「すれちがい」
 風が頬をすり抜けた。
 それは、とても冷たい風。
 まるで、僕の心の奥底を切り裂いていくみたいだ。
 こんなに悲しいのに。こんなに胸が痛むのに。
 だけど、不思議と涙はあふれてこなかった。
 まだ、泣けたとしたならば、どれほど楽だろう。
 感情は黒い塊になって、僕の中で渦をまく。
 風は鋭利な刃物のように、僕の心を切り裂いてゆく。
 ただ、流れ出すのは血ではなくて、風化した想い。
 塵のようにつもって、どす黒く乾ききってしまった想い。
 もし、気持ちが素直に伝えられたのなら----。
 それでも、僕は想いを言葉に紡ぐことができなくて。
 だけど、涙を流すことすら叶わなくて。
 気持ちはいつも、誰とも、すれ違いを繰り返して。
 人を傷つける事を恐れていた。
 それ以上に自分が傷つく事を恐れていた。
 それでも、いつかは、誰かに僕の想いが伝わるという事を信じていたくて----。









 暗い部屋の中にぽつんと座っていると、ちっぽけな自分を嫌と言うほど実感できる。
 まるで、私の心の中身が空っぽになってしまったような錯覚に囚われた。
 何も、出来ないんだよね。
 言葉を伝えることも、ままならなかった。
 こんなに胸が苦しいのに。
 こんなにあなたの事を想っているのに。
 私の想いは言葉にした途端、まるでなんの意味もない、上辺だけの意味でしか聞こえないから。伝えられないから。
 でも、言葉にしないと、気持ちは伝わらない。
 それは、ジレンマ。
 テレパシーがあればいいと思った。
 私の目は、いつもあなたを追いかけていたのに。
 いつも目が合うのを期待していて、それなのに、本当に目が合った時には思わず目をそらしちゃう。
 無口なヤツ、って思ってたんだろうな。
 だけど、私の想いは言葉に出来ないままで。

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