「終焉の時」


 私は独り丘の上に座っていた。
 頭上には、異様な程に肥大した、まるでどす黒い血で描いたような太陽が地上を照らしている。
 眼下には、そこに在ったであろう街並みはもう既に無く、何処までも続く風化したコンクリートの砂漠だけが広がっていた。
 すべての破局は、忍び足でやって来て、誰も気がつかない内に蔓延していた。
 だけど、それは色々と考えられていたような、直接的な破滅では無かった。
 全ての始まりは、出生率の異常な低下だった。
 色々な要因が重なり、遺伝子情報の欠落や異変。
 肉体的兆候は無くとも、精神的に異常をきたす人々。
 また、異常とも言えるスピードで進んだ太陽の赤色巨大化。
 すべてが一つの方向へ向かう時、各地での集団自殺や集団殺戮が起こった。
 エントロピーは常に増大し続け、熱死の世界へと暴走を始める。
 全ては静かに始まり、静かなる終わりの時を迎えようとしていた。
 やがて私は地球と共に太陽に飲み込まれ、意識だけの存在になる。
 ここにいたと言う人間たちの思いだけが残る。
 全ては終焉へ向かい、統べては一つへと統合された。
 神により、楽園を追放されたアダムとイブのように、終末は次なるステップへと進む為の始まりでしかないのだ。
 無意識の中で繋りを持っていた人と言う存在は、肉体と言う殻を破り私へという存在になった。
 人と言う存在が残して来た歴史は、私独りにより繰り広げられた茶番劇でしか無かったのだ。
 なにもかもが、分かっていたことだった。
 やがて太陽はノヴァへとなるだろう。
 全ての終わりは全ての始まりでしかなく。
 全ての始まりは全ての終わりでしかない。
 私はその間、少し休んでいよう。
 始まりのその時まで----。

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