「もう一人の私」
著作者:みき

 ちょっとぉ

 ……

 ねぇねぇ、ちょっとぉ

 ……

 ねぇ、聞こえる?

 そう、私よ、私……


 んーちがうの。友達ではないわ。あなたの知らない私、いいえ、本当は知っている……

 そう! わたしよ


 びっくりした?
 無理もないわね。
 でも、気にしないで。あなたは病気でも何でもない……そう、あなた、気が付いただけなの


 信じられない? やっぱり……そうかも知れないわね
 突然驚かせてごめんね
 表向きのあなたとは違うものね
 でも、本当は同じよ  そう、同じ  うん 同じ……


 不思議なものね こうやって話が出来るなんて
 今までこんなに簡単なことに気づかなかったなんて
 今までこんなに簡単なことに気づけなかったなんて
 気づいてた? うそ まだ気づいてないわ

 あなた、そうやっていつも知ったかぶりするの
 余計なお世話?
 そうかもね
 だって、本心に触れられることはキライだものね
 しようと思ってた 言おうと思ってた ……思ってた
 思うだけではだめ、そう  具体的に動かないとね
 うん
 その調子……


 え?
 何、聞こえない

 うるさい?
 そんなに本心を隠したいの?
 本当はあなた、あなた自身の本心を表に出したいって、いつも思ってるじゃない?
 でも無理?
 そうかもしれないね。
 でも、それでいいの?
 そう、諦めるの
 ふぅん
 諦めるの

 諦めることって楽だもんね
 本当は諦めるってコト、容易いことではないわね
 あなた、よく知っているはず……

 苦労しているじゃない
 今
 こうして苦しんでる
 だからあなた、気がついたの

 でも、やっぱり、余計なお世話なのかも知れないわね

 でもさぁ、このまま同じ生活を重ねることに、あなた、耐えられるの?
 でしょ?
 いやでしょ?
 いつも、こんな単純な繰り返しの生活、いやだって思っているじゃない

 そう
 思っているだけではだめ
 具体的に行動することね
 そして、感じること
 無視してはいけないわ
 流しててはいけないわ
 そう……素直に感じてごらん

 何も感じないですって!?

 穏やかに感じるの
 そう、おだやかに----


 あなたの好きな、あの静かな音楽
  題名も、作曲家の名前も知らないけど、穏やかな気分になれる

 あなたの好きな、その情景
  木々の葉の隙間から漏れる柔らかな日差し
  ちらりとのぞく、澄んだ青空
  おはなしをしている、小鳥たち
  若葉色の草原には、名もない小さな花がちらほらと咲いている

  あぁ、この草のにおい 土のかおり 花の香り 頬に感じるそよ風
   ほんと、懐かしい感覚

  向こうには丘が見える
   どんな丘? うーん、よく見えないかなぁ

   けれど、ここで生活している いきもの 全てが、穏やかに感じる

        「そこにね 幼い頃の わたしが 見えないかな?」


 素直なわたし
 無邪気で、何もかもが珍しかったわたし

 お母さんが微笑んでいる
 お父さんも笑っている
 そして、おじいちゃん、おばあちゃん

 あなたは何をしているの?
 何を感じるの?
 あなたは何がしたいの?
 何を感じたいの?


 あれから、今まで、ずっと

  楽しかったこと
  悲しかったこと

  嬉しかったこと
  悔しかったこと

  頑張ってきたこと
  辛抱してきたこと

  想い出したこと
  そして、忘れ去ったこと


 そう、あなたは頑張ってきたのね
 本当に辛抱してきたのね
 自分勝手に、無我夢中で遊んだこともあったし
 悲しくなって声を上げて泣いたこともあったね

 そう、あなたは頑張ってきたの
 いままでずっとずっと


 そんなあなた、見えるでしょ
 そんなあなた、どんな顔をしているかな


  無表情?
  怒っている?
  笑っている?
  はにかんでいる?
  泣いている?
  苦しんでる?
  さびしそう?
  何を悟られまいとしているの?
  腹立つよね、ほんと!
  あんなこともあったねー
  はずかしかったのかなぁ?
  悲しかったこともあったね
  辛かったなぁ あんなこともう嫌よね!
  わたしの苦労をわかってくれる人……いるよ、きっと



 その あなた
 そう、あなた自身
 見えるでしょ

 そのあなた自身を、ほめてあげて
 きっと喜ぶよ
 涙を流すかも知れないね
 ほら
 ユウキをダシテ……

 「よく頑張ったね!」って
 「よく辛抱してきたね!」って
 「これからも頑張ろうね!」って


     おねがい!!


 実は、その人、私なの
 頑張ってきた、わたし
 耐えてきた、 わたし

 そう、わたし


 「ありがとう気づいてくれて」
 「いままで一緒にいてくれて」
 「いままでずっと頑張ってきたね」
 「わたしは知っているよ」
 「そう、だって、ずっと見てきたもん」
 「そう、だって、ずっと一緒だったんだもん!」
 「ほんとに辛い悲しみに耐えてきたね」
 「そして、たくさんの楽しみを感じてきたね」

 「これからも一緒に頑張ろうね」
 「これからも一緒に感じようね」
 「これからも一緒に」

      ・
      ・
      ・
      ・
      ・
      ・


    ----
    ----
もしかすると、みんなは違うかもしれない
もしかすると、みんなはまだ気がついていないのかもしれない
でも、あなたは気がついたね
でも、みんなも


    ----
    ----
ひょっとすると、みんなも一緒なのかも知れない
ひょっとすると、みんなも既に気がついているかも知れない
そう、みんなも
そう、あなたも



        人が人を信じられない現代社会
        人が人を誤解し、裏切り、傷つけ合い、殺し合い、

        人が人を恐れるが故に、  知らずしらずにして身につけた武器
        人が人を信じられないから、人は人を攻撃するのか
        人が人を信じるためには、 人は人を信じるべきなのではなかろうか


        さぁ、ユウキをダシテ……

        具体的に行動するの

        だって、同じなのかも知れないじゃない あなたと
          アカの他人だって思っているかも知れないけど

        そう、 同じなのかも知れないじゃない みんなも
          ひとりぼっちの自分だって思っているかも知れないけど


        もしかすると、 もう一人の私 かもしれない
        ひょっとすると、あなた自身

             そう、わたし自身

                そして、みんな


                  でも、もしかすると

                    でも

                      ひょっとすると……







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