。今日でも「非常に」の意味の full は詩語として使用される。そのほか、 exactly の意味の副詞としては今日でも用いられる right Troilus では多用されていて、この強意副詞としての right の使用回数は 172 回である。また、上記2番目の用例では fulle complete の意味の強意の形容詞として使用されている。

 強意の副詞としての ful Troilus での使用回数は 185 回であり、そのほか fully 23 回、fullich 1 回、fulliche 1 回使用されている。Confessio Amantis では強意の副詞としての ful 64 回使用されていると思われ、fully 14 回、fulli 13 回、fullich 1 回、fulliche 4 回使用されている。また Confessio Amantis では強意の副詞として riht 241 回、ryht 6 回、right 3 回使用されている。

 表9に強意副詞の使用回数を示す。使用回数を示す数字は正確な数と言うよりは概数とお考え頂きたい。例えば、Confessio Amantis al は全部で 1454 回あまり、all 46 回使用されており、そのうち 402 個の al 3個の all を強意副詞として数えたが、どれを強意副詞と考えるかに付いては解釈が分かれる可能性があり、それによって数値が異なってくるからである。

 

9 強意副詞の使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

full

185

ful

64

right

172

riht, ryht, right

250

al

122

al, all

405

fully, fullich(e)

25

fully, fulli, fullich(e)

32

wonder

10

wonder

31

 

 

hardely, hardily (=certainly, assuredly)

For hardely the werste of this is do; (304)

確かに最悪の事態は終わったのだから。

 

 hardily は元来「大胆に」という意味の副詞であるが、挿入句的に「確かに」(certainly) の意味で用いられることがある。

 Skeat Troilus での使用回数は hardely 6回、hardily 4回である。Confessio Amantis ではhardely hardilyも使用されていない。

 

lyte (=little)

With that she gan hir eiyen doun to caste,

And Pandarus to coghe gan a lyte,  (254)

すると彼女は目を伏せ、パンダラスは少し咳払いをした。

 

 lyte little の短縮形で、名詞、形容詞、副詞として little と同義である。一方、little Troilus では一貫して litel という綴りで現れている。

 Troilus での使用回数は lyte 20 回、lite 3 回、litel 39 回である。Confessio Amantis では lyte 10 回、lite 7 回、litel 70 回、lytel 2 回、alitel (=a litel) 1 回使用されている。

 

muchel (=much)

To telle al how, it axeth muchel space.  (1071)

すべてを語るには時間がたくさん要ります。

 

much という語は mickle (=great) という語に由来し、mickle はイングランド南部では muchel, さらには短縮形の much になった。mickle 形は今日ではスコットランドに限られる。Troilus では muchel は名詞、形容詞、副詞すべてにおいて much と同義である。

 Troilus での使用回数は muche 14回、muchel 4回で、mickle は使用されていない。Confessio Amantis では moche 13 回、mochel 71 回、mochil 1 回使用されている。

 

10 littlemuchの使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

litel

39

litel, lytel, alitel

73

lyte, lite

23

lyte, lite

17

muchel

4

mochel, mochil

72

muche

14

moche

13

 

 

mo (=more in number), never-mo (=never again)

God sende mo swich thornes on to pyke! (1274)

引き抜くべきそのような棘を神様がもっとお与えくださるように。

 

for sith that day that I was bore,

I nas, ne never-mo to been I thinke,       (1413)

Ayeins a thing that mighte thee for-thinke.

生まれてこのかた君の不興を買うようなことは一度もしたことはないし、今後も絶対にしないつもりなんだから。

 

 mo more とだいたい同義であるが、形容詞の場合は many の比較級として複数形の名詞とともに用いて数が多いことを表す。

 Troilus での mo の使用回数は ever-mo13 回)や never-mo6回)を含めると、38 回で、それに対して no-more などの複合語を含めた more の使用回数は 149 回である。Confessio Amantis では複合語を含めた mo の使用回数は 79 回であり、複合語を含めた more の使用回数は 346 回である。

 

11 momoreの使用回数(複合語を含む

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

mo

38

mo

79

more

149

more

346

 

 

nede (=necessarily)

For every thing, a ginning hath it nede  (671)

Er al be wrought, with-outen any drede.

あらゆるものにはそれが成るに先立って、どうしても始まりがなければならないことは、疑う余地のないことですから。

 

I shal wel suffre un-to the tenthe day,

Sin that I see that nede it moot be thus.  (Troilus IV. 1599)

やむを得ないことが分かったから十日目まで辛抱するよ。

 

 need は元来名詞 need(必要)の具格形 (instrumental case) で、「必ず」(of necessity, necessarily) の意味の副詞として使用されている。通常 shall must の助動詞とともに用いられる。11 世紀から 15 世紀には nede という形が一般的で、15 世紀から 17 世紀にかけては need という形で現れることが多い。

次の項に掲げる同義の nedes と比べて、nede Troilus での用例は少なく、上記の2例だけである。Confessio Amantis では necessarily の意味の副詞として用いられた nede 10 回あり、そのうち 7 回は mot とともに、1 回は moste とともに、2 回は schal とともに使用されている。

 

nedes (=necessarily)

Thorugh which I woot that I mot nedes dyen; (536)

そのため私は必ず死ななければならないことを知っています。

 

 needs は前項の need に副詞形成語尾である adverbial genitive(副詞的属格)の s をつけた形で、need と同様に「必ず」(of necessity, necessarily) の意味の副詞として使用される。 11 世紀から 16 世紀にかけては nedes という綴りで書かれることが多い。通常 must needs, needs must, will (would) needs という組み合わせで使用される。今日では needs は文語体に限られる。

Troilus での nedes の使用回数は 11 回で、そのうち mot とともに用いられているのが7回、moste とともに用いられているのが3回、wolde とともに用いられているのが1回である。Confessio Amantis では nedes 28 回使用されていて、そのうち 19 回は mot(e) とともに、8 回は most(e) とともに、1 回は wile (=will) とともに使用されている。

 

no-thing (=not at all), nought (=not, not at all), nat (=not)

Yet of him-self no-thing ne wolde I recche, (1473)

Nere it for Antenor and Eneas,

もしアンテノーさんやエネーアスさんがいなければ、あの人のことなど何とも思わないところなんだけれども。

 

Beth nought agast, ne quaketh nat; (302)

驚かなくてもいいし、震えることもないよ。

 

To what fyn is swich love, I can nat see, (794)

何のためにそのような恋をするのか分からない。

 

 1番目の例文では nothing ‘not at all’ の意味の副詞として使用されている。nought nothing の意味の名詞であるが、それが副詞的対格 (adverbial accusative) として用いられて、‘not at all’ あるいは単に ‘not’ の意味の否定の副詞となったものである。否定辞の not は元来このnought の短縮形であり、一方 nat naught の短縮形であった。 not nat もともに14 世紀のチョーサーの時代に出来た語であって、OED  によるnat の初出用例はチョーサーの The Legend of Good Women からのものであり、not の場合は Langland Piers Plowman からのものである。nought not と同じ意味で使用するのは今日では廃義である。

なお、Skeat Troilus では否定辞は not (一部分 ne wot の意味の語を含めて 283 ) と、例文に見られるように nat25 回)の両方の綴りが見られる。否定辞 ne 229 回あまり使用されている。

これに対して、Robinson 版のThe Canterbury Tales では not 6 回使用されているだけで、nat の使用回数が 1058 回というように、主にnat の方が使用されている。

Confessio Amantis では not ( 76 ) ne wot (=don’t know) の意味であって、否定辞の not noght (1242 ) または nought (18 ) と綴られている。また、ne 487 回あまり使用されている。

 

ought, aught (=at all)

If I my tale endyte

Ought hard, or make a proces any whyle, (268)

She shal no savour han ther-in but lyte

もし私が話をいくらかでも難しくしたり、くどくしたりすれば、彼女はそのことに少ししか興味を示さないだろう。

 

 ought (=anything) という代名詞が副詞的対格 (adverbial accusative) として副詞に用いられた用例で、「少しでも」(to any extent, in any degree, in any respect, at all) の意味である。

 この意味の ought, aught Troilus10回使用されていると思われる。

 

outrely (=utterly)

but if I were as thou,

God help me so, as I wolde outrely,     (1004)

Right of myn owene hond, wryte hir right now 

A lettre,

しかしもしぼくがあなたなら、絶対たった今自分の手であの人に手紙を書くでしょう。

 

eek for that ye mente

Al-outrely to shewen your entente! (Troilus V. 1694)

それに君が自分の真意をはっきりと示そうとしたからだった。

 

 outerly utterly(完全に)の別形で、14 世紀、15 世紀には頻繁に用いられた語である。元の outer out の比較級であるが、この outer は別形の utter ほどは用いられなかった。Troilus では outrely という形で現れる。outer に強意の all を添えた形が Troilus では al-outrely 1語に綴られている。

 Troilus での使用回数は outrely 3回、al-outrely 2回であり、一方 utterly 1回である。Confessio Amantis では oultreli 1 回使用されている。

 

paraunter (=perhaps)

Paraunter thenkestow:             (1373)

おそらくあなたはこうお考えなのでしょう。

 

 paraunter peradventure の中略形で 14 世紀から 16 世紀にかけて見られる形。「恐らく、多分」(perhaps) の意味。今日では peradventure は古語となっている。

 Troilus での使用回数は paraunter 10 回、peraunter 1回である。Confessio Amantis では per aunter 1 回、par aventure 2 回、per aventure 1 回使用されている。

 

pardee, depardieux (=by God, certainly)

Why, no, parde; what nedeth more speche?  (497)

ええ、勿論ですわ、どうしてそれ以上仰る必要があるでしょう。

 

Quod Troilus, ‘Depardieux, I assente;...’  (1058)

トロイラスは言った、「確かに承知した。」

 

 parde (=pardie) は古フランス語から入った語で、 pardieu (=by God, indeed)(まったく、本当に)の意味。それにさらに前置詞の de を付け加えた depardieux Troilus では見られる。pardie は今日では古語である。

 Troilus での使用回数は pardee 18 回、par-dee 1 回、parde 5回、pardieux 1回、depardieux 1回である。Confessio Amantis では pardee depardieux は使用されていない。

 

plat (=flatly)

Now have I plat to yow myn herte shriven; (579)

これでぼくの心は率直に君に告白したわけだ。

 

 plat は「率直に」(flatly, bluntly, plainly, straightforwardly) の意味の副詞で、Troilus では platly も同義で用いられている。

 Troilus での使用回数は plat 2回、platly 3回である。Confessio Amantis では plat 5 回使用されている。

 

sikerly (=certainly)

And sikerly, the sothe for to seyne,  (520)

As I can clepe ayein now to my minde,

Right thus to Love he gan him for to pleyne;

正直に言えば、確かに、今思い起こすことができるのだが、ちょうどこのように彼は恋の神に訴えていた。

 

 siker sicker 12 世紀から 19 世紀にかけて見られる綴りで、チョーサーではこの形で現れる。sicker はラテン語の securus (=secure) が初期にゲルマン語に借用されたもので sure の意味であり、ドイツ語の sicher (=secure, safe, certainly) と同語源である。その副詞形 sikerly が「確かに」(certainly) の意味で使用されている。また siker 自体にも「確かに」(certainly) の意味の副詞用法がある。一方、secure という語はラテン語の securus が直接英語に入ったものである。OED での secure の初出は 1533 年頃のものである。

ME では siker sikerly もともに広く使用された語であるが、1500 年以降はスコットランドやイングランド北部以外では使用されることはまれとなった。

 sikerly Troilus での使用回数は3回である。Confessio Amantis では sikerly 2 回、sikerliche 3 回、sekerliche 1 回使用されている。

 

somdel (=somewhat)

And wex somdel astonied in hir thought, (603)

Right for the newe cas;

まさにこの新しい事態に心の中でいくぶん驚いた。

 

 somdel somedeal 13世紀、14世紀に見られる綴りで、「ある程度」(somewhat) の意味。some deal との複合語で、1語に書かれる場合と、2語に書かれる場合とがあるが、Troilus では一貫して somdel の綴りで現れる。somedeal は今日では古語である。

 Troilus での somdel の使用回数は3回である。Confessio Amantis では somdel 17 回、somdiel 31 回使用されている。

 

soore, sore (=exceedingly, sorely)

By god, ye maken me right sore a-drad,  (115)

Ye ben so wilde, it semeth as ye rave!

あきれた、本当に怖くなるわ、乱暴なことをおっしゃって、気違沙汰だわ。

 

 sore は苦痛などの程度の甚だしいことを意味する語であるが、例文のように単に強意の副詞として「はなはだしく」(exceedingly) の意味で用いられていると思われる場合がある。この用法は今日では古語・詩語である。

 

thrye (=thrice)

And with a sorwful syk she seyde thrye, (463)

彼女は悲しそうにため息をついて、三度言った。

 

 thrie, thye thrice の意味の副詞で、1500 年ころまで使用された。これに副詞形成語尾として adverbial genitive(副詞的属格)のsをつけた形もあり、こちらは 1600 年頃から thrice と綴られるようになって、今日に至っている。

 Troilus での thrye の使用回数は3回で、s の付いた thryes 1回である。Confessio Amantis では thires 8 回使用されている。

 

unethes, unnethe (=with difficulty, scarcely)

And he was ethe y-nough to maken dwelle.  (Troilus V. 850)

彼は簡単に長居させられることになった。

 

For in this see the boot hath swich travayle,

Of my conning, that unnethe I it stere:   (4)

船はこの海で行き悩み、私の技では船を進めがたいからだ。

 

For neither with engyn, ne with no lore, 

Unethes mighte I fro the deeth him kepe;  (566)

知恵を絞ってみても、お説教しても、彼を死から引き留めることはできそうにないのだ。

 

 eath は今日 easy の意味の形容詞、副詞としてスコットランド方言に残っているが、かつては広く用いられていた語であった。eth(e) 13 世紀から 16 世紀にかけてみられる綴りである。uneath はそれから作られた副詞で、‘with difficulty, scarcely’ の意味を持ち、1300 年頃から 1600 年頃にかけては非常によく用いられた語であった。uneaths はそれに副詞的属格 (adverbial genitive) s を添えた形で、意味は uneath と同じである。unnethe(s) 14 世紀から 16 世紀にかけて見られる綴りである。

 Troilus での使用回数は ethe 1 回、unneth 1 , unnethe 9 , unnethes 2 , unethes 1 回であり、ほぼ同義の scarsly (=scarcely) 1 回使用されている。hardly が「ほとんど〜ない」の意味を持つに至ったのは 16 世紀で、OED  での初出は 1553 年のものであり、当然この意味での hardly の使用はチョーサーにはない。Confessio Amantis では eth 1 回、unethe 1 回、unethes 8 回、unnethes 1 回、scarsly 1 回使用されている。

 

wonder (=amazingly, very)

and wordes tho

That hadden prys, now wonder nyce and straunge (24)

Us thinketh hem;

昔優れていた言葉も、今では我々にはきわめて愚かしく、奇妙に思われる。

 

 「非常に」の意味の強意の副詞として wonder を用いる用法は、c1200 年から 1725 年まで OED  には用例があるが、今日では廃語となっている。

 この副詞用法の wonder Troilus での使用回数は 10 回である。Confessio Amantis では副詞用法の wonder 31 回使用されている。

 

y-wis, wis, wisly (=certainly)

Y-wis, I love him best, so doth he me; (846)

確かに、私はあの人を愛していて、あの人も私を愛している。

 

A thousand Troians who so that me yave,

Eche after other, god so wis me save,  (978)

Ne mighte me so gladen;

千人のトロイ人をくれる人がいたとしても、断言するが、これほどぼくを喜ばせることはできないだろう。

 

As wisly helpe me god the grete,   (1230)

I never dide a thing with more peyne

Than wryte this, to which ye me constreyne;

神様に誓って、この手紙を書くことほど苦労したことはなかった、おじさまが書けと仰るから書いたけれど。

 

 y-wis はドイツ語の gewiss (=certain, certainly) と同語源の語で、「確かに」(certainly) の意味の副詞である。ywis, y-wis, I wis など様々に書かれたので、後の作家の間ではあたかも ‘I wist’ (=I knew) の現在形であるかのように誤解され、‘I know’ の意味に誤用されることがあった。

 wis はこの y-wis の語頭母音消失形であり、wisly とともに certainly の意味。Troilus では wis wisly は主に断言で用いられている。

 Troilus での使用回数は y-wis 77 回、wis 7回、wisly 12 回である。Confessio Amantis では ywiss 8 回、iwiss 1 回、wiss 2 回使用されている。

 

ye (=yes)

         ‘...Or woot it Troilus?’

He seyde, ‘Ye, but wole ye now me here? ...’ (1628)

「トロイラスはご存じなんですか。」彼は言った、「ええ、ご存じです、でもまあ私の言うことを聞いてください。」

 

 yea は否定語を含まない疑問文に対する肯定の返答で使用された。一方、yes は否定語を含むの疑問文に対する返答に用いられる場合と、否定語を含まない疑問文に対する返答で用いられる場合の両方の用法があった。 Troilus では yea の方が圧倒的に多く使用されている。ye (=yea) 14 世紀から 16 世紀に見られる綴りで、Troilus ではもっぱらこの形が使用されている。

 否定の疑問文に対する返答には yes, 肯定の疑問文に対する返答には yea を使うという区別は、1600 年を過ぎると廃れていき、いずれの疑問文に対しても yes で答えるようになって、yea の方は古語となっていった。1611 年の欽定訳聖書では yes 4回使用されているだけであるが、そのすべては否定の疑問文に対する返答となっている。欽定訳聖書では yea 329 回使用されていて、yes よりも圧倒的に多いことが分かる。

 Troilus での使用回数は ye 38 回、yes 2 回(ともに Yes, yes という反復で)、yis 6 回である。Confessio Amantis では ye 8 回、yis 9 回使用されている。

 

nay (=no)

‘...Were it wel doon?’ Quod she, ‘Nay, by my trouthe!’ (1281)

...そんなことがあっていいのだろうか。」彼女は言った、「いいえ、絶対にいけませんわ。」

 

Ther-to nolde I nought ones have seyd nay, (481)

But that I dredde, as in my fantasye;

いろいろ想像して心配しなければ、それに対して嫌だなんて一度も言わなかったはずです。

 

 yes no かを尋ねる疑問文に対する返答の場合、チョーサーでは否定の場合 no よりも nay の方が普通の形であった。OED  によると古くは疑問文が否定語を含まないとき、返答には nay を用い、疑問文に否定が表明されているときには返答に no を用いた。返答に用いられた no Troilus での使用回数は4回であるが、たしかに、その前の疑問文にはすべて否定語が含まれている。また、 ‘say nay’ は決まった表現で、「断る」の意味である。

‘nay, nay’ のように重複した使用を1回と数えれば、nay Troilus での使用回数は 30 回であり、no よりも使用頻度が圧倒的に多いことが分かる。Confessio Amantis では nay 36 回使用されているが、 返答に no を用いた用法は見られない。

 

12 返答のyesyea, nonayの使用回数

Troilus

使用回数

Confessio Amantis

使用回数

yes

2

yis

9

ye

38

ye

8

no

4

no

0

nay

30

nay

36

 


 

II. 接続詞

 

目次

 

接続添加詞 that / after that (=according as) / al (=although) / and (=if) / as (=as if) / but, bot, but-if (=unless) / by cause that (=because) / er, or (=before) / for, for that (=because) / for-why (=because; wherefore) / other, outher (=either) / sin, sith, sithen (=since) / ther (=where) / 接続添加詞as: ther-as (=where) / wher (=whether)

 

 

接続添加詞 that

関係代名詞や従属節を導く疑問詞や接続詞の後に接続詞の that が虚辞的に添えられることがある。OED  that 6a 7 の項に説明されている用法である。

 

6. a. Added to relatives or dependent interrogatives (who, which, what, when, where, how, why, etc.). Obs.. or arch..

 

7. Formerly added with a conjunctive force to various words that are now commonly used conjunctionally without it; e.g. because, if, lest, only, the adv., though, till, while. arch.. or Obs..

 

 Middle English Dictionary はこの that particle として説明し、起源的には OE の接続詞・関係代名詞 D{t に由来するが、用例によっては代名詞と解釈できる場合もあるとしている。MED はいくつかの項に分類しているので見てみたい。

 

1. Following temporal subordinating conjunctions introducing adverbial clauses.

  例: after that, er that, til that, while that, etc.

2. Following nontemporal subordinating conjunctions introducing adverbial clauses of manner, purpose, cause, condition, etc.

  例: after that (=according as), though that, bicause that, but that, if that, ther that, etc.

3a. Following pronouns or quasi-pronouns in conjunctive prep. phrases introducing adverbial clauses.

 例: after than (that) (=after), er than that (=before), in that (=insofar as), on that (=concerning the fact that), etc.

3b. Following adverbs as subordinating conjunctions introducing noun clauses functioning as obj. of prepositions.

 例: from thanne that (=from the time when, since), biside ther that (=beside the place where), etc.

4. Followng prepositions.

 例: er that (=before [a period of time]), forto that (=until [a specific time]; to the point of [an action]).

5. Followng conjunctive phrases.

 例: bi so that (=if), but if (=unless), for as much that (=because), etc.

6. Following rel. pronouns.

例: which that, what that (=which), of that that (=of which), from thennes that (=from which place).

7. Followning rel. adverbs.

 例: ther that (=where), wher that, thider that (=to which), wher-in that (=in which), etc.

8. Following interrog. pronouns or quasi-pronouns in subordinate clauses.

 例: who that, what that, whether that (=which of two alternatives), etc.

9. Following interrog. or rel. adjectives.

 例: what...that, whos...that.

10. Follownig adverbs or subordinating conjunctions in indirecrt questions or misc. subordinate clauses, esp. noun clauses.

 例: hou that (=how), as that (=that), whenne that (=whence), whether that (=whether), etc.

11. Followning interrog. adverbs in direct questions.

例: hou many...that (=how many), wher-for that (=why), whider that (=whither).

12. Following independent generalizing or indefinite rel. pronouns.

 例: which that (=those who), who that (=whoever), what-ever that (=whatever), etc.

13. Followning independent generalizing or indefinite adjectives.

 例: what...that (=whatever), what...so-ever that (=whatever), what time that (=whenever), etc.

14. Following independent generalizing or indefinite adverbs used conjunctively.

 例: hou that ever (=in whatever way), whanne that ever (=whenever), wher that ever (=wherever), etc.

 

 OE (古英語) では、前置詞を指示代名詞thatの適当な格と結合することによって、接続詞の価値を持つfor þæm þe æfter þæm þe などの表現が生まれていた。ふつう関係詞の þe が付くが、OEの時代にすでにそれはなくてもよかった。ME (中英語) では þe はすでに失われていて、部分的には接続詞の that がこれに変わっていた。さらに屈折語尾が失われたために、主格・対格共通の that þæm など他の格の代わりに登場した。それで for þæm þe for that (that) になり、æfter þæm þe after that (that) になった。that は接続詞句の一要素になってしまっていたため、他の結合詞にも付けられるようになり、副詞や前置詞と結合した結果、これらの副詞や前置詞は接続詞としても働くようになった(now thatなど)。Mod E (近代英語) の初期までには that はすべての従属接続詞に付けられるほどひろまっていた。シェイクスピアにも次の形がある。

 

after that, because that, before that, but that, ere that, for that, how that, if that, as if that, in that, lest that, moreover that, now that, since that, sith that, so that, though that, till that, when that, where that, whether that, while(s) that, whilst that.

 

いったん表現が固定されると、that 自体はよけいなものとなり、やがては英語から取り除かれていった。今日 that が残っているのは、分詞が that と結合した、considering that, seeing that, provided that や複合接続詞の on condition that 以外では、but that, except that, now that, so that (=if) くらいのものである(Franz, pp. 727-729)。

 

 この接続添加詞 that の使用は Troilus ではきわめて多く見られる。どのような句で用いられているのかを表1にまとめてみた。表の中の数字は Troilus Skeat 版テキストでの使用回数を示す。全体で409回使用されていることが分かる。

 

1 接続添加詞that の使用回数

which that

94

what that

8

if that

71

sith that

6

whan that

42

but-if that

6

how that

27

whom that

6

sin that

24

lest that

5

er that

23

whether that

5

though that

21

who that

4

for that

14

after that

2

whyl that

14

wher that

2

til that

13

al-though that

1

but that

11

al-theigh that

1

as that

8

by-cause that

1

 

 次に主に Troilus 第二巻からいくつか用例をあげてみたい。

Now that I shal wel bringen it aboute 

To come ayein, sone after that I go,     (Troilus IV. 1276)

Ther-of am I no maner thing in doute.

あちらに行ったすぐ後、また戻って来れることに自信がありますわ。

 

For which delibered was by parlement

For Antenor to yelden out Criseyde,

And it pronounced by the president,

Al-theigh that Ector ‘nay’ ful ofte preyde.  (Troilus IV. 214)

それでアンテノーと引き替えにクリセイデを引き渡すことが議会で討議され、ヘクターが反対の嘆願をなんども繰り返したにもかかわらず、そのことが議長によって宣せられた。

 

Ther-to nolde I nought ones have seyd nay,

But that I dredde, as in my fantasye;  (482)

もしいろいろ想像して心配しなければ、一度だってお断りしなかったはずですわ。

 

And certeynly, but-if that bokes erre,  (Troilus III. 1774)

Save Ector, most y-drad of any wight; 

確かに、もし書物が誤っていなければ、ヘクターを除いて彼こそ何人にももっとも恐れられていた。

 

And thilke foles sittinge hir aboute 

Wenden, that she wepte and syked sore

By-cause that she sholde out of that route  (Troilus IV. 717)

Departe, and never pleye with hem more.

彼女の周りに座っている他愛ない婦人たちは、彼女が泣いてため息ばかりつくのは、この仲間たちから去り、もう一緒に遊べないからだと考えた。

 

And therfore, er that age thee devoure,  (395)

Go love,

だから年に食われないうちに恋をするんだよ。

 

And thanked be ye, lord, for that I love!   (850)

神様、私の感謝をお受けください、私が恋をしている故に。

 

It fel that I com roming al allone

Into his chaumbre, and fond how that he lay  (556)

Up-on his bed;

ぼくがたまたま一人でぶらぶらと彼の部屋に入っていくと、彼はベッドに横にになっておられたのだ。

 

It were good, if that ye wolde assente,     (1630)

She tolde hir-self him al this, er she wente.

もし彼が同意するなら、彼女が帰る前にこのことすべてを彼に話すのがいいでしょう。

 

He hadde in herte alweyes a maner drede,

Lest that Criseyde, in rumour of this fare,  (Troilus V. 53)

Sholde han ben slayn;

このような行動の噂が立てば、クリセイデが殺されるのではないかという一種の不安が絶えず彼の心にあった。

 

Sin that thee list, I will aryse and wryte;  (1059)

君が望むのだから、腰を上げて書くことにしよう。

 

And god wot, never, sith that I was born,  (568)

Was I so bisy no man for to preche,

誓って、生まれてこの方、あれほど熱心に人にお説教をしたことはなかった。

 

But though that he for wo was pale and wan,  (551)

Yet made he tho as freshe a countenaunce

As though he shulde have led the newe daunce.

彼は悲しみのために蒼白なのだが、新しいダンスを踊ったという風な、生き生きした顔つきをしておられた。

 

So longe abyd til that the night departe;  (990)

夜が明けるまで待ってください。

 

Whan that hir tale al brought was to an ende,  (218)

Of hire estat and of hir governaunce,

Quod Pandarus,

クリセイデの境遇や身の処し方についての話がすべて終わると、パンダラスは言った。

 

but man so sore grone

Ne herde I never, and what that was his mone,  (558)

Ne wist I nought;

あれほどのうめき声は聞いたことがなかった。そのうめきの原因が何であるか、ぼくには全然分からなかった。

 

For wo was him, that what to doon he niste,

But bad his folk to goon wher that hem liste.  (Troilus I. 357)

彼は悲しみのためにどうしていいか分からず、どこへでも好きなところに行ってくれと従者たちに命じた。

 

Criseyde, which that herde him in this wyse, (386)

Thoughte, ‘I shal fele what he meneth, y-wis.’

彼がこのように言うのを聞いたクリセイデは、彼の真意をはっきり探ってみようと思った。

 

And for-thy, who that hath an heed of verre, (867)

Fro cast of stones war him in the werre!

それ故、ガラスの頭を持つ人は、戦争で飛んでくる石に気をつけなければなりません。

 

And eek his fresshe brother Troilus,

The wyse worthy Ector the secounde,

In whom that ever vertu list abounde,...  (159)

それにまた賢明な第二のヘクターさんとも言うべき、元気な弟君のトロイラスさんは、美徳が満ちあふれたお方だが、...

 

That as that day ther dorste noon with-stonde,

Whyl that he held his blody swerd in honde.  (203)

あの日は、彼が血刀を抜いている限り、立ち向かえるものは誰もいなかった。

 

 この接続添加詞 that の頻度を見るために、文中で使用されている場合の品詞に関して解釈の問題があまり起きない if, though, whyl, whether について、that がある場合とない場合との Troilus での頻度数を示したのが表2である。though には al-though 等を含む数が示されている。

 

2 Troilusで接続添加詞thatを伴う場合の割合

 

全使用回数

thatを伴う場合

thatを伴わない場合

if

279

77  (28%)

202  (72%)

though

114

23  (20%)

91  (80%)

whyl

32

14  (44%)

18  (56%)

whether

10

5  (50%)

5  (50%)

合計

435

119  (27%)

316  (73%)

 

 次に、Confessio Amantis での接続添加詞 that を伴う場合の割合を表3で見てみたい。名詞の while (for) the while (that) という句となって全体が接続詞的に用いられている用法もここに含めた。

 

3 Confessio Amantisで接続添加詞thatを伴う場合の割合

 

全使用回数

thatを伴う場合

thatを伴わない場合

if

770

149  (19%)

621  (81%)

though

257

14  (5%)

243  (95%)

whyl

107

34  (32%)

73  (68%)

whether

9

3  (33%)

6  (67%)

合計

1143

200  (17%)

943 (83%)

 

4 上記表3though等とwhyl等の内訳

 

 

全使用回数

thatを伴う場合

thatを伴わない場合

though

thogh

235

10  (4%)

225  (96%)

though

22

4  (18%)

18  (82%)

whyl

whil

81

28  (35%)

53  (65%)

while

16

3  (19%)

13  (81%)

whyl

7

1  (14%)

6  (86%)

whyle

2

1  (50%)

1  (50%)

whyles

1

1  (100%)

0  (0%)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

after that (=according as)

And, after that these dees turnede on chaunces,  (1347)

So was he outher glad or seyde ‘Allas!’

運勢を占うさいころの転び具合に応じて、彼は喜んだり、悲鳴を上げたりした。

 

OED  after C. conj. or conjunctive adv. (elliptically from prep.) 2 の項で ‘Of manner: According as. Obs.. b. with relative particle (that or as)’ と説明している用法で「〜に応じて」の意味である。after が元来前置詞であるため上記の「接続添加詞 that」の項に含めなかった。

 

al (=although)

Al dredde I first to love him to biginne,  (874)

Now woot I wel, ther is no peril inne.

あの人を愛することを最初は恐れたけれど、恐れることはないことを、今ははっきりと知りました。

 

 この al (=all) は接続詞ではなく副詞であるが、便宜的にここで扱う。all OE では強意の副詞として用いられることは普通ではなかったが、 ME になって強意副詞として形容詞や副詞を修飾することが頻繁に行われるようになった。 ME の時期が過ぎるとこの強意副詞の用法は一般的ではなくなったが、 all right などの固定した表現に残った(Mustanoja, pp.316-317)。譲歩の構文で用いられる all はこの強意副詞である。

「たとえ〜であっても」の譲歩の意味を出すときに all を用いて all if all though などの表現がかつてはあり、前者は今日では廃れているが、後者は although と一語で書かれるようになって存続している。一方、仮定法の文では主語と動詞を倒置することによってif が省略される。この仮定を表す倒置構文の前に強意の all を添えたのが例文の構文で、although の意味を持つが、all 自体は接続詞ではないので、all の次には必ず「動詞+主語」という語順の倒置構文が続くのが特徴である。

OED  all adv. 10 c.で次のように説明している。

 

With the subj. mood, though or if, being expressed by the reversed position of vb. and subject (as in be they = if they be), were omitted, leaving all apparently = although.  Thus: al be I = all though I be.  Obs.. exc. in synthetic phrases albeit, albe.

 

 この用法の al Troilus 40回ほど使用されている。

 

and (=if)

Good aventure, O bele nece, have ye

Ful lightly founden, and ye conne it take; (289)

美しい姪よ、お前は幸運を易々とつかんでいるのだよ、それを受け入れることさえできれば。

 

 and if の意味の接続詞として用いられた用法。やがて if で補強した and if という言い方もされるようになり、それはシェイクスピアなどに見られる。

 if の意味の and Troilus 第二巻では他にも見られるので、次に引用しておく。

 

For prouder womman were ther noon on-lyve,

And ye it wiste, in al the toun of Troye;   (139)

もしお前がこのことを知れば、トロイの町中でお前ほど鼻の高い女はいないことだろうよ。

 

And, Venus here to borwe,

I hope, and thou this purpos holde ferme,  (1525)

Thy grace she shal fully ther conferme.

ビーナスに保証人になってもらって言えば、君が目的を堅持すれば、彼女も君に対する好意を強くすると思うよ。

 

Quod Pandarus, ‘And it your wille be     (1688)

That she may take hir leve, er that she go?’

パンダラスは言った、「もしよろしければ、おいとまする前に彼女にご挨拶させたいのですが。」

 

as (=as if)

And I with that gan stille awey to goon,

And leet ther-of as no-thing wist hadde I,   (543)

ぼくはそれを聞いてそっとそこを離れ、そのことについては何も知らないふりをした。

 

「まるで〜かのように」の意味を表すのに今日では as if, as though を用いるが、かつては as 節に仮定法構文を置いてこれを表現していた。as it were (いわば) というフレーズにこの as (=as if) の用法が残っている。 Troilus では as if 2回使用されている。

 

but, bot, but-if (=unless)

OED  but conj. 10 ‘Introducing a condition: If not, unless, except. arch. b. Expanded into but if. Obs. (Very common from 14th to 16th c.)’ と述べている ‘unless’ の意味の用法である。OED  が記しているように、この but の用法は今日では古語である。but if の方は Skeat Troilus ではすべて but-if と綴られている。but-if の使用回数は20回である。

この but の用法は形だけでは but の他の用法との区別が付きにくいので、Troilus 第二巻中のこの用法の用例すべてを挙げておく。

 

The noble Troilus, so loveth thee,

That, bot ye helpe, it wol his bane be.  (320)

高貴なトロイラスさんがお前に熱を上げていて、もしお前が助けてあげなければ、命取りになるほどなんだ。

 

Ther-ayeins answere I thus a-noon

That every wight, but he be fool of kinde,  (370)

Wol deme it love of freendship in his minde.

それに対してこう即答しよう、だれも生来の馬鹿でなければ、彼の性格が友情に厚いせいだと思うだろう、と。

 

Lo, this is he

Which that myn uncle swereth he moot be deed,

But I on him have mercy and pitee;  (655)

そうだ、もし私が同情しなければお命が危ないと叔父が言っていたのはこの方なんだわ。

 

For man may love, of possibilitee,

A womman so, his herte may to-breste,

And she nought love ayein, but-if hir leste. (609)

男の人が心が張り裂けるほどある女性を愛し、その女性が気が向かなければ愛を帰さないと言うことがあり得るからです。

 

Ther-to nolde I nought ones have seyd nay,

But that I dredde, as in my fantasye;  (482)

もしいろいろ想像して心配しなければ、一度だってお断りしなかったはずですわ。

 

by cause that (=because)

For he wole have the more hir grief at herte,

By cause, lo, that she a lady is;          (1633)

いいですか、あの人が女性なのだから彼もそれだけ彼女の悲しみを汲んで下さるでしょう。

 

 Troilus では because はふつう by-cause (6)bycause (1) のように綴られていて、by cause that のように離して綴られているのはこの用例のみである。Norman Davis bycause の項で ‘mss. and editions vary in treating as one word or two’ と述べている。なお、ガワーの Confessio Amantis では be cause (2), be cause that (4), be cause of (5) のように離して綴られている。

 

er, or (=before)

for which in wo to bedde he wente,

And made, er it was day, ful many a wente.  (63)

そのため彼は悲しみに包まれて就寝したが、朝になるまで何度も寝返りを打った。

 

And god wot, never, sith that I was born,

Was I so bisy no man for to preche,

Ne never was to wight so depe y-sworn,

Or he me tolde who mighte been his leche.  (571)

誓って、生まれてこの方、あれほど熱心に人にお説教をしたことはなかったし、あれほど心を込めて人に誓ったこともなかったよ、あの人をいやすことができる人の名を言ってくれるまではね。

 

er houres twyes twelve,

He shal thee ese, unwist of it him-selve.  (1400)

二十四時間以内に、彼がそれと気付かないであなたのお気持ちを和らげてくださるようにしてみましょう。

 

They mighte deme thing they never er thoughte! (Troilus III. 763

人が今まで考えもしなかったことを想像するかもしれない。

 

 ere before と同義で、before 同様、副詞、前置詞、接続詞として使用される。今日では ere は古語・詩語となっているが、Troilus では before の使用回数は、bifore 8回、biforn 21回、beforen 1回、計30回に対して、er の使用回数は85回となっていて、er の方が一般的な語であったことが分かる。なお、Troilus では before の意味の ere はすべて er と表記されていて、ere の綴りは ear () を表している。

 ere には rather than の意味の用法もあり、これは今日では古語・詩語である。「早く」(early)、「間もなく」(soon) の意味の用法もあったが、これは今日スコットランドに残っている。

 or ere と同義語で、今日では詩において通例 ever を伴って or ever または or e’er (〜するより早く)として用いれれる。シェイクスピアの King Lear に見れれる or ere はこれである。

 

I have full cause of weeping; but this heart

Shall break into a hundred thousand flaws,

Or ere I’ll weep.               (King Lear II. iv. 288)

泣きたい理由は十分にあるが、この胸が散りじりに裂けても泣くものか。

 

 Confessio Amantis に見られる afore や単独の fore(ともに before の意味)は Troilus には見られない。Confessio Amantis では before 15回、befor 2回、beforn 2回使用されているのに対して、er 139回使用されている。

 

for, for that (=because)

But most hir favour was, for his distresse   (663)

Was al for hir, and thoughte it was a routhe

To sleen swich oon, if that he mente trouthe. 

彼女が好意を持った最大の理由は、彼の苦悩が自分のためであるということであった。そして、もし彼に誠意があるなら、見殺しにするのは気の毒なことだと思った。

 

A womman, that were of his deeth to wyte,

With-outen his gilt, but for hir lakked routhe,  (1280)

Were it wel doon?

男性には罪がなくて、その女性に同情が欠けていたためにその男性が死んで、その責任が女性にあるという場合なのだが、そんなことがあっていいのだろうか。

 

And thanked be ye, lord, for that I love!   (850)

神様、私の感謝をお受けください、私が恋をしている故に。

 

 今日では、接続詞の for はコンマなどに続けて後から理由を述べる「というのは〜だから」という等位接続詞として用いられるが、以前は because と同様の従属接続詞としての用法があった。OED  for conj. 1 の項で、‘Introducing the cause of a fact, the statement of which precedes or follows: Because. Obs.. exc. arch..’ と説明されている用法である。

 

for-why (=because; wherefore)

Thow shalt gon over night, and that as blyve,

Un-to Deiphebus hous, as thee to pleye,

Thy maladye a-wey the bet to dryve, 

For-why thou semest syk, soth for to seye. (1516)

実際あなたは病人のように見えますから、病気を少しでもよく追い払うために気晴らしをする振りをなさって、今夜のうちに、しかも早く、デーイフォバスさんの所へお出かけになるんですよ。

 

For-why to every lovere I me excuse, (12)

That of no sentement I this endyte,

But out of Latin in my tonge it wryte.

それ故、私はすべての恋する人たちに弁解するのだ、個人的経験からこれを書くのではなく、ラテン語から我が国語に移しつつ語るのだと。

 

 forwhy には副詞として ‘why’ ‘therefore’ の意味があり、接続詞として ‘because’ ‘for’(というのは〜だから)の意味がある。1番目の引用文は接続詞としての ‘because’ の意味の用法であり、2番目のは副詞としての ‘therefore’ の意味の用法である。

 Troilus での for-why の使用回数は副詞用法、接続詞用法合わせて13回である。

Confessio Amantis では ‘forwhy and’ (=provided that) というフレーズで2回使用されているだけである。

 

other, outher (=either)

And, after that these dees turnede on chaunces,

So was he outher glad or seyde ‘Allas!’   (1348)

運勢占いのさいころ次第で、喜んでみたり、悲鳴を上げたりした。

 

if that I, thurgh my disaventure, 

Had loved other him or Achilles,  (416)

Ector, or any mannes creature,

Ye nolde han had no mercy ne mesure

On me, but alwey had me in repreve;

もし私が不幸にしてあの方なり、アキレス様なり、ヘクトル様なり、他の誰かを愛したのだったら、叔父様は同情したり手加減することなどなく、私を咎め続けたことでしょう。

 

 outher either と同義語で、16世紀まで用いられた語。Troilus での outher の使用回数は5回であり、other は上記引用箇所の1回であると思われる。一方 either 形は6回使用されている。Confessio Amantis では outher 2回、owther 4回、either 4回、eyther 2回使用されている。

 

sin, sith, sithen (=since)

Allas! Sin I am free,   (771)

Sholde I now love, and putte in Iupartye

My sikernesse, and thrallen libertee?

ああ、私は自由の身なのだから、今恋をして、安定した境遇を危うくし、自由を拘束していいのかしら。

 

Eek sith I woot for me is his distresse,    (719)

I ne oughte not for that thing him despyse, 

Sith it is so, he meneth in good wyse.     (721)

それにあの方の苦しみが私のためだと分かっているのだから、あの方がまじめな気持ちでいらっしゃる以上、そのためにあの方を軽蔑すべきではないわ。

 

And sithen thende is every tales strengthe,  (260)

And this matere is so bihovely,

What sholde I peynte or drawen it on lengthe

To yow, that been my freend so feithfully?’

最後に話の重点があるのだから、そしてこのことは役に立つんだが、忠実な友であるお前にどうして言葉を飾ったり、長々と引き延ばしたりすべきだろうか。

 

 sin, sith, sithen すべてが since (副詞、前置詞、接続詞)の意味である。since 15世紀から使われるようになった語で、チョーサーの時代にはまだ使用されていなかった。 since 1450 年頃 synnes という形で登場するが、これは sithenes (=since) th 音が脱落した中略形であり、sithenes sithen adverbial genitive(副詞的属格)の -s が付いた形であった。sithen OE siDDan に由来し、siDDan siD (=after) Dan (=that) から成る複合語で、‘after that’ を意味し、 Dan Dat (=that) の与格 (dative) である Dam の弱まった形であった。synnes 15 世紀に since という綴りで書かれるようになり、今日に至っている。

 Troilus での使用回数は sin 4回、 sith 12回、sithen 1回で、 sithens は使用されていない。まだ存在していなかった since は当然使用されていない。

Confessio Amantis では sith 3回、sithe 4回、sithen 12回、siththe 8回、siththen 1回使用されている。

 

ther (=where)

I see him deye, ther he goth up-right,  (333)

私は彼が立って歩いているところで死んでいくのを目にするのだ。

 

 OE の時期から16世紀ころまで there where の意味の関係副詞として使用する用法があった。また、OE 後期から where there が関係副詞として競合していたが、ついには where there に取って代わった。ME の作家たちはこれらの関係副詞としての where there をあまり区別していなかったようだと、Mustanoja は述べている (Mustanoja, pp. 337-338)

 

接続添加詞as

ther-as (=where)

A nightingale, upon a cedre grene,

Under the chambre-wal ther as she lay,

Ful loude sang ayein the mone shene,   (920)

彼女が臥している部屋の壁の下にある杉の上でナイチンゲールが声高く輝く月に向かってさえずった。

 

Lo, Troilus, right at the stretes ende,

Com ryding with his tenthe some y-fere,

Al softely, and thiderward gan bende

Ther-as they sete,         (1251)

ちょうどトロイラスが通りのはずれから、十人の仲間を連れて馬で静かにやってきた。そして彼らの座っている方に曲って来た。

 

 ther-as, there as は前項の there as が添えられた形で、OED  as 27の項で次のように説明している。

 

From its relative or conjunctive force, as was added (rarely prefixed) to the demonstrative adverbs there, then, thither, thence, after, to make them conjunctive; it was used for some time with the interrogatives where, when, whither, whence, after they were substituted for the demonstratives. When as is found in modern poets as an archaism; the others are Obs.  Cf. when that, after that; and see whereas, in which the local sense is now lost.

 

 Middle English Dictionary (MED) as 11 の項で ‘In a clause of place (where or to which): where, whither. (b) following ther, wher, thider, whider.’ と説明しているが、MED OED  もともに関係代名詞に as が続く用法については触れていないようである。今日ではこの as according as および whereas に残っている。

 この as の使用は Troilus では限られていて、there where に添えられたもの以外は見つからなかった。Troilus での使用回数は表5の通りである。

 

5 Troilus  内の接続添加詞asを伴った関係詞の使用回数

ther-as

13

there-as

2

ther as

4

wher-as

3

where-as

1

 

 この接続添加詞asを伴った関係詞の用法はチョーサーよりもがガワーの方が多用している。Confessio Amantis での使用回数を表6で示す。

 

6 Confessio Amantis  内のasを伴った関係詞の使用回数

wher as

44

72

where as

28

ther as

25

32

there as

7

which as

20

29

whiche as

9

hou as

4

6

how as

2

wherof as

4

 

who as

2

 

whom as

1

 

 

 

wher (=whether)

God woot wher he was lyk a manly knight! (1263)

じつに雄々しい騎士姿であることか。

 

 wher 13世紀から17世紀にかけて用いられた whether の縮約形である。

 

 

 

 


 

III. 前置詞

 

目次

 

前置詞と there, here, where との結合形 / afor-yeyn (=opposite) / ayeins (=against) / biforn (=before) / bitwixen (=between) / emforth (=according to) / fro (=from) / god to-forn (=by God) / in-with (=within) / thorugh, thurgh (=through) / til (=to) / with-outen (=without) /

 

 

前置詞と there, here, whereとの結合形(therewith, herewith, wherewith など)

 これらの結合における前置詞はもともと副詞であったもので、たとえば herebefore では here before も元来副詞であり、両者は並置されて同じ動詞を修飾していた。しかし、多くの副詞は形が前置詞と同一であり、また「ここ、もっと早い時期に」(here, at an earlier place) と「ここより早い時期に」(at an earlier place than this) との間には実質的な違いはなかったため、before などの副詞は here(この場所)を支配する前置詞であると感じられるようになっていった。この類推で、もともと副詞の機能を持たない前置詞からも there-, here-, where- との結合形が自由に作られるようになった。

 there here との結合形は OE の時代からあるが、ME の時期になるとこれら prepositional adverb の使用はかなり拡大し、新しい結合形が生まれるようになった。また ME 初期には、where との結合形が現れ始めた。それは whereabout(s), wheafter, wherat, whereby, wherefore, wherein, whereof, whereon, whereto, wherewith などである(Mustanoja, p. 434)。

 Norman Davis 編の A Chaucer Glossary には、there との結合形として theraboute, therafter, theragayn(s), therbiforn, therfro, therof, therout, therto, therupon, therwhyle, therwith, therwithal が挙がっており、また where との結合形として wherfore, wherfro, wherin, wherof, wheron, wherthrough, wherwith が挙がっている。

 これらの結合形にあっては、there that または it を意味し、here this を意味し、そして where which または what を意味する。したがって、thereof=of that [it] / hereof=of this / whereof=of which [what] ということになる。

 これらの前置詞との結合形の使用頻度を、比較のために Troilus での使用回数と Confessio Amantis での使用回数を表1〜表5 に示す。なお、therefore に関しては ‘for that’ の意味の場合と、「それ故」の意味の副詞の場合との区別が付きにくいため、表には含めなかった。もっとも、therefore の「それ故」の意味の用法は OED  では初出が a1400 年のものではあるのだが。

 

1 Troilus  内の前置詞とthereとの結合形の使用回数

ther-with

22

34

therwith

12

therwith-al

9

18

ther-with-al

7

therwithal

1

there-with-al

1

ther-to

14

15

therto

1

ther-of

7

8

therof

1

ther-after

3

 

ther-inne

3

 

ther-by

2

 

ther-on

2

 

ther-aboute

1

 

ther-ayeins

1

 

therby

1

 

ther-in

1

 

ther-fro

1

 

ther bifore

1

 

ther bi-syde

1

 

 

 この前置詞と there との結合形に関してはチョーサーとガワーとではかなり使用語彙に違いがあることが分かる。Confessio Amantis で使用されている主なものの使用回数をまとめると表2 のようになる。

 

2 Confessio Amantis  内の前置詞とthereとの結合形の使用回数

therof

142

therupon

113

therto

 75

therinne

 45

therayein

 16

therby

 13

therout(e)

  5

therafter

(ther after)

  4

therat(e)

  3

 

3 Troilus  内の前置詞とhereとの結合形の使用回数

her-after

1

5

here-after

4

her-biforn

1

5

here-biforn

4

her-upon

1

5

here-upon

2

here-up-on

2

her-of

3

 

her-to

1

2

herto

1

her-afterward

1

 

her-ayeins

1

 

here-tofore

1

 

 

 一方、ガワーはこの前置詞とhereとの結合形をあまり使用していないようで、herto 1 回)くらいしか見られない。

 whereとの結合形はそれほど使用頻度が高くはないが、Confessio Amantis での wherof だけが、その使用回数が532回となっていて、突出している。

 

4 Troilus  内の前置詞とwhereとの結合形の使用回数

wherby

1

wherfor

3

wherfore

6

wher-fore

1

wher-fro

1

wher-of

4

wher-on

2

wher-to

2

wher-with

3

 

5 Confessio Amantis  内の前置詞とwhereとの結合形の使用回数

wherby

1

wherfore

1

wherin that

2

wherinne

6

wherof

532

wheron

2

wherto

2

wherupon

2

wherwith

1

 

 Troilus のテキストから ther-aboute, ther-in, ther-of, ther-on, ther-to, ther-with, therwith-al, here-ayeins, here-biforn, her-of , wher-of の用例を見てみたい。

 

Men shal reioysen of a greet empryse

Acheved wel, and stant with-outen doute,

Al han men been the lenger ther-aboute.  (1393)

大きな仕事がうまく成就されて、確固としたものになるというのは愉快なことですよ、それについてそれだけ長い時間要したとしても。

 

If I my tale endyte

Ought hard, or make a proces any whyle, (268)

She shal no savour han ther-in but lyte

もし私が話をいくらかでも難しくしたり、くどくしたりすれば、彼女はそのことに少ししか興味を示さないだろう。

 

And sin ye woot that myn entente is clene, 

Tak hede ther-of, for I non yvel mene.  (581)

ぼくの意図が潔白だと言うことを君は知っているのだから、そのことを考慮してもらいたいんだ、ぼくには悪意はないのだから。

 

But ther-on was to heven and to done;  (1289)

そのことでは骨を折らなければならなかった。

 

Ther-to nolde I nought ones have seyd nay,  (481)

But that I dredde, as in my fantasye;

もしいろいろ想像して心配しなければ、それに対して一度だってお断りしなかったはずですわ。

 

And I my-self shal ther-with to hir goon;  (1009)

ぼく自身はそれを持って彼女のところに行きますから。

 

and therwith-al he gan to syke;   (1573)

そしてそう言うと彼はため息をついた。

 

Thenk here-ayeins, whan that the sturdy ook,  (1380)

On which men hakketh ofte, for the nones,

Receyved hath the happy falling strook,

The grete sweigh doth it come al at ones,

As doon these rokkes or these milne-stones.

これに対してこうお考えください、頑丈な樫の木が、そのために何度も斧でたたかれ、最後の一撃を受けると、岩や石臼のように突然大きくどさっと倒れるものですよ。

 

And how-so she hath hard ben her-biforn,   (1271)

To god hope I, she hath now caught a thorn,

She shal not pulle it out this nexte wyke;

これまでどれだけ冷淡であったにせよ、いまや彼女が棘で刺されて、一週間それを引き抜かないことを祈りましょう。

 

For her-of been ther maked bokes twelve:  (108)

このことは12巻の本になっているから。

 

Tho gan he telle him of his glade night,  (Troilus III. 1647)

And wher-of first his herte dredde, and how,

楽しかった夜のことや、最初はどんなことをどのように心配したかを彼に語った。

 

afor-yeyn (=opposite)

Nece, who hath arayed thus

The yonder hous, that stant afor-yeyn us? (1188)

ねえ、向かいに立っているあの家だが、誰があのようにきれいにしているのだろう。

 

 afor-yeyn OED  afornens の見出しで収録されている語である。aforen (=afore) aȝean または  aȝen (=again) との複合語で、前者は aforen, afore, afor などの形で現れる。語尾にsの付いた形はおもに北部のものである。意味は opposite、あるいは比喩的用法として before の意味である。OED  には13世紀から15世紀まで用例があり、上記引用文も収録されている。

 なお、afore OE on foran に由来するが、これは前置詞の on ‘in front’ の意味の foran が組み合わさったものである。on foran OE では頻繁に使用される句ではなかったが、14世紀になるとこれが結合した aforn, afore の使用が一般的となり、forn, fore に代わって用いられた。 afore は今日では廃語となり、before に取って代わられているが、方言としては今も使用されている。afore は欽定訳聖書や祈祷書では使用されていて、欽定訳聖書では afore 7 回、aforetime (=formerly) 7 回、aforehand (=beforehand) 1 回使用されている。

チョーサーは afore を一度も使用していない。Troilus での before の使用回数に関しては、 biforn 21回、 bifore 8 回、biforen 1 回である。 Confessio Amantis では afore 12 回、aforn 1 回使用されており、before に関しては、before 15 回、befor 2 回、beforn 2 回使用されている。

 

ayeins (=against)

Yet were it bet my tonge for to stille 

Than seye a sooth that were ayeins your wille.  (231)

本当でもお気に召さないことを言うより、黙っていた方がよさそうだよ。

 

 ayeins against 14世紀、15世紀に用いられた形。 against aȝen, ayen (=again) に由来する。aȝen, ayen 1130年頃イングランド南部で副詞的属格 (adverbial genitive) -es が語尾に付いた別形のaȝenes, againes を発達させた。これらは14世紀後期に、-es が音節を持たなくなった後、amongst, betwixt, amidst などと同様に寄生音のtを発達させ、前置詞形としての against が生まれた。この against 1525年頃に普遍的な文学英語の語となり、前置詞としてはもっぱらこの against を用い、副詞としては again のみを用いるというように、使い分けが生じた。aganis, agains は勢力が弱まって北部方言でのみ用いられる語となった。スコットランドやイングランド北部では against は用いられず、again が前置詞としても使用されている。

 Troilus での使用回数は ayeins 10 回、ayens 3 回、a-yeins 1 回、agains 1 回、a-yein (前置詞) 2 回である。Confessio Amantis ではsの付いた ayeins 2度使用されているだけで、他は s の付かない ayein 形で、ayein は副詞、前置詞あわせて315 回使用されている。

 

biforn (=before)

Tho gan she wondren more than biforn   (141)

A thousand fold, and doun hir eyen caste;

そこで彼女は以前よりも何倍もいぶかしく思い、目を伏せた。

 

 biforn before 14世紀から17世紀にかけて見られる綴り。before bi- (=by, about) foran (=from the front) からなる複合語で、その働きはおもに副詞としてのものであった。ともに用いられる名詞は与格 (dative) に置かれ、‘in front as to a thing’ の意味であったが、ここから前置詞へと移行していった。また、関係詞の省略によって接続詞としての用法が生まれた。

 Troilus での biforn 等の使用回数については上記 afor-yeyn の項で述べた通りである。

 

bitwixen (=between)

And Troilus he fond alone a-bedde,

That lay as dooth these loveres, in a traunce,

Bitwixen hope and derk desesperaunce.   (1307)

トロイラスが一人でベッドに横たわっていたが、恋するもののように夢うつつの有様で、希望と暗い絶望の間をさまよっていた。

 

 bitwixen between の同義語で、between 同様、前置詞、副詞の両方の用法を持つ。

 ME では betwix はイングランドの比較的北部の形で、一方、betwixen, betwixe は比較的南部の形であった。15世紀には語尾の e が脱落し、ともに betwix の形となった。すでに OE の時代に語尾に意味のない t が付いた betwyxt 形があり、これは ME では使用はまれであったが、1500年以降 betwixt がふつうの形となった。一方、イングランド北部では t の付かない betwix 形が保持された。betwixt は今日では古語・詩語または方言となっている。

 Troilus での使用回数は bitwixen 8 回、bitwix 3 回、bitwene 4 回で、between 形の使用の方がやや少ないことが分かる。これに対して、Confessio Amantis では betwen 70 回、betwene 9 回、betuene 5 回、betuen 2 回であり、betwix 形は使用されておらず、between 形のみが使用されている。

 

emforth (=according to, to the extent of)

and to this night

Have I nought fayned, but emforth my wit  (997)

Don al thy lust, and shal with al my might.

ぼくは今夜にいたるまでずっと偽ったこともなく、知恵の限りを尽くしてお気持ちに沿うようにしてきたし、これからも全力でそうするつもりですからね。

 

 emforth em (=even) forth との複合語で、おもに14世紀に使用された語で、according to を意味する前置詞である。

Troilus での使用回数は3 回。Confessio Amantis では使用されていない。

 

fro (=from)

For neither with engyn, ne with no lore,

Unethes mighte I fro the deeth him kepe;  (566)

知恵を絞ってみても、お説教しても、彼を死から引き留めることはできそうにないのだ。

 

 fro Old Norse (古ノルド語) から英語に入った語で、from と同義語である。おもにスカンディナビアの影響が強かった地域で用いられた。fro は今日では to and fro (あちこちに) という成句で用いられるのを除いては、スコットランド、イングランド北部の方言として用いられる。

 Troilus での fro の使用回数は95 回、 一方 from 62 回である。Confessio Amantis では fro の使用回数は286 回、一方 from 29 回であり、fro のほうが10倍くらい頻度が高いことが分かる。

 

god to-forn (=by God)

And god to-forn, yet shal I shape it so,    (1363)

That thou shalt come in-to a certayn place,

Ther-as thou mayst thy-self hir preye of grace. 

断然保証しますが、あなたをある場所に案内して、ご自身の口から彼女の好意を求めることができるように工夫してみます。

 

 to-forn (=tofore) before の同義語。tofore OE toforan に由来し、これは前置詞 to と副詞 foran との複合語である。 toforn 14世紀から16世紀にかけて見られる形。tofore には副詞としての用法と、前置詞、接続詞としての用法とがあるが、Troilus 内ではすべて ‘god to-forn’ という句で使用されていて、‘in God’s sight, by God’ の意味で、断言するときに用いられている。

 Troilus での使用回数は to-forn 8 回、toforn 1 回、to-fore 1 回であり、そのほか here-tofore 1 回使用されている。Troilus での before の使用回数に関しては afor-yeyn の項で述べたように、biforn 21回、 bifore 8 回、biforen 1 回である。これに対して、Confessio Amantis では before に代わって tofore が用いられることが多く、使用回数は befor(e), beforn が合わせて19 回であるのに対して、tofore 140 回と多く、tofor 12 回、toforn 2 回である。

 

in-with (=within)

This other day, nought gon ful longe whyle,

In-with the paleys-gardyn, by a welle,  (508)

Gan he and I wel half a day to dwelle,

この間、あまり前のことでもないんだが、王邸の庭の泉のそばにあの方とご一緒に半日もいたんだよ。

 

 in-with within の意味の前置詞、副詞であり、前置詞としては13世紀から16世紀にかけて用いられた。

 Troilus での in-with の使用回数は3 回である。一方、with-in 2