「怪獣」


 静かな夜だった。
 作家志望であるあたしにとって、夜はとても貴重だった。

 買ったばかりのワープロに向かい、ぽつりぽつりとキーボードを打っていると、突然夜の静寂は破られた。
 どしーんと言う、大きな音と共に物凄い振動が襲って来たのだ。
 あたしは一体何がおこったのかと慌てて家を飛び出すと。
 そこは怪獣がいた----。

          ★

 まるでパニック物の映画を見ているみたい。
 ただ、映画にしては怪獣がちゃち過ぎると思うんだけど。
 だって、ビニールのおもちゃの怪獣なんてあっていいと思う?
 おもちゃ屋さんで売っている、ビニールおもちゃの怪獣をそのまま大きくしたような、つるりとした怪獣の表面には緑色で鱗状の模様がかかれている。
 それでも、一応叫び声なんかあげちゃって、まるでおもちゃの家を踏みつぶすみたいに辺りの家をなぎ倒して行く。
 口からは、火こそははかないものの(やっぱり溶けちゃうからかな?)白いガス状の物をはき出している。
 人々はなす術も無く、呆然と成り行きを眺めていると、突然空が開いた。

          ★

 突然昼のような明るさになったかと思うと、空から巨大な手が延びて来て怪獣の尻尾の所についているくぼみをつまんだ。
 すると、怪獣は空気が抜けたようにしぼみ、空から延びて来た手が持っていってしまった。
『こらっ、今度からテラボックスの中にこんなものを入れたら駄目だぞ』
『はあい』

 どこからともなく、そんな会話が静まり返った夜の街へと響き渡った。


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