「薄闇」


 薄暗い部屋の中。
 全てを覆い隠す程に暗くなく、全てが見える程明るくはなく。
 ただ、灰色の空間にぼんやりと浮かぶ影が、視界の端に微かに見える。
 僕の目の前には君がいる。
 二重の大きな瞳、折れてしまいそうなほどに細い首。
 そして、衣服に隠された大きくない胸に、下腹部の小さな傷跡。
 全てが愛しく、全てが憎らしかった。
 動かない----動けない君の細い首に軽く手をかける。
 頬を伝う大粒の涙。
 泣いているのは君なのだろうか?
 それとも僕なのだろうか?
 視界を覆い尽くす赤い光、揺れる影。
 激しい動悸、小さな悦び。
 何よりも一緒にいたかったと言う欲求。
 軽く手に力を込めると、美しい君の顔が苦悶に充ちた表情になる。
 酸素を求め、開く口。
 そして、口から伝う唾液。
 何がそんなに君を----僕を追い詰めてしまったのだろうか。
 気がつくと、力一杯に君の首をしめていた。
 
     微かに

           きみの

                    口から

   漏れる

              音は

        声なのか?

    声帯の

           潰れる

                音なのか----?


 やがて、ぐったりと動かなくなった君。
 
   愛しい。

       憎い。

 可愛い。

                     醜い。



 乱れる感情。全ては、全ては何だったのだろうか。
 リアリティの欠落。青白い君の顔。
 止まってしまった心臓。
 そう、愛しい君の、止まってしまった心臓----。

この作品はエンターテイメント小説連合のランキングに登録しています。
もし、気に入って頂けたら是非とも投票してくださいね。
よろしければ、読んだ感想をお願いします。
送信して頂いたデータはStory Rankingに反映されます。


[Back] [Up] [Next]
[Home]

ご意見・ご感想はtink@ah.wakwak.comまで