「藍い血」
紫色に輝きを放つ空の彼方にある、小さな緑色の太陽が、地上を鮮やかな程のオレンジに染め上げている。
ただ、清らかな気持ちの中で、私は単なる抜け殻になれた。
それは、素晴らしい輝きを放つ闇たちが、微笑みを浮かべながら地上に吸い込まれていく感じに良く似ていた。
充実しすぎた私の体は、食物を、水分を一切受け付けず、宇宙の彼方から差し込む一筋の冷たい心を貪り付くようにして食べ尽くす。
何を見ることも無く閉じる宇宙たちは、私をいつも見守っていてくれるのだ。
私は、この美しい体を、心を、すべてを与えてくれた神に感謝していた。
清らかな藍い血液が、私の中を駆け巡る----ああ、なんて満足なんだろう。
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「真実」
何も見てなどいなかった。
何も聞いてなどいなかった。
見ていると、聞いていると思っている全てが虚構でしかなく真実なんて何も無い。
ただ、強い虚脱感だけが体を支配していた。
ちっぽけな白い壁の部屋の中を、体の中を這い回る小さな虫たち、鏡に映る裸の女、歪む視界、窓から差し込む虹色の光、迫ってくる天井、波打つ床、巨大化する体、いつまでも繰り返される聞き覚えの無い耳障りな音楽に、微かに聞えて来る嘲笑うかのような囁き----。
軽く瞳を閉じると全てが嘘のように消え去ってゆく。
そう、真実なんてなにも無いのだから----。
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「心と心」
小さな光、それは微かだが少しずつ大きくなって行く。
朝の冷ややかな空気、午後の暖かな日差し、夕闇の中の蜜色の太陽。
小さなときめき、大きな不安、全てが十代の頃の記憶。
私は私であり続けるのに、私は私の感じて来た事柄を感じれなくなっているのだ。
ゆっくりと進む時間は、全てを荒廃させるのだろうか。
ただ今は寒かった----。
何も無い、からっぽの自分。
心と心が触れ会う暖かさが、今はただ懐かしかった。
懐かしい----そう、失って行ったものが、ただ懐かしいのだ。
取り戻せないからこそ懐かしいものかもしれないのだが----。
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「宇宙」
宇宙が生まれる前、混沌が支配する世界だった。
音も無く、光りも無く、時間も無い。
総べては凝縮した固まりだった。
ある日、宇宙は弾け、統べての物が生まれ落ちた。
激しい音、鋭い光、気が遠くなる程の時間と言う概念。
色々な生命体が生まれ、色々な生命体が滅んで行った。
それは広大な宇宙から見れば、ほんの些細な事。
やがて、気が遠くなる程長い一瞬の時を経て、宇宙は一つの塊へと戻る。
音も、光りも、時間すらない混沌とした小さな無限の塊へと。
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「時のゆがみ」
ある日、時の歪みを見つけた。
中に入ると、僕が生まれる前の両親がいた。
ふと、親殺しのタイムパラドックスを思い出し、父親を殺してみた。
何も変化がないので、元の世界に戻ると、僕という存在は歴史から抹殺されていた。
僕が生まれない世界で、僕という存在は幽霊のようなもの。
母は見知らぬ男と暮らしており、もちろん僕もいない。
人の前に出ても僕と言う存在は認識されない。
もう、僕は、僕であって、僕では無い存在なのだ。
だけど、幽霊になったよりもタチが悪い。
誰も僕の存在を認めないのだから。
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「虚空」
虚空を見つめる一人の老人がいた。
彼は、ただ、何をすることも無く、虚空を見つめている。
何をしているのかと問えば、宇宙を創造していると言う。
何が彼をそのように動かすのだろうか。
何が彼をそのように思わすのだろうか。
小さなうつろな目は、ただ虚空を見つめ続けている。
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