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著作者:SEIA

 ――心のどこかに、ずっと引っかかっていた。
 何でオレは、こんな力を持って生まれてきたんだろう。

 ガーディアンになるため?
 ……誰かを、助けるため?

 ――冗談じゃない。

 オレは、オレ自身は一度だって、そのどちらも望んだことなんてない。
 オレと母さんを引き離し、オレから『平凡な日常』を奪った力。

 物心ついた時には、もう訓練を受けていた。
 周りにあるのは期待の眼差しと厳しい叱責。

『この力を使って弱き者を守れ』

 幼い頃から子守歌代わりに聞かされてきた、呪縛の言葉。

 オレの力は、何のためにある?
 オレはどうして、ここにいるんだ?

 その答えを、オレはいつか手に入れることが出来るのだろうか……。



【MYSTIC MOON〜月夜の国の物語】vol.20

   「いつかの想い出〜彼がガーディアンになった日」



「ふんふふん。ふんふん♪」
 秋の心地よい陽射しが差し零れる森の中。
 オレンジや黄色の枯れ葉が敷き詰められた上を、お気楽に鼻歌を歌いながら、キッドがご機嫌な様子で歩いている。
「ふ〜ふん♪ふんふん」
 足を一歩踏み出すごとにサクサクと気持ちのいい音をたてる枯れ葉。
 鼻歌にあわせてリズムを取るように音をたてながら、彼は森の中央を目指して歩いている。
 今日は、昨日までの寒さが嘘のように晴れ上がった、暖かな小春日和。
 そう……正に絶好のお昼寝日和、である。
「ふんふふん♪」
 彼が目指しているのは、まるで大地と一体化しているかのようにどっしりとした巨大な一本の常緑樹。
 下から見上げると天を突いているようにさえ見えるその木は、かなり低い位置から枝分かれし、その一本一本が両腕で抱えきれないほどの太さをしていて、2、3メートルほど登るとちょうど具合良く葉が生い茂っているため、キッドはこの一週間と言うもの、しょっちゅうここへ来て惰眠を貪っていた。
「ふんふん、ふぅふふ……ん?」
 しかし、どうやら今日は先客がいるらしい。
 それに気づいた途端、キッドは不愉快そうに眉をひそめた。
「あれは……月夜か?」
 もう少し近づいて目を細めると、大きく真横に枝を伸ばす巨木の根元に、月夜が膝を抱え込んで座っている。
 柔らかなピンク色のカーディガンを羽織り、枯れ葉についた泥で薄桃色のスカートが汚れることも構わず座り込んでいる月夜に、キッドは微かに舌打ちする。
「……何やってんだよ、こんなとこで」
 巨木に歩み寄り、不機嫌そうに言葉を投げつけるキッド。
「……」
 しかし月夜はそれに答えず――驚くことも、彼の声に顔を上げる素振りすら見せず、更にぎゅうっと強く膝を抱きしめるだけだ。

 ……なんだよ。シカトかよ。

 思わずムッとしかけて――

「……ん?」

 ――ふと、月夜の肩が小刻みに震えていることに気づいた。

 ……あん?

「……っ…っく……」
 よく見ると、月夜の肩が時折小さくしゃくり上げるように跳ねている。
「……!!」
 耳を澄ませば、僅かに嗚咽のような声も漏れ聞こえていた。
「な……」
 普段から頼りなくぼーっとしてはいるものの、月夜は滅多に涙を見せない。
 ……いや、ウィンにしか見せない、と言うべきか。
 だからキッドにとって月夜の涙というのは結構珍しい光景で、彼は思わず石化してしまった。

 どどど、どうしよう?
 慰めるべきか?……しかし、どうやって?

「〜〜〜っ」
 困ったように頭をかきながら、考えあぐねるキッド。
 が、普段から誰かをからかうことはあっても、慰めることなんて片方の指で数え足りてしまうようなキッドである。
 結局軽いため息をついただけで、彼はそのまま巨木の枝をするするっと登っていってしまった。
「……」
 月夜は相変わらず膝を固く抱きしめ、そこに顔を埋めて泣いている。
「……よお」
 やがて。
 木の上から、どこか躊躇いがちな言葉が降ってきた。
「別に……お前がどこで何してよーと、オレの知ったこっちゃねーんだけどよ」
 いかにも渋々、といった感じでそこまで言うと、キッドはそのあとをぶっきらぼうに、早口で続ける。
「独り言ぐれーなら聞いてやっても良いぜ」
「!?」
 キッドが本当は誰より周囲の人間を気遣うナイーブな少年であることは知っている。
 しかしまさか、こんな風にこんな場面で気遣って貰えるとは。
 予想外の出来事に、月夜は思わずばっ!と顔を上げた。
 そんなに高くない枝に腰掛け、幹に背を持たせかけているキッド。
 葉陰に隠れてよく見えないものの、その表情はどこか照れくさげに歪んでいる。
 彼の不器用な……しかし優しい気遣いを感じた月夜は、フッと肩の力を抜いた。
「何で……こんな力、持ってるんだろう。私……」
「……あん?」
 それはキッドに聞かせると言うよりは、まるで胸の奥から絞り出したような、本当に微かな呟きだった。
「……ああ」
 キッドはその言葉で、彼らがこの国に滞在することになった理由を思い出す。

 世界一の森林保有数を誇る常緑の国『グリュナス』。
 幾つもの国立公園を持ち、多くの自然が自然なままの姿で残るこの国では、世界的に貴重な動物達が多く生育する代わりに、魔物もまた、数多く棲息している。
 その為、国に入る間際の樹海とも言える大森林や、未だ人の手の入っていない森林では魔物に遭遇する確立もきわめて高く、月夜達一行も運悪く魔物の群に遭遇したのだった。

 ――繰り返される戦闘。

 日常とまではいかないまでも、月夜達もずいぶん戦闘光景には慣れた――そう、そのはずだった。
 しかし今回は、珍しいことが起きた。
 ウィンとシオンの二人が揃って、ちょっとした油断から危機に陥ったのである。
 強固な結界に守られながら、陽南海が叫ぶ。
 月夜も一瞬硬直し、そして――
 恐らく、彼らを守るために結界か盾を作ろうとしたのだろう。
 しかし咄嗟のことで制御しきれなかった力は形を成さず、ただエネルギーの固まりとして周囲を巻き込み……結局、一陣の疾風と化したエネルギーは、魔物だけではなく彼ら二人まで吹き飛ばしてしまった。
 幸いにも、ユリウスの好判断でウィンとシオンの前には強力なシールドが――それも月夜の力の前では脆いガラスのような物だったが――張られたため、二人は軽傷を負っただけで済んだ。
 だが、それでもダルスの中で攻撃を主体とする人間二人が負傷したとあって、一行は用心のため、二人の怪我が完治するまでこの国にとどまることにしたのだった。

「っく……うっ……えっ……」
 月夜がしゃくり上げながら呟く。
「こ、こんな力……なければ良かった。ほ、欲しいと思った……うっ……ことだって、一度も……ふっ……ない、えっく……ないのに……」
 嗚咽の合間に紡がれる言葉には、僅かにヤケになったような響きがこもっている。
 キッドはその言葉にハッと体を起こした。
「あいつらがお前に何か言ったのかよ!?」
 もしそうなら、ブッ飛ばしてやる。
 わざとやったわけじゃないのは誰が見たってはっきりしている。それに大体、彼女自身がこんなに落ち込んでいるのだ。
 それなのに、この上トドメを刺すような無神経な連中ならオレが――
 しかし、あのウィンやシオンが、たとえどんな理由があったとしても彼女を責めるとは思えなかった。
 案の定、月夜は首を振る。
「い……言わない。誰も、私のこと何も……私のせいなのに!私が力を使おうとさえしなかったら、あんな馬鹿なことしなかったら、誰も怪我なんてしなくて済んだのに!なのに……なのに、どうして……どうして誰も……!!」
「……」
 キッドは理解した。
 そう、彼らが月夜を責めるわけがないのだ。
 けれど、何も言わないことが――それが彼らの優しさだとわかっているからこそ余計に――月夜を苦しめているのだろう。
「気にするこたねーよ」
 キッドは目の前で泣きじゃくる、この頼りなげで危なっかしい『神』に僅かに苦笑する。
「お前は、わざとやったわけじゃねーだろ。あいつらだって自分を助けようとした奴を責めたりするわけねーし。お前は、これっぽっちも気にする必要なんかないんだよ」
 ぶんぶんぶん!
 しかし月夜は思いっきり首を振る。
「だって!だって、怪我させちゃったのは事実だもの!……どんな理由があったって。使いこなせもしない力を軽率に使って、暴走させて!それで二人が怪我したのは、怪我させちゃったのは、紛れもない事実なんだもの!……私、私どうしたらいい?どうして、こんな……こんな力なんて――!!」
 こらえていた枷が外れたのか、ため込んだ想いをすべて吐き出すように、月夜は本格的に泣きだしてしまう。
「お、おい……」
 男が女の涙に弱いのは、どこでも同じらしい。
 キッドは月夜の様子に、珍しくあたふたしながら必死に考えを巡らせる。

 ――ど、どーしたらいいんだよ、こーゆー場合。一体、なんて言えば泣きやむんだよー。

 気分はすっかりベビーシッターである。
 しかし、何をどう考えても、今の彼には『気にするな』以外の言葉は思いつかない。
 キッドは次第にイライラし始めた。
 大体が、月夜を慰めるのは本来、彼の役目じゃないのである。
「あーもーっ!!」
 とうとう、キッドは逆ギレする。
「結果なんかどーだっていいじゃねえかよ!お前があいつらを助けようとした、そのことには変わりないんだからよ!……大体、結果が何だってんだよ。お前は、誰かを傷つけようとしたわけじゃない。守りたくて、守ろうとして力を使ったんだろ?だったら、何を気に病む必要があるんだよ。大事なのは結果じゃない。力を使おうとした想いの……」
 と、その時。
「あ……!!」
 突然、それまで顔を真っ赤にして怒鳴っていたキッドが、何の脈絡もなく黙り込んでしまった。
「……?」
 急に大人しくなったキッドの様子に、月夜の方が驚いたようだ。
 ぴたっと泣きやんで自分を見上げる彼女の顔を呆然と見つめ、キッドはぽつんと呟く。
「……やっとわかった。あの時の、ユリウスの言葉の意味が……」
「え?」
 訝しげに、首を傾げる月夜。
 その声にハッと我に返ったキッドは、何を思ったのか急ににやっと笑う。
「……?」
「特別だぜ」
「え?」
 月夜が尋ね返すと、キッドは再び幹にもたれかかり、目を遠くにさまよわせながら言った。
「――昔話、してやるよ。ちっとばっか、昔の話をよ……」



「ここが、今日からお前がお守りする神マルドゥク様を奉るスタルト神殿だ」
「……」
 そう言われて見上げた神殿は、こんな辺境の地にあるのが嘘みてーな、えらく立派で厳つい神殿だった。
 その、周囲を一回りするだけでも結構な時間がかかるだろうって大きさも、周囲に幾重にも張り巡らされた不可視の結界も、殆ど迷宮みてーに入り組んだ内部もすべてが――オレを圧倒した。
 こんな厳重な警備を施された神殿で、オレはダルスの一員として迎えられる。
 ……緊張は、確かにあった。
 でもそれは、期待に胸躍らせるとか、プレッシャーを感じてとか、そんなんじゃなくて――そう、実際にはあんまり関係がなかった。
 どんな厳つい神殿だろーと、厳重な警備だろーと、オレには……
「籠の中から檻の中へ……か」
「……」
 自嘲気味に笑うオレに冷たい一瞥を投げ、長老の側近だか何だか知らねーけど、偉そうにふんぞり返っているその男は、オレを連れて神殿の中に入っていった。
「あなたが噂のキッド君ですか。――私はこのダルス隊の長、ユリウス・カーディナル。よろしく」
 初めて会ったそいつは、ほんとにこの神殿を守ってるのかと疑っちまうほど、のほほんとした、とぼけたヤローだった。
 しかも握手を求めてくるのかと思いきや、こともあろうにいきなりオレの頭をポンポンと撫でやがる。
「仲間と言うより弟ですね、この年齢差は」
 ……おいおい。
 ほんとにこんなヤローが、あの中央最精鋭と謳われたダルスのリーダーなのか?
 実はこいつは影武者で、本体がどっかの柱の影からそーっと覗いてんじゃねーだろーな。
 思わずきょろきょろ辺りをうかがったけど、こいつが間違いなくリーダーなんだってことは、すぐにはっきりした。
「挨拶も出来んのか、お前は」
 そう言って、男がオレの頭を小突こうとした時――もちろん、オレは黙ってやらせるつもりはなかったけど――ユリウスとか言うそいつは、オレが避けるよりも早く男の手首をつかみ、背筋が寒くなるほど圧倒的な力を感じさせる目つきで、男を睨んだ。
「な……」
 オレも驚いたが、男の驚きはその何倍もあったらしい。
 つかまれた手首をふりほどこうともせず、口をぱくぱくさせている男に、ユリウスはゆっくりと微笑みを浮かべた。
「何をどう勘違いなさっているのかは存じませんが、あなたは彼をここに連れてくるための案内人であって、彼の保護者でも、上司でもないはずです。――彼は中央でそう認められ、内示を受けた瞬間から、既に我らダルスの一員。たとえ長老様の側近といえど、最長老様より直属の名を戴いている我らダルスにそのような物言いは――ご遠慮願います」
 にっこり。
 今思い出しても、幻地球が氷河期に突入するんじゃねーかと思うような微笑だったよ。
 あとで聞いた話だと、側近とか何とか偉そうなこと言ってたこの男は、どうやら単に雑用とか身の回りの世話をしてるだけの奴だったらしい。
 男はユリウスの言葉と微笑みに、完全に凍り付いちまったみてーだった。
 ユリウスはそんな男には目もくれず、オレを神殿の中へ――ガーディアンのプライベートルームへと案内する。
「……あなたが中央でどんな扱いを受けていたのかは知っています」
 そう言って、ユリウスは少しだけ悲しそうに睫毛を伏せた。
「中央の意志は、最長老様の御意志。それに反するつもりはありませんが、しかし――」
 ユリウスはさっきの微笑とは打って変わった、優しげな微笑みを浮かべ、またオレの頭を撫でる。
 やめろよ、ったく。オレはネコじゃねーんだぞ。
「これからは、私達があなたを守ります」
 ……けっ。何言ってやがんだ。
 オレを守る?
 フザけんな、オレはこの神殿を守りに来た、天才ガーディアンなんだぞ――って。
 そう、思った。
 思ったんだけど――何故か、その言葉は喉の奥に引っかかって、口から出ては来なかった。
 心のどこかで、何かが痛む。
 ほんの僅かな、でも抜けかかったトゲみてーなその痛みは何だか……くすぐったくて。
 少しだけ、凍り付いてたどこかに、温かい血が巡り始めた気がした。
「ここが、これからあなたが生活するスタルト神殿のプライベート・スペースです。守ると言っても大袈裟に考えることはありません。ここは辺境の地で、あなたが今までいた中央よりは魔物も多く棲息していますが、この神殿と下の町は結界によって守られていますから、そう気にすることもないでしょう」
「結界?――ああ、あの町を囲んでたフィールド、結界だったのか」
 町に入った瞬間、どこか別の空間へ移ったような、妙な違和感を感じた。
 それは本当に僅かな感覚で、特別、不快感や拒絶感を覚えたりはしなかったから、何かのフィールド――特殊な力の存在する領域に入ったんだろう、ぐらいにしか思ってなかったけど――まさか、結界だとは気づかなかった。
 普通、結界ってのは魔に対するもの、人に対するものって違いはあっても、大概が窮屈な戒めの力を感じたり、圧倒的な存在感をもって捉えられるべき力だったから。
「へぇ、あのフィールドを感じ取れるなんて流石だなぁ」
 と、その時。
 中庭に面したパティオに座っていたオレ達のところへ、二人の男が姿を現した。
 一人は栗色の髪と琥珀色の瞳をした、見るからに『好青年』て感じの爽やかヤロー。
 もう一人はアイス・ブルーの髪にサファイヤ・ブルーの瞳をした、どこか暗ェ感じの男だった。
「ウィン、シオン、紹介しますね」
 ユリウスが微笑みながら立ち上がる。
「こちらがあの天才ガーディアンのキッド君です。キッド君、この二人が今日からあなたの仲間になる、ウィンストン・ウィリアムとシオン・マグダウェルです」
「ウィンストン?――って、もしかしてあの、王位を捨ててガーディアンになったってゆー、あのウィンストン王子か?」
「あれ、知ってるの?」
 そう言って驚いたような顔をしたのは、栗色の髪の爽やかヤローの方だった。
 なるほど、こっちがウィンてやつか。じゃ、あっちがシオンだな。
「当たり前だろ、地位と名誉と何不自由ない暮らしを捨ててガーディアンになろうなんて物好き、お前ぐれーなもんだぜ」
 オレがそう言うと、ウィンは目をまん丸くして立ち竦みやがった。

 ――おーおー。ハトが豆鉄砲食らってんぜ。

 と、ユリウスが苦笑した。
「取り敢えずキッド君。あなたも自己紹介して下さい」
「けっ」
 そんなかったりーこと、誰がやるかよ――って。正直、思ったんだけど。
 ま、仕方ねーよな、さっきの借りもあるし。
 別にオレが頼んだわけじゃねーけど、借りは借りだ。
 オレは渋々立ち上がり、口を開いた。
「オレはキッド。キッド・アーウェイ。――さっきから気にくわなかったんだけど、オレのこと『君』とか『さん』とか、そーゆー呼び方止めろよな。オレはキッド。……それだけだ」
 一気にそう言ってオレが口を閉じてしまうと、何を勘違いしたんだか、あの爽やかヤローのウィンがにこにこしながら近づいてきた。
「そうか、そうだよな。これから仲間になろうって言うのに、『君』なんて水くさいよな。じゃ、オレのこともウィンて呼んでくれよ。よろしく、キッド」
 ……なれなれしーっつーの。ったく。
 ま、こーゆー単純そうな奴は、からかうと飽きなくておもしろそーだけどな。
「シオン」
 ユリウスが呼びかけると、シオンはスッと目を伏せた。
 ……ヤローに目配せされても、全然嬉しくねーぞ。
「オレはシオン。よろしく頼む」
 ほんとに暗ェヤツだなー。影、ねーんじゃねえのか?
 まあ、まとわりつかれるよか、いいけどよー。
「……んで?ダルスってのは、コレで全員なのか?」
「ええ、そうです。では、あなたの部屋に案内しましょう。さあ、こちらへ――」
 ユリウスのあとについて、パティオを出る。
 その時、オレはまだ気づいていなかった。
 こいつらに会った、その瞬間から、オレの中にあった不機嫌な気持ちも、檻の中にいるような拘束感も、煙みてーにどっかへ消え失せちまっていることに……。


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